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陰謀3

「あの後、ご兄弟を救ってくれた礼として香港のボスが自ら現地の村に出向かれましたよね」 「ああ――。ボスと、それにご兄弟も同行して手厚い御礼をなさった」  それこそ兄弟を診てくれた家には一生困らないくらいの金品はもちろん、彼らの村にも充実したインフラの設備を投資したりしたことは李も鄧も実際目の当たりにしてきたものだ。 「それが今になって実は子供ができていたなど――にわかには信じ難い話ですよ。あの時香港のボスが手渡した金品だって相当なものだったはずです。例えば一家が村を出て都市部に引っ越し、豪邸が建てられるくらいはあったでしょうに」 「……そうだな。とにかく彼女とその家族が今現在どこに住んでどのような暮らしぶりでいるのかを至急確かめようと思う。先程会った女の様子だと安ホテルに滞在するのもやっとといった具合だった。身につけているものも特に贅沢といった感じは受けなかったし、あの時ボスが渡した御礼金の額とは見合わない生活ぶりのように思えたしな」  既にその大金を使い果たしたとすれば、よほどの贅沢三昧をしたか、あるいは身の丈に合わない事業でも始めて擦ってしまったか、はたまた悪人に騙されて奪い取られたか――。 「まあ金など使おうと思えば一瞬ですからね。それより老板には何とお伝えするつもりです?」 「……正直に話すしかなかろうな」 「女とは今晩会うのですか?」 「老板(ラァオバン)次第だが――女の方もそう望んでいるようだったし」  周はあと一時間もすれば戻る予定だ。 「問題は冰さんだが……」 「急な接待の会食が入ったということにして、冰さんにはとりあえず何も告げずに行くしかないでしょうね」  それも周次第だが、どちらにせよ冰にとっては衝撃に違いないだろう。 「李、よければ私も同行させてもらえませんか? その女性と……息子さんだという子供を見ておきたいというのもありますが、ちょっと医学的な意味で情報の収集をさせてもらえればと――」 「もちろんだ。お前さんがよければ是非立ち会ってくれたら心強い。しかし医学的な――というと、まさか……」 「お察しの通りですよ。彼女とその息子のDNAが入手できれば嘘など一瞬で解決ですから」  彼らが使ったグラスなどから必要な素材を集めると共に、それらを持ち帰って親子鑑定にかければ一発だ。ただしそれが最悪の一発となることも皆無とは言い切れない。もしも本当にその息子が周の子だという結果が出たとすれば、それこそ一大事となり得るからだ。 「老板(ラァオバン)にご相談申し上げてからだが――いずれにせよ女と会う場所が問題だな。このお邸でというのは冰さんもおられるしまずい。どこか信頼のおけるホテルの一室でも借りるか……」  密かにDNAを採取するなら人目につかない方がいい。李は早速に最適な場所を思い巡らせるのだった。

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