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封印せし宝物9

「ほら、熱々だ。火傷しねえように気をつけて食えよ」 「わーい、美味しそう! お兄さんありがとう!」  ドリンクのカップをベンチの上に置いて、熱々の饅頭を頬張る。ふうふうと可愛らしい小さな唇で冷ましながら齧る仕草に思わず笑みを誘われた。 「わぁ、お肉がぎっしり詰まってる! 肉饅頭だね、これ。すごく美味しいです!」 「そうか。良かったな」 「ね、お兄さんのもお肉?」 「ん? 俺のは――」  齧った饅頭の中からチラリと覗いた橙色の色合いが気になったのか、冰は背伸びをするように見上げながらそう訊いた。 「肉饅頭ってよりは……こっちはピザ味じゃねえか?」 「ピザ!」  またもやパァっと目を輝かせる様子に、周は思わず吹き出しそうにさせられてしまった。 「何だ、ピザの方が良かったか?」 「う、ううん。お肉もとっても美味しいです! でもピザも……」  ちょっと味見してみたいのだと顔に書いてある。モジモジとしながら小さな手で肉饅頭を握り締める様が可愛らしくて、クスッと瞳を細めてしまった。 「だったら――交換するか?」  互いに半分くらい齧ったところだから、今交換すればどちらの味も楽しめる。そう提案すると、冰はポっと頬を染めては嬉しそうにうなずいた。 「いいの?」 「もちろんだ。ついでにジュースも――いるか?」  周のはジンジャーエールで冰のはメロンソーダだ。 「うん!」  どちらも似たような炭酸ドリンクだが、こうした味比べもまた小さな子供にとっては楽しいのだろう。冰は心から嬉しそうにキラキラとした笑顔を見せながら、交換したピザ味の饅頭とジンジャーエールを頬張るのだった。 「美味しいー! どっちもとっても美味しいです!」  言葉通り本当に美味しそうにする満面の笑顔が可愛らしい。周はなんとも言えずに癒される気がしていた。  生まれてこの方、家族には本当に良くしてもらってきたが、その裏では周囲から妾の子だと冷ややかな視線を向けられてきたことも事実だ。常に気を張って生きることに慣れてしまい、それが当たり前だと思っていた人生の中で、純真無垢なこの少年との触れ合いは周に心からの安らぎを与えてくれるものだった。 「ボウズ、じいさんは今日何時ごろ帰って来るんだ?」 「んとね、夜の九時くらいだって言ってた。今日は早く上がれるって」 「そうか。じゃあじいさんが帰って来たらすぐに食べられるように、晩飯でも買っていくか。この近くに美味い飲茶の店があるんだ」 「ほんと? じいちゃん喜ぶ!」  二人で飲茶を選ぶのもまた楽しい。 「ボウズ、お前も好きなのを選べ。さっきのメシは軽かったからな。夜はしっかり食って元気をつけねえとな!」 「お兄さんも一緒に食べていける?」 「ああ、構わんぞ。じいさんが帰って来るまでの間に宿題も見てやろう」 「やったぁ!」  満面の笑みで両手を高く広げ、万歳をするとそのまま腰に抱きついてきた。

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