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下校〈龍也視点〉

話も取り敢えず 一段落して 屋上を出ようと 立ち上がった透に 後ろから 抱き着きました。 「ん? どぉした?」 「あ、あの透…… な、夏休みが 明けたら 私と付き合って 頂けますか?」 「へ?」 驚いて、一瞬 思考回路が止まりましたね(笑) 「龍也、 もう一回言って……」 ちゃんと聞こえてた はずなんですけどね。 「透は意地悪ですね/// もぉ一回だけしか 言いませんからね」 「夏休みが明けましたら 私と付き合って下さっい///」 きっと私は顔が 真っ赤ですね。 「俺で良いのか?」 透じゃなきゃ駄目なんですよ? 「はい///」 「でも何で、 夏休み明け?」 会えないのが嫌だからです。 「後一ヶ月で 夏休みで 会えないじゃ 無いですか 淋しいんです//////」 「何だその理屈は? プッ」 笑われてしまいました。 「駄目ですか?」 上目遣いをしてみました。 「分かった 夏休み明けからよろしくな」 「はい、有難うございます」 断られなくてよかったです。 「今日はもぉ帰ろう」 五・六時間目を サボった透と 六時間目は授業が 無かった私。 「そぉですね 家まで送ります」 近いからいいと 言われましたが 一秒でも一緒に居たいんです。 「私が送りたいんです」 その言い方は狡いと 言われましたが気にしません。 「歩いて十五分だぞ?」 本当に近いんですね。 「それでも、 送りたいんです。 手を繋いでは 歩けませんけど 送るだけでしたら 怪しまれませんよ」 手を繋げたら どんなにいいでしょうか。 「分かった、 取り敢えず屋上を出よう」 「俺は先に行くから 裏門で待ってる」 二人で出て行けば 怪しまれますもんね。 「分かりました 私もすぐ行きますから」 別々に屋上を出ました。 話を聞いて下さった事も 好きだと言って 頂いた事も告白に 同意して下さった事も 私には幸福な時間です。 「早く行かないと 透が心配しますね」 誰も居ない屋上で 小さく呟いた後 早足で、階段を 駆け降りました。 私は岩滝先生が 居ない事を 確認してから 職員室に入り 荷物を取り、残ってた 先生方に挨拶をしました。 挨拶もそこそこに 「お先に失礼します」と 言って、職員玄関まで 走りました。 でも、それが 凶と出てしまったのです…… 運が悪いんですかね? 何と、職員室に 居ないと思ってた 岩滝先生にあろうことか、 ぶつかって しまったのです。 私は心の中で諦めの ため息を付きました。 〈はぁ、透と 帰れませんね。 早めに屋上を 出るべきでした……〉 「よぉ、九重先生 そんなに急いで どぉしたんだ?」 なんだっていいでしょうに。 「家の都合で 帰る所ですよ」 こうして話してる 間にも、刻一刻と 時間は過ぎて行き、 透に心配を かけているんでしょね…… 最悪です…… 最悪な事に 廊下には誰ひとり 居ないのです。 〈透、ゴメンナサイ〉 私が全力で走った所で 岩滝先生には 勝てないでしょうね。 体育教師の彼と 日本史の教師では 勝ち目がありません。 職員玄関までは まだまだですし、 じりじりと 一歩一歩 詰め寄って来る 岩滝先生に 絶体絶命の危機を 感じた時、後ろから 名前を呼ばれました。 「九重先生!!」 名前で呼ぶ訳には いかないので、 苗字でしたが 聞き間違える はずのない透の声でした。 「新庄君……」 私も苗字で呼びました。 「何だ新庄、 まだ残ってたのか」 馬鹿にしたように 鼻で笑いました。 「九重先生を離せ!!」 「お前には関係無いだろ?」 普通に考えれば 関係ないでしょうね。 「例え関係無くても 九重先生が 嫌がってんだから 離せよ、この変態野郎」 透が、私の名前を 呼んだ時には 既に岩滝先生に 捕まってしまった 後だったのです。 「生意気な一年だな」 一年生にしては 気は強い方かも しれないですね。 「ふん!!」 今度は透が鼻で笑いました。 「退学にされたいのか?」 そうです、彼なら 可能かもしれません…… そぉこの男はまだ教師。 一年生を退学にするなど 容易い事なのですが 透はそんな言葉を 気にしてない様子です。 「別に構わないぜ?」 やれるものなら やってみろと言わんばかりの 顔をして透が言いました。 