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封印せし宝物23
「――どこかに大事な何かを置き忘れてきたように思うそうだな?」
「……うん。でもそれがどこなのか、何なのかが分からなくて」
「それで理由 も無く不安になるんだな?」
「……うん」
「それはいつ頃からだ?」
「……んと、紫月さんにも言ったんだけど、本当に最近なんだ。もしかしたらもっと前からだったのかも知れないけど、一番強く不安になったのは……ちょっと前に男の子が目の前で転んだ時。白龍が駆け寄って助け起こしたでしょ?」
「ああ。あの時のボウズな」
つい自然と口に出てしまったその言葉に冰はビクリと肩を震わせた。
「そう……それ……。白龍があのくらいの男の子をボウズって呼ぶのを聞いて……急に心臓がドキドキしてきて……怖くなっちゃったんだ」
「――すまない、冰。怖がらせるつもりはなかった」
つい口が滑ってしまったことに、周自身配慮が足りなかったと思えど、こればかりは仕方ないといったところか。
「だが――そうだな。それは俺の口癖なのかも知れんな。あのくらいの年頃の子供を見るとついそんなふうに呼んじまうんだろうな。まあ、カネも似たように呼ぶかも知れんが」
「だよね。紫月さんもそう言ってた。鐘崎さんならボウズとかガキんちょとか呼びそうだよなって」
「そうかもな。俺とカネは似た者同士だからな。お前や一之宮ならもっと丁寧に呼びそうだな」
不安を拭い取ってやるようにしっかりと抱き包みながら周は穏やかに笑んで、温かい頬と頬を擦りつけるように重ねた。
その温もりに安心感を得たのだろうか、冰もまた『ごめんね』と言いながらも少しの笑みを見せた。
「うん……紫月さんは『兄ちゃん』って言ってた。俺だったら『坊や』とか『ボク』とか言いそうだよなって」
「そうだな。お前や一之宮らしい呼び方だ」
「ね、白龍。俺さ、あれから考えてみたんだ。何で白龍が『ボウズ』って呼ぶのを聞くとドキドキしたり怖くなったりするのかなって。それでね、思ったの。もしかしたらそれは――俺のヤキモチなのかも知れないって」
「焼きもち?」
周にしてみれば思いもよらなかった理由だ。
「……うん。初めて会った時、白龍が俺のこと『ボウズ』って呼んでくれて、俺はそれがすごく印象に残っててさ。ボウズっていうのは自分だけの特別な呼ばれ方だって、勝手にそんなふうに思ってたんじゃないかって。だから白龍が他の子にそう呼ぶのを聞いて、白龍が盗られちゃう気になってるのかなって」
これにはさすがの周も驚かされてしまった。
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