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第6話

俺は買い物がてらに、死神の元に向かった。 彼は俺が来ることを知っていたみたいに、こちらに手を広げて待っていた。 彼に抱きついて体に顔を埋める。 頬ずりして、抱きしめた手で、強く彼を締め付ける。 彼はそんな俺の背中を優しく包んで、優しく抱きしめてくれる。 「友達、元に戻ったよ…良かった…」 俺がそう言ってあの人に甘えると、ふと首の傷を指で撫でられて痛みが走った。 「痛い」 「さっきは無かった…」 死神がそう低く呟いた。 凄い視力だな… 俺は彼の言葉を無視すると、買い物に行ってくる。と告げてお見送りしてもらった。 今日は玄ちゃんに唐揚げを作ってあげよう… そして、明日の朝はサバを焼こう。 大家族用に沢山買わないと…だって、今日は百合子ちゃんと益田も居るからね。 買い物を済ませ、思った以上の大荷物になってしまい、ヨタヨタと帰ってくる。 もう暗くなりかけた空に、気が急くけど、足がもつれて転びそうになる。 どうせ死神が俺の帰りを待っていてくれるから、彼に手伝ってもらおう… そう思って、頑張って境内まで運ぶ。 「あれ?いない…」 いると思った人力が居なくて、結局玄関まで1人で運んだ。 家の奥でバタバタ音がするけど、俺は台所に買い物袋を置きに向かった。 冷蔵庫に食材を詰めていると、誰かがしきりに呼び掛けている声が聞こえた。 「お帰り下さい…お帰り下さい…」 後ろで玄ちゃんのお父さんの声が聞こえて、いつもと違う声の様子に、俺は振り返って緊張した。 「どうぞ、お帰り下さい…お帰り下さい…!」 声がどんどん近づいて来て、玄関まで続く。 俺は様子を見に廊下に出る。 一瞬、黒い服が見えて、俺は走って駆けよった。 そして、玄ちゃんのお父さんの後ろから、追い出された人を見た。 あの人だった… 「何してるの?勝手に上がったらいけないよ…」 俺はサンダルを履いて、彼の手を掴んで境内に戻した。 「梅ちゃん、あいつに何をされた?」 低く唸る声を出して驚く。 「そんな声、出さないでくれ…怖いだろ?」 俺はそう言って彼の喉を撫でる。 もう月が出始めているのに、俺はこの人と一緒に境内の鐘の前で並んで座っておしゃべりする。 「あいつって誰の事?吉尾の事かな?」 俺が聞くと、彼は静かに頷いて俺の首のケガに手を当てた。 まだチクッと痛むケガに顔を歪ませると、彼の目の奥が揺らいだように見えた。 「彼には明日、詳しく話を聞くんだ。分かったら教えてあげるよ、ね?」 彼の膝を枕にして天を仰ぐ。 「見て?お月様が綺麗だよ?今日は唐揚げを作らなきゃいけないんだ。玄ちゃんが唐揚げが食べたいって言うんだよ?子供みたいでかわいいだろ?」 俺がそう言って彼の顔を見ると、彼は俺の首に貼った絆創膏をペリッとはがした。 そのまま前のめりに覆いかぶさると、そのケガをペロリと舐めた。 「んふふ、くすぐったい…」 足をばたつかせて俺が笑うと、彼はにっこり笑って俺の頬を撫でた。 「俺は…死神の何なの?」 間近で俺を見つめる彼に聞いた。 寿命を取られた。でも、死なないで、彼が俺の寿命を持っている状態。そして、俺は玄ちゃんのお父さんの物でもあるから、共同所有の筈なんだ… 吉尾が口走った、死神の…の続きが知りたい。 明日聞けるのかな…好きだったのにな…フワフワの頭、可愛かったのに… さっきの俺の問いを聞いた頃からか、彼の目の奥が、まるで豆電球みたいになっていく事に気付いた。 俺は体を起こして、彼の膝に跨ると、頬を掴んで自分に向けて、彼の目をじっくり覗き込んで見た。 「目…綺麗な色しているよ?真ん中が赤くて、オレンジになって…周りが金色だ…」 その目をじっと見つめていたら、オレンジの色がグラグラと揺らいでいる様に見えて、吸い込まれそうになって体が揺れる。 「梅之助…」 彼が俺の背中に手を添えて抱きしめてくるけど、この目の色をまだ見ていたくて、目が離せなくて見上げ続ける。 金色の目と、青い夜空のコントラストにクラクラして、どうしてか分からないけど、彼の口にキスした。 そう、理由もなく彼の口にキスした。 ずっと前から知ってるような不思議な感覚がして、目を閉じて彼とキスした… 「唐揚げ作らないと。」 彼の膝から降りようと足を動かすと、彼は俺の腰を掴んで離さない。 