「何?」 「その前にお前の 解雇が先だろう? 女子達の着替えを 覗いて、隠し撮り する様な奴には 無理だろからな」 「!?」 透は勝ち誇った様な 顔で岩滝先生を見ました 透の言葉に 黙ってしまった岩滝。 もはや"先生"などと 呼ぶ義理はありません。 覗きの件は先程透から 聞いたばかりなので さほど驚きませんが 隠し撮りまで していたなんて 驚愕の事実が 発覚しましたね。 しかし、何故 透は知って居る のでしょうか? 確かに、私も 色々撮られましたが 本人が写真を 見せて来るまで 撮られた事を 全く知りませんでした。 こんな状態 (未だに、岩滝に 捕まった状態)で 透に質問するのも どうかと思いうですが、 気になります。 「あの、新城君? 何故、彼が 隠し撮りをしている事を 知っているのですか?」 名前で呼びたいのを 我慢して訊いてみました。 自分は覗きなど しないと言っていた はずなのに どぉして、岩滝が 隠し撮りをしている事を 知っているのか、 もしかしたら、実は 透も覗きをした事が あるのではと少し 疑ってしまいそうに なりかけて、その 考えを止める事にしました。 そして、透から返って来た 答えに思わず 笑ってしまいました。 「岩滝の机の引き出しに 大量に、女子達の 写真があったから」 それはまた…… 「本当ですか?」 「あぁ」 「何時、見たんですか?」 一体、いつの間に…… 「一週間くらい前」 その答えに、 今ま黙っていた 岩滝が怪訝そうな 顔をして透を見て居ます。 「それはまた、何故?」 何で、岩滝の机なんて 見たんでしょか? 「九重先生の話を 聞いた時から少しずつ、 調べていたんだ」 「校長や他の先生達に 言わなかったのは、 入学してたった二ヶ月弱の 俺の言う事を 信じてもらえるか 分からなかったからだ」 「女子達の 写真の中に 混ざって九重先生の 写真も何枚かあった(怒)」 はい? 私の写真があった? 最近撮られた覚えは 無かったのですが 一体何処で? 注意してた はずなんですが…… 「私が写っていた 場所は何処ですか?」 「学校の中庭とか 駅のホームとか 後、授業中の 教室とかだった」 中庭やホームは 気づかない内に 撮られていたとしても ”授業中の教室” と言うのは 少々無理があるのでは? 岩滝の授業が無い時に 撮ったしても、 下手したら後ろの席の 生徒に気づかれる 可能性がありますよね? どぉやって? 「授業中と言うのは 無理があるのでは?」 「無理じゃない。 だって、 授業参観の日なら 親達に紛れて 撮れるだろ?」 「小中学校 程じゃなくたって、 子供の授業参観を ビデオやカメラで撮る 親も居るんだ」 成る程、 上手くやりましたね。 「一人だけカメラを 構えていたら かなり不自然だけど 親達に紛れていれば よっぽどじゃない限り 不審に思う人は居ない 其処を狙ったんだよ」 授業参観…… それは確かに、 怪しまれずに 撮れるかもしれませんね。 ある意味迂闊でした。 「現に、その写真には 周りの親達がちらほら 写ってるのがあった」 言葉が出ませんね。 「そぉですか…… それで、その写真は?」 まだ岩滝 が持ってるんでしょうか? 「俺が持ってる」 回収してくれたんですね。 「な!? 無いと思ったら お前が持って 行ったのか!!」 「あぁ」 平然と答える透に 岩滝が憤慨し 私を離して 透を追いかけ始めました。 「お前、 あれを返せ!!」 盗撮写真を 返せと言うのも いかがなものかと思いますが。 「やだね~ あれを校長に 見せるんだから」 今まで顔を真っ赤にして 透を追いかけていた 岩滝の顔が今度は 真っ青になりました。 流石に、校長先生に 見せられたらヤバイですよね。 追いかけられながら、 透がまた、 爆弾発言をしたのです。 「そぉそぉ、 女子達の隠し撮り写真も 何枚か失敬させて もらったから~ あれを、校長に 見せれば あんたはクビ決定だな」 透の爆弾発言に 追いかける気力を 失ったようで、 その場に 化石の様に 固まったまま 止まってしまいました。 透の意外な 一面を見た気がします。 入学したてなのに、 退学になっても良いとか 教師の机から 隠し撮り写真を こっそり抜き取るとか 見た目は 至って普通の子なのに。 「透は凄いですね」 自由になった私は 化石かしている 岩滝など無視して