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慟哭16

 紫月が決死の覚悟で闘っていたちょうどその頃、倉庫の外では鐘崎ら全員が到着し、まさに庭師の小川が天窓を目指して駆け登っていた。 「……! いた! 姐さん発見しましたッ! 無事です! 動いてます! 走ってます!」  支離滅裂ながらも小川は必死に踏ん張っては倉庫内を見渡して、下で待っている鐘崎らに状況を絶叫する。 「やべえっス! 拳銃持ってるヤツが姐さんに向かって撃ってやがる! ヤバそうな奴等が……五、六、七……いや、十人くらいいるっス!」  それを聞いた鐘崎がすぐさまシャッター前へと飛んで行った。拳銃を撃っているということは、少なくとも爆発物のようなものは仕掛けられていないと想像される。既に猶予はない。  鐘崎が強行突破するつもりなのだと悟った周は、側近たちに向かって即刻指示を出した。 「倉庫周囲にいる者、全員で天窓を撃て! 応援が来たことを知らせて中の注意を引きつけるんだ!」  窓が割れれば敵連中は気を取られるだろう。紫月を狙っている銃撃も一瞬止むかも知れない。  シャッター前では鐘崎が錠を撃ち抜くと同時に鉄の扉がひしゃげる勢いで蹴り飛ばしては転がり込んだ。  中にいた敵が一気にこちらを向く。紫月は――倉庫端の階段を駆け登っていた歩をとめてこちらを振り返っている。  鐘崎と紫月の視線が互いをとらえた。  無事か――――  紫月の無事を確かめた鐘崎は、ホッと胸を撫で下ろした。と同時に、その身体中からはまるで青白い炎が全身を包むかのような怒りのオーラが燃え盛り、轟々と音を立てて周囲を焼き尽くしていくかのようだった。 「紫月、今行く――」  鐘崎はそうつぶやくと同時に一番近くにいた男を初動なくいきなり蹴り上げた。  男はまるで宙に浮いたように吹っ飛んでは、後方にいた者を巻き込むようにして地面に落下、そのまま一撃で意識を失った。先程から対戦していた紫月もなかなかに強敵といえたが、今度はそれの比ではない。一瞬でも隙を見せれば即刻あの世が待っている――そんな幻影が浮かぶほどに、誰の背筋も瞬時に凍り付くほどの強烈な一撃であった。 「な、何だ貴様はッ!」 「か、構わねえ! 殺っちまえ!」  男たちが束になって襲い掛かってくる。  遠くからは銃で狙っている者も見て取れる。 「カネ、援護する!」  周が銃を構えながら目の前を行く鐘崎の体術をサポートしていく。源次郎と李もすぐさま後に続き、応戦して撃ってくる敵の銃を三人で確実に撃ち落としていった。  鐘崎は目の前へと襲い来る敵と丸腰で渡り合い、彼らの振り回してくるヌンチャクと鉄パイプを素手で受け止めながらもそれごと蹴り飛ばし、その勢いは弾丸さえも自らの肉体で弾き飛ばすといったくらいの壮絶さを漲らせていた。容赦なく拳を奮う彼の白いシャツには次々と敵の返り血が飛び散って、その形相はまさに修羅か夜叉かと思われるほどであった。

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