「夜ご飯の支度が遅れたら、みんなお腹空いちゃうよ…」 ギュッと抱きしめて、髪を撫でてあげると気持ちよさそうに目を細める。 犬みたいな…優しい人間みたいな…死神。 「またね、バイバイ」 俺は彼に手を振って玄ちゃんの家に戻る。 「お!」 バチバチと言う揚げ物の音がして、俺は急いで台所に向かった。 「お~百合子ちゃん!!」 百合子ちゃんが腕まくりして、台所に向かって奮闘していた!! 「梅ちゃん、サバはいつ使うの?」 「明日の朝、玄ちゃんのお父さんが食べたいって言ったんだ~」 俺は腕まくりして手を洗うと、百合子ちゃんの隣に行く。 「元気になって良かった!」 彼女の顔を覗き込んで、俺が微笑むと、彼女は嬉しそうに笑ってちょっとだけ泣いた。 「怖かった…」 そうだよね…その気持ち、すごくよくわかるよ… 「唐揚げ、下味何にしたの?」 俺が聞くと、ニンニク醤油って言った。結構ガッツリ系の味付けに少し驚いた。 ジャガイモを少し切って一緒に揚げてもらう。 「付け合わせのお芋にしよう~」 2人で台所でワイワイ楽しく料理をしていると、益田がやってきて、ダイニングテーブルに座った。 「お前に後で面白いもの見せてやるよ…」 俺はフフフと笑って、まだ疲れた表情の彼を煽った。 俺はサラダを作って、お味噌汁も作った。あとは最後の唐揚げが揚がるまで何もすることが無い。 「玄ちゃん探してこよ~」 あの人が追い出される前、どこに居たのかな、玄ちゃんのお父さんは見かけたけど、玄ちゃんを見なかったな…何処に行ったかな? 俺は彼が追い返された方向に向かって歩いて行った。 「玄ちゃん!」 彼の後姿を見つけて、声を掛ける。 「あ…梅ちゃん…」 元気のない顔をして、どうしたの?俺にはすぐ分かるよ? 「どうしたの?今日は唐揚げだよ?」 彼の顔を覗き込んで目を見つめる。 スッと視線を外す彼に違和感を感じて、心がざわついた。 お札の沢山貼ってある檻の前に玄ちゃんは佇んで、檻の中で眠る吉尾を見ている。 俺は玄ちゃんの傍に行って、彼の手を掴んで彼の名前を呼んだ。 「玄ちゃん?」 「触らないでくれ…」 そう言って、玄ちゃんが俺の手を払った。 一瞬何が起きたのか分からなかった。 あの玄ちゃんが俺の手を払った… 小学校でも、中学校でも、高校でも、どんなに恥ずかしくても、彼が俺の手を払う事なんて…一度もなかったんだ。 ショックで固まった… 「玄ちゃん…ど、どうしたんだよぉ…何か、怒ってるの……?」 精いっぱいの言葉で彼に話しかけるけど、玄ちゃんは俺の方も見ないで行ってしまった。すれ違う様に玄ちゃんのお父さんが俺の所に来て俺を台所に連れていく。 「時間が要るんだ。少し待ってやってくれ。」 「分からないよ…吉尾に何か言われたの?」 俺は悲しくて心が痛いよ…こんな事初めてなんだ…今すぐ玄ちゃんに抱きしめてもらわないと、死んでしまいそうだ… 俺が玄ちゃんの方に行こうとするのを、玄ちゃんのお父さんが止める… 「梅之助…待ってやってくれ…頼む。玄太を信じて、待ってやってくれ…」 肩から力が抜けて、走馬灯のように今朝のラブラブな2人を思い出す。 それと同時に、月夜で死神としたキスを思い出して、目を伏せた。 「俺にも説明してよ…。俺にも…説明してよ…」 膝から崩れ落ちて項垂れる。 体が重くて、心臓が痛い シンと静まったダイニングテーブル。 テーブルの上の夕飯は豪華なのに、何でこんなに重たい空気なの… 「わぁ、百合子ちゃんの味付け、完璧だね。お母さんの味なの?」 俺は緊張しまくる百合子ちゃんに声を掛けて微笑んだ。 百合子ちゃんは俺の顔を見て、うん。と言って少しだけ笑うけど、やっぱり気になるよね… ムスッとして、眉間にしわを寄せる…玄ちゃんが。 「玄ちゃん、唐揚げ美味しいでしょ?そんな怖い顔したら、百合子ちゃんが心配しちゃうよ?もっと美味しいとか、可愛く言ってよ。」 玄ちゃんに…こっちも見もしない彼に、話しかけて笑う。 何だろう…すごく悲しいよ… 「おじちゃんは?美味しいでしょ?」 「んまい!」 「明日はサバも焼いてあげるよ?」 俺は玄ちゃんを諦めて、玄ちゃんのお父さんと話した。 …後で、ゆっくり話してやる… そう言った玄ちゃんのお父さん… 一体、玄ちゃんは何を知って、こんな風になっちゃったんだろう… 俺の手を拒絶しちゃう様な事… 「唐揚げ美味しい~!」 