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身勝手な愛39

「ケジメ……こ……れだけで赦されるとは……思って……な……」 「そんなことねって! 言ったでしょ? 俺がちゃんと説明するからって」  冰は先程郭芳を騙くらかした時と同様、フランクな話し方で彼を抱き起こしては、周らを見つめて『これで赦してあげて』というように弱々しく微笑んだ。 「――ったく! 示しがつかんな」  周はそう言いつつもニヤっと不敵な笑みを見せる。 「良かったね、郭芳さん。許してくれるって」 「……ま……さか」  それを最後に郭芳はカクンと意識を失い、冰の腕の中に抱き留められたのだった。  すぐに李が駆け付け、冰の腕から郭芳を引き受ける。と同時に源次郎が担架を引いてやって来た。郭芳は収容され、医療車へと運ばれる。その後ろ姿を見やりながら、 「さて――と。冰、お前にもケジメをつけにゃならん」  言ったと同時にガバリと大きな胸に抱き締められて、冰もまたその広い背中におずおずと手を回した。 「心配掛けやがって――」 「ごめん、白龍。来てくれてありがと……」 「――よくがんばってくれた。礼を言う。重鎮方が無傷で助かったのはお前のお陰だ」 「ううん、そんな」 「また例の大博打でもかましたのか?」 「う……うん。ま、まあね……ちょっとだけ」  えへへと気まずそうに微笑んだ冰の頭をクシャクシャっと撫でると、周はそのまま大きな掌で頭ごと引き寄せて唇を塞いだ。  長い長い、冰にとっては息が止まるかと思えるほどの深く濃いキスだった。 「……ぷ……っは! 白……」 「無事で良かった――」 「白……うん、ごめんね。心配掛けて」  再びがっしりときつい抱擁で抱き締め合う夫婦を見つめながら、鐘崎と紫月らもまた安堵の笑みで見つめ合ったのだった。 ◇    ◇    ◇  その後、郭芳の身柄は周隼と周風の下へ届けられ、重鎮たちを拉致監禁したかどで制裁を受けることとなった。それがどのような仕置きであったかは周も、そしてもちろんのこと冰にとっても知る限りではないが、とかく冰には気に掛かるところであったようだ。  帰国を明日に控えて周家の実家に泊まった二人の元に、父の隼と兄の風が訪ねて来た。 「焔、冰。此度の力添え、誠にご苦労だったな。お陰で側近方も誰一人怪我もなく、無事に保護することができた」 「特に冰には拉致監禁という災難に遭わせてしまって面目ないが、本当に助けられた。この通りだ」  真摯に頭を下げた父と兄に、二人揃って恐縮してしまった。

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