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身代わりの罠22
「既に紫月には説明したが、今夜のパーティーの余興として紫月には居合い抜きを披露してもらうことになった。俺と源さん、それに遼二と鄧でクラウスの周りを固め、絶対の警備を敷く。焔は紫月の側で不測の事態に備えてくれ」
「分かった。俺の方からは李と劉、それにもう数人の部下を用意しよう。クラウス某を狙うヤツらが会場内のどこに潜んでいるか分からん。人数は多くても困らんだろう」
「助かる。ウチの組からも若い衆に会場全体から周辺の建物まで抜かりなく見張りをさせる。外回りの部隊は各自銃を携帯、万が一クラウスや周辺の関係者が拉致されんとも限らない。その際、逃さないよう万全の体制を敷く。俺たちは銃器類が持ち込めんが、防弾ベスト着用で警護に当たることとする」
そんな中で唯一冰にだけは出番がないものの、周の側近たちと共に会場となるホテルの周辺で皆の帰りを待っていると言ってくれた。
「皆さん、どうぞお気をつけて。無事に前夜祭が済むよう応援していますね」
あたたかい冰の言葉に皆は癒しをもらえる気がしていた。
◇ ◇ ◇
そうしていよいよパーティーの時がやってきた。
予定通りクラウス・ブライトナー本人と、彼の脇にはクラウスの妻に化けたメビィが寄り添って会場へと向かう。夫妻の周囲では通訳係の鄧をはじめ、鐘崎に僚一と源次郎らの鉄壁の警護が目を光らせていた。
周もまた李ら側近と共に招待客を装って会場入りし、主には余興に携わる紫月の警護に当たった。
「守備はどうだ」
僚一が耳元に着けた通信器具で見張りの若い衆らと連携を取り合っている。
『親父っさん、怪しい人物を確認しました。場内で乾杯用のシャンパンを配っているウェイターの中に混じっている様子です』
「了解した。外の様子は変わりないか?」
『こちら外部隊、異常ありません』
「よし。引き続き目を光らせてくれ」
『了解』
少しすると周からも通信が届いた。
『僚一。こちら周だ。今、余興用のステージ前だが、俺の位置から十時の方向、二十歩先で日本医師会の偉いさんと話している若い男がいるだろう。そいつの懐に短刀らしきを確認した。常に周囲を気に掛けていやがるから間違いないだろう』
ということは、僚一が予測した通り、敵は銃を使ったスナイプではなく直接の刃物で至近距離から襲ってくると考えられる。
「お前の二十歩先だな。男を確認した。警戒に当たる」
『それから――あと十分ほどで一之宮の居合抜きが始まるようだ。歓迎の挨拶と乾杯の発声が済んだと同時に演目が開始される。俺たちは引き続き一之宮の警護に当たる。おそらくは余興の最中か、終了間際を狙ってくる可能性が高い。気を付けてくれ』
「分かった。全員、今一度体制を固めろ。焔の言うように余興の最中は皆の目がステージに集中する。犯人にとってはクラウスを狙いやすい絶好のチャンスだ。気を抜くな!」
『了解!』
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