箸に唐揚げを挟んで、すごく美味しそうに食べる益田。 良いね。益田、お前の空気を読めない所が今は救いだよ。 「梅ちゃん、玄ちゃんどうしたの?」 お皿を洗っていると、百合子ちゃんが隣に来て聞いて来た。 俺はお皿を洗いながら、何て言ったらいいのか困って固まる… 「何か…俺の事、怒ってるみたいだ。」 そう言って、ポタポタ落ちる涙をお皿に落として水で流した。 百合子ちゃんは俺の肩を抱いてくれた。 「きっと許してくれるよ…梅ちゃん」 暖かくて、優しくて…俺は頷いて、それ以上何も言わなかった… 「おじちゃん…」 本堂に呼ばれた俺は、縁側に座る玄ちゃんのお父さんの隣に座って月を見上げた。 「見て…すごい綺麗だね…」 俺の声に玄ちゃんのお父さんは、一緒に空を見上げて感嘆の声をあげた。 「月は悪者扱いされるんだ…。月明かりは浴びたらいけないとか…月に誘惑されるとか…。あれは全部嘘だよ…。月は偉大なんだ。だから、畏れてそんな事を言うんだ。」 俺はそう言うと月の光を受ける様に目を瞑って深呼吸した。 あれを見て、美しいと思わないなんて…馬鹿だよ… 「話し聞かせて?」 俺は玄ちゃんのお父さんの顔を覗くと、足を振りながらそう聞いた。 何故だろう…気持ちは落ち着いている… 傷ついているけど、落ち着いているんだ…。 「梅之助、どうして死神がお前に執着するのか、さっき分かったんだよ。本当に、ついさっきだ。お前にしたら、玄太の態度は寝耳に水だし、戸惑うだろう…だが、どうか、あいつの気持ちが落ち着くまで、少し、時間をやってくれ…。」 「さっき…おじちゃんがあの人を追い出していた時…あの時の話?」 悲痛な顔をする玄ちゃんのお父さんに、俺は静かに聞いた。 玄ちゃんのお父さんは、月明かりに照らされる庭の雑草に目をやって、少しずつ話し始めた。 吉尾君を能力を封じる札を沢山付けた檻に閉じ込めた。 玄太は、お前を襲った彼に嫌悪感を剥きだしにしていたから、俺は言った。 「好きとか、嫌いとかの感情を抜きにして、あんなに執拗に襲うのは、何かの狙いがあるに違いない。お前が怒るのは当然だ。しかし、感情に流されて、暴力をふるうのは良くない。そうした事の理由を聞きそびれてしまうからだ。それが重要なカギとなる場合、それはとても不利になってしまう。今少し、自分の感情を抑えなさい。」 玄太はムッとしたが、俺の話を静かに聞いて、頷いた。 それを聞いていた、吉尾君が話し始めた。 お前と死神についての噂を。 「梅之助をどうして狙うのか、玄ちゃんは知りたいよね?」 「聞くな、玄太。行くぞ…」 惑わせて来ると思った。 だから俺は玄太を連れて、そこを離れた。 廊下を歩いて、玄関の前に誰かの足が見えた。 俺は檀家さんが来たのかと思って、急いで玄関に向かった。 それはあの御方で、俺の顔を見ると、おっしゃった。 「梅之助のケガの理由を聞きたい。」 本当の事を言ったら、あの方は吉尾君を殺すだろうと分かっていた。 言葉にあぐねていると、玄太が言った。 「奥に封じられた者が、梅之助を襲って首を噛んだ。」 と… あの御方は目の色を変えて、玄関を上がると、案内も無いのにどんどん吉尾君に近付いて行く。 殺されては堪らないと、俺は必死にあの御方、神を、止めた。 しかし、敵わず、吉尾君の前まで、あの御方は行って、彼の首を絞め始めた。 「なりません。なりません。どうぞ、お鎮まり下さい。彼奴らの目的が分からぬままだと、この先、梅之助を守る術に見当を付ける事が困難になります。どうぞ、お鎮まり下さい。」 こんな時、神主だったらもっと上手く話すことが出来たんだろうか…自分の言ってる言葉があの御方に届いているのかも分からぬまま、俺は必死に神に鎮まる様お願いした… 吉尾君の息がこと切れる前に、あの御方は力を抜いて、吉尾君を放してくださった。そして、息を荒げて呼吸をすると俺を見下ろした。 あの御方の目の色は恐ろしい赤黄色になって、低く唸る声は家を揺らす程で、俺は身の縮む思いで、顔も上げられず、ひれ伏してお願いを聞いて下さった事に感謝した。 「あはは、本当なんだな。死神が、死神が人間を愛したんだ。梅之助を愛しているから、ルールも無視して、救ったんだ!!あはは!これまた一興!あはは!!」 死にかけたにもかかわらず、吉尾君はそう言って笑い転げた。 分かっているかもしれないが、拝み屋という仕事は、業を積んで、精神を破壊していく…。彼らの死に際は壮絶で、今まで誰かのために払ったものや、引き受けたもの、周りにいる霊たちは彼らが弱るのを虎視眈々といつも狙っているんだ…。そして、臨終の時に一斉に襲って殺す。だから、彼らの御遺体はあまりにもひどい形相で人には見せられないのだ…。 吉尾君しかり、ほかの人も、百合子さんに暴言を吐いた娘も、同じだ。 だからこそ、彼らがお前に目を付けた事は、重大であり、阻止するには慎重な行動が必要不可欠なんだ… あの御方は吉尾君を眠らせて黙らせると、俺の方に向き直して話始めた。 お前との始まりを、私を信用して、教えてくださった… 「梅之助に初めて会ったのは彼の両親が死んだ日だ。事故の後、幼い彼は死にかけていた。私は両親を連れて行った後、彼の臨終を待っていた。まだ赤子同然の彼は純真で美しい魂の色をしていた。いよいよ彼の心臓が止まり、さて連れていくかと見回したが、彼は何処にも姿が見えなかった。途方に暮れていると、私の手に…この手に、小さな手を入れて握って来たんだ…」 そう言って、愛おしそうな顔をすると、手を握って自分の胸に当てられた。 この神は本当は人間なのではないかと疑う程に、情緒的に、梅之助への愛を語った。 「すぐに愛おしくなり、このまま連れて行って転生させるのが惜しくなった…このまま育てて、我が物にして、対の死神になるのも悪くないと思った。それで、私は梅之助に自分の命を少し分け与えた。」 それだ…!そう思った。 人の命と違って、神の命など、体に入れてはいけないのだ…。人間なのに神の命の混ざった梅之助は、人間の寿命を過ぎても生きるだろう。もしかしたら彼らの様に、一定の成長を遂げたら、老いもしなくなるかもしれない。それは不自然で、不均衡だ… それのせいで梅之助は幽霊ホイホイの様になり、あの病院でも15年も耐えられた…そして、それのせいで今拝み屋に狙われている。俺はそう確信した。 「しかし、頃合いの良い頃に連れて行き損ねて、お前との共同契約を結ぶ羽目になった。そして、あの子と歳月を共に過ごして分かったんだ。私は梅之助を愛していると…。彼が喜べば、私もうれしい。彼が悲しめば、私も悲しかった…。」 玄太がジッとあの御方を見ているのが気になった。神が愛する人に、神が命を分けてまでも救った人に愛されるとは…どんな思いなのか…玄太の心中を察したくて、彼の様子を伺い見た。 昔から梅之助はお前を慕って、異常なまでに慕っていて、年頃の頃はよく、好きだ嫌いだと喧嘩をしていたのを覚えている。お前が拒絶しても、梅之助はずっとお前だけを思っていた…。この執着は異常なまでだ。 何かご縁があるのだと、ずっと思っていた。 玄太に話すように彼の目を見て、あの御方は話を続けた。 「悪い予感がしていた。案の定、梅之助の姿を見なくなった…そして玄太…お前を送り、ここでの葬式を見た時、あの子がもうこの世にいない事を悟った。私の…私の大切な…愛しい人が…突然いなくなった…その時の絶望…悲しみは私を酷く打ちのめした。しかし、死人は必ず私が送る。私は梅之助を送っていない…。希望を少しでも抱いて、役目を果たしていた…」 そう言って、悲しい涙を落とす死神を見ても良いのか分からず、俺は視線を下げた。 畏れ多いと思って、見てはいけないと思って視線をあげる事が出来なかった… 「時が過ぎて、ある日、愛しいあの人の声が聞こえた。私は急いで彼の元に向かった。しかし、彼は既に魂の状態になっていて、長い間、時間の牢獄に閉じ込められていたんだ…信じられるか…あんなに大切にしていたのに…こんな所で、狂うまで痛めつけられていたなんて…可哀想で、可哀想で仕方がない…!どうして…こんなひどい仕打ちが出来るのか…?私が命をあげたばかりに梅之助は、あの牢獄で何年も苦しんだんだ…あんな思い、2度とさせてはならぬ…」 あの御方はそう言うと、懐から手のひらに乗る玉を出された。 それは汚い玉だった。 中に泥水と混ざりきらない墨汁がまだらに模様を作って、方々に入ったヒビがポロポロと剥がれて落ちて、粉になって消える。 脆そうに、今にも崩れてしまいそうだった。 それを玄太の手のひらに乗せて言った。 「これがその時の梅之助の魂だ…。あんなに美しかった彼の魂が、こんなに風になるまで、あの場所で過ごしたんだ…。可哀そうだ…本当に、可哀想だ…」 玄太の手のひらに乗った汚れた魂は、玄太に触れた部分だけ、まるで浄化されるように透明度を上げた。それを見て、あの御方は悲しそうに涙を落として笑った。 「やっぱり、お前が好きなのだ。お前を愛しているんだ…どうか、それを全て綺麗にしてあげてくれ…そうしたら、私が消し去るから…。」 あの御方にそう言われて、玄太は激しく動揺していた。自分にだけ反応する、梅之助の魂を…怖いと思ってしまったんだ…。しかし、死神に対峙され、考える間もなく、玄太は恐れを抱きつつ、両手で壊れそうな梅之助の魂を包み込んだ。 そして、しばらくして手を広げると、先ほどの汚れた魂が美しい光を放って輝いてみせた。 あの御方は大粒の涙を流して喜んで、玄太から梅之助の魂を受け取ると、愛おしそうに頬に擦り付けて言った。 「良かったな…玄ちゃんに会えて、良かったな…梅ちゃん、今、解放してあげよう…」 そう言って両手でその魂を包むと、潰して壊した。 あの御方は声をあげて泣きながら、壊れた彼の魂を見て、空気に溶けて消えて行く彼の魂のかけらを、愛おしそうに指で撫でながら、良かったね。と何度も呟いていた。 その様が、玄太にはショックだったんだ… 自分だけに反応する梅之助の魂も、神に愛されながらも、自分にしか反応しない梅之助の一途な愛情に、恐れを抱いてしまったんだ。 俺はその後、あの御方にこの家から出る様に必死にお願いした。 神に人が近付いて、良い事はあまりないからな… 「そうか…」 それしか言えなかった…俺のあの時の魂を、あの人はずっと持っていたんだ… 綺麗にしてから壊して、救ったんだ…。 涙が一筋落ちて、心が軽くなる。 「大丈夫だよ…おじちゃん。さすがに…跡取りをここで絶やす訳にいかないもの。それくらい、俺だってちゃんと考えてるよ。玄ちゃんには良い奥さんに来てもらって、幸せになってほしい…。もう、解放してあげた方が良いよね…ずっと、付きまとっていたから…麻痺しちゃっていたけど、俺って男だから…子供産めないもんね…」 自嘲しているわけではない…本当に心からそう思ったんだ… 俺はそう言うと縁側を立って、玄ちゃんのお父さんを見て言った。 「明日のサバ焼きの焼き加減を聞いておこう。」 すると、玄ちゃんのお父さんは少し困った顔をして笑った。 「皮、焦げ焦げで…」 俺はにっこり笑って、了解!というと本堂を後にした。 玄ちゃんの部屋の前を通りすぎる。 胸がチクンと痛くなるけど、平気だ…きっと慣れる。 あまりにしつこくしすぎたんだ…魂レベルでそんなの、見たら引くよな…。 俺だったら…嬉しいけど、玄ちゃんは…怖くなったんだ。 お布団を敷いて、横になる。 月が見たくてカーテンを開けた。 「あぁ…綺麗だ…凄く綺麗だ…」 まん丸の満月。いつもより大きく見えるのは何でかな… もう終わろうかな… 結局、俺は愛してもらえなかった… もう終わろうかな… 悲しいよ…玄ちゃん 涙があふれて目の前が曇る。 泣き声が隣の部屋に聞こえない様に、布団を口に当てて抑える。 体の隅々まで、駄々をこねる様に暴れそうになるから、布団の中で体を丸めて堪える。 あの部屋で、玄ちゃんを諦めた時を思い出す… あの時だって、出来たんだ…もう解放してあげよう… 「はぁはぁ…うっ、ううっ…げんちゃぁん…はぁはぁ…」 息を吐いて、心を静めて、俺なら出来る… 玄ちゃんを愛しているなら…出来る。 愛してるさ…だから諦める。 俺は男だから…いや、違う。 関係ないんだ…男でも愛せる。 彼は俺を愛せなかった…ただ、それだけなんだ… もうこれ以上しつこくするのは止めよう… 愛しているから。 諦める。 幸せになってほしいから。 諦める。 隣の部屋の扉が開く音がした。 開けっ放しのカーテンから朝の光が容赦なく降り注ぐ。 俺は相変わらず開かない目を擦って、微睡んだ。 服を着替えて、布団を畳むと、部屋を出た。 台所に向かう途中、玄ちゃんに会った。 「んはよう」 そう言って通り過ぎた。 そのまま台所に行って、冷蔵庫のサバを出す。 コンロに付いている魚焼き器を一度出して確認する。 「これ、5枚も焼けないじゃん…」 1人で呟いて、顔をあげる。 何だか胸がさっきから痛い。 深呼吸して、お味噌汁を作る。 今日の具は玄ちゃんの好きな油揚げを入れよう。 また胸が痛くなって、深呼吸する。 誰かが言っていた。大抵の事は深呼吸すればよくなるって… 腹痛が酷い時、試したら本当に効いたんだ。 だから、やってみると良い。 …頭の中で、誰と会話してるのかな…俺… サバをとりあえず3匹焼く。 百合子ちゃんが起きてきて、サバの話をする。 彼女は寝ぼけた顔であくびをすると、俺の顔を見て、一言言った。 「フライパンでやればよかったじゃん…」 その手があったか! 俺は残りの2匹をフライパンで焼いて、ダイニングテーブルに出した。 小松菜があったから、お浸しにしよう… 鍋にお水を入れて、火にかける。 小松菜の処理をして、根っこの部分に切れ目を入れる。 ここが一番栄養があるからね。 玄ちゃんに全部食べさせないと… また胸が痛くなって、手をついて痛みをこらえる… 朝の御勤めを終えた玄ちゃんのお父さんと玄ちゃんがやってきた。 ダイニングテーブルに着いたのを確認して、俺は益田を起こしに行く。 「梅ちゃん、私が行こうか?」 そう言って席を立ちかける百合子ちゃんを止めて、言った。 「男の寝起きは女の子には見せられないよ~」 そう言って笑うと、益田の寝る部屋に行く。 ぐっすり寝てる顔を見て、笑えて来る… 鼻の穴に指をあてて窒息させてやる。 「んがっ!」 変な声を出して起きるから、俺は笑いながら転がった。 「お前って、鼻呼吸なんだな?」 そんな下らない会話をしながらダイニングに戻ると、席についてご飯を頂く。 「梅ちゃん、美味しいよ?サバありがとうね~」 玄ちゃんのお父さんがそう言って笑う。 有言実行、皮までちゃんと食べていた。 お茶碗を洗っていると百合子ちゃんが家に帰る時間になった。 益田も一緒に帰るって… そのまま付き合っちゃえばいいのに、なんて冗談を言ったら、まんざらでも無さそうな反応に、驚いたけど、嬉しかった。 玄関で彼らを見送ると、視界に入った死神が俺に手を振った。 俺は手を振り返して歩いて彼に近づいた。 「おはよう。今日も黒い服だね。」 俺はそう言って彼に抱きつくと、胸に顔を埋めて泣いた。 「どうしたの…梅ちゃん、悲しいの?」 彼が心配そうな声で聞いて来るから、言った。 「違う。悲しくない…昨日の満月は綺麗だった。まん丸で…とっても綺麗だった。」 そう言って笑うと、彼の顔を見上げて付け加えて言った。 「この前のあなたの目の色だ。同じ色をしていた。」 寿命を全うするなんて、初めから考えていなかった。 いつかその時が来たら、そうしようとずっと思っていた。 「ねぇ、俺のお父さんとお母さんに、まだ会えるかな…?」 彼の顔を覗きながら聞くと、彼は驚いた顔をして困っている。 そうか…もう居ないのか… 俺は彼の手を繋ぎながら、朝の境内を巡回する。 「ワハハ、ほら、見てよ。こんなに綺麗な花が咲いてるよ。このつぼみは明日には咲きそうだ。ね、どう思う?」 子供の頃そうした様に、境内を巡回しながら、どうでも良い事をずっと話す。 「ん~、この石は倒れそうで危ない!どう思う?」 彼に聞くと、彼も危ないというので、石に土を沢山噛ませてあげる。 まるで子供の頃に戻ったみたいで、彼に抱きついて甘える。 「もう嫌だ…もう、終わりたい…」 俺はそう言って彼の体に自分を埋めて泣く。 まるで躁うつ病の様に、浮き沈みする気持ちをコントロールできない… いや、する必要も無いんだ。 「もう一つになろうよ…死神は合体できないの?」 涙をこぼしながら甘える。 子供の時にそうした様に… おもむろに彼が俺の頬を掴んで持ち上げると、ジッと顔を見てくる。 「なんだよう!」 俺がそう言うと、そっと口にキスした。 それが自然な様に、俺は彼に抱きついて舌を絡めてキスした。 「もう連れて行ってよ…もういい。もう飽きた。…ね?」 俺が彼の耳元でそう言うと、彼は俺の手を掴んで手のひらに指を置いた。 「いいの?梅ちゃん。本当に連れて行っちゃうよ?」 何を今更、躊躇する事があるのか…俺は彼にキスして答えた。 「良い。」 しかし、俺の手のひらに置いた指を、彼は動かせないでいる。 良いって伝えたのに、いつまでも指を立てたまま、動かせないでいる… 向かい合って、まるで手遊びでもしている様に手を繋いで、静止する。 いつまでも動かない指に、彼の顔を見上げると、彼は俺の顔を見つめていた。 「出来ない…」 「そうか…」 あまりに長く居過ぎたんだ…生きてる俺と… 俺は彼の顔を見て言った。 「じゃあ、また今度やってみよう…」 そう言って手を繋ぎ直すとクルクル回って彼の胸に顔を埋めた。 そして両手で彼の背中を抱いて、さすった。 木漏れ日を見上げて、キラキラと落ちる光を見ていると足音と共に、声を掛けられた。 「おはよう、梅ちゃん。友達を…迎えに来たよ…」 成瀬君だ。 俺は君が大嫌いだよ… 百合子ちゃんを虐めたね、益田に俺を襲わせたね。 許せない。 許せないよ… 「玄ちゃんは本堂に居るよ。」 彼は俺の傍にあの人がいるって知らなかったみたいだ。 声を掛けた途中から、明らかに表情が変わった事に気が付いた。 俺は君が嫌いなんだ… だから…ごめんね。 俺は成瀬君に近付いて行き、笑顔で彼に尋ねた。 「ねぇ、どうして、成瀬君たち、拝み屋は、俺の処女を奪おうとするの?」 成瀬君は俺の後ろの人に視線をあげて、表情を固めた。 だから、もっと深く聞いた。 「昨日もパンツまで下げられたんだよ…なんで?俺とエッチしたら、何か良い事が起こるの?ユニコーンは処女厨って有名だけど、成瀬君たちも、処女厨なの?しかも、男の。ねぇ、教えてよ。」 彼の顔がどんどん青ざめていくのが面白くて、もっと聞いた。 「俺が、死神の…だから、狙うの?」 成瀬君は頭を下げて、悲鳴の様な声をあげた。 振り返ってあの人の顔を見ると、綺麗なお月様の目をして成瀬君を見ていた。 俺は死神に抱きついて、頬を寄せる。 このままこの人と違う所に行きたいな… ここじゃない、違う所に… 「あの人…大嫌いだ」 俺がそう言うと、彼は成瀬君の寿命をいとも簡単に奪った。 彼は白髪になってよろけながら境内を出て行く。 多分すぐ死ぬだろう… 死神の顔を見上げて目の色を見ると、お月様の中に赤く光る点が見えた。 それがお月様をオレンジに染めて、とても美しかった。 「俺の目もそんな綺麗な色になったら良いのに…」 そう言って彼の目を塞ぐように指で瞼を下げた。 両手で彼の目を塞いで、頭を抱きしめる。 「俺は…死神の…何なの?」 彼の耳元で囁くと、口をゆっくり開いて言った。 「私の命だ…」 死神の命を蹂躙することで、得られる事なんて…その名目だけじゃないか… 俺は、俺達は、死神の好きな子、やっちゃったんだよね~? そんな下らないマウントを取るために、命懸けで俺を狙うの? 宗教戦争もそうだ…相手の神にマウントを取るために命をささげる。 そんな事しても、意味なんて無いのに… 毎日食べるご飯、食材、それに必要な土、生き物の命…それらに感謝して大切にする方が、よっぽど神を尊ぶ行動なのに… 人はいつの間にか自分の思想を神の言葉と言って垂れ流すんだ… そしてその不気味な思想で、不条理な事を大義と偽ってする。 俺を犯したって、何も残らないのに… 「よく分からないよ。」 俺はそう言って、彼の目の上に当てた手のひらを退かすと、解放してあげた。 そして、吉尾の元に向かった。 あの人の手を繋ぎながら… 死神と縁側に座って、吉尾の様子を眺めている。 拘束を解かれても、お札に囲まれた吉尾を見て思った。 霊能力者って、お札で拘束できるんだ…。 一体彼らはどんなことが出来るのだろう… 例えば、霊を除霊したり追い払ったり…探し物を見つけたり、物を動かしたり、念力とか使うんだろうか…これで一本特集が組めそうだ… はっ!! 「吉尾のせいで編集が居なくなったから、もうYouTubeに投稿できないじゃないか!」 俺は課題を思い出して、吉尾に文句を言った。 吉尾は俺を見て顔を歪めて笑った。 あんな顔する奴じゃなかったのにな… 「梅ちゃん、少し静かにしていて。」 玄ちゃんに怒られた… 今日、初めて俺の名前を呼んだ気がするよ。 昨日はキスしてくれたのに…俺の重い愛が怖くなったんだね… 「ごめん…」 それだけ言って、黙るよ… 死神は俺の顔を見ている。玄ちゃんへの複雑な心が読まれそうで嫌だから、片手を頬に添えてクイッと動かして吉尾の方に彼の視線を向けた。 中央の座布団に法衣の裾を整えて座ると、玄ちゃんのお父さんがお経をあげ始めた。 これはいつものお経だ。昨日の怖いやつじゃない… 良かった。 玄ちゃんも目を閉じてお経をあげている。 あぁ… 気が付いたら、俺はすぐに玄ちゃんを見つめてしまう。 こういうのが…嫌なのかな… でも、見てしまうんだ。彼がちゃんと生きているのか… 今のこの瞬間にも死んでしまいそうで、怖くて、堪らなくて、見てしまう。 玄ちゃんの髪の毛。 今日は寝ぐせを取らなかったのか? 後ろの方がまだ少し跳ねていて、とても可愛らしい。 俺がジッと見つめるせいか、玄ちゃんと目が合う。 彼は静かに視線を外して、床に落とした。 俺は昨日、心に誓ったことを思い出して、玄ちゃんから視線を外した。 愛しているから諦める… そう決めたのに…すぐこうやって調子に乗るんだ… 自分が嫌になるよ… 「なぜ梅之助を狙う。」 玄ちゃんのお父さんが吉尾に向かい合う様に座って、彼に聞いている。 吉尾は涼しい顔をして玄ちゃんのお父さんの目を正面から受けている。 俺は死神の手を握りながら、そのやり取りを聞いていた。 「梅之助が…アハハ、あは…あいつが死神の物だから…孕ませて、汚してやりたくなる。神の命をもらって神に愛されたから、汚して、壊して、泣かせて、痛めつけて…」 吉尾がこちらを見て固まって震える。 俺は振り返って、あの人のお月様色した目を両手で覆って隠した。 その様子に玄ちゃんのお父さんは固唾を飲んで、吉尾は驚愕して震えた。 そうなんだ…彼は死神。 だから、こんな風に扱われているのが衝撃なんだろう… 「あいつも殺そう…」 死神がそう小さく唸って言うから、俺は、まだ駄目だよ。と言った。 彼の目を覆ったまま、俺は吉尾に話しかけた。 「さっき、成瀬君が来たよ…でも、すぐに帰っちゃった…何でか分かるよね…」 俺の言葉にしばらく考える様子で、吉尾は口を開けてこちらを見ていたが、顔が青ざめていくのが分かって、俺は頷いて言った。 「百合子ちゃんと益田に何をしたの?」 俺の声に体をびくつかせると、吉尾は表情を硬くして言った。 「お前をおびき寄せるために…利用した。」 そうなんだ…そして、俺は死神をおびき寄せるための餌か… だんだんと話が見えてきた。 結局、死神を…神を蹂躙したかったんだ… 「なぜ?お前たちは霊能力を持っていて、霊や、神様と近いはずなのに…なぜそんなに神を嫌うんだ…なぜ、恨んでいるんだろう…」 俺は死神の目を塞いだ手を離して、頭を抱えて撫でてあげた。 彼は気持ちよさそうに目を細めて俺に体を寄せる。 そう、犬の様にそうして、甘えて体を寄せてくる。 「望んで手に入れた能力じゃない…精神を病んでいく友や仲間を見て、次は自分かと怯えて暮らす。気を抜くと俺の周りには、俺を狙う霊や物の怪が現れて、いつも気が抜けない…そして、それらを一掃することなど出来ない…消えてくれないんだ…!人の為に働くのに、自分が代わりに汚れていく恐怖を感じた事があるか…?」 吉尾の悲痛な声をじっと聞いて頷いた。 「ある…。そして、狂ってしまった方が楽だと観念した…」 俺がそう言うと、吉尾は俺の方を見ながら涙を流した。 そして、体を震わせながら声をあげて泣いた。 「そうか…そ、そうか…!お前には分かるのか…あはは、はぁはぁ…そうか…」 まるで…あそこにいる白い人たちと同じだ…あの時の、俺と同じ… 吉尾の慟哭を聞きながら、俺は静かに言った。 「お前にも、魂が浄化される様な誰かが要れば…良かったのかな。」 そして、気付いてしまった。 俺が玄ちゃんから離れられない理由を… そして、彼が…この腕の中の死神が、俺から離れられない理由を… そして、どうしようもない状況に吹き出して笑う。 「なんという仕組みだろう…ある意味凄いバランスだ…」 そう言って、1人納得すると、吉尾の方に歩き近づいた。 そして彼を抱きしめると言った。 「ありがとう、お前のおかげで仕組みが分かった。これで、やっと理解できた。」 そう言ってあの人の元に戻ると縁側から降りて、吉尾を見て聞いた。 「吉尾、死にたいか?」 俺の問いに、吉尾は驚いた顔をした後、神妙な顔をして言った。 「まだ、やる事がある…」 「では、死にたくなったら尋ねて来い。」 俺はそう言って、あの人の手を握ると一緒に境内に出た。 「分かっちゃった。何で、あなたが俺から離れないのか…、何で、俺が玄ちゃんから離れられないのか…分かっちゃった。」 そう言ってあの人に微笑むと、彼は俺の方を見て微笑んだ。 魂とは、実に素直で厄介で、脆くて繊細なんだ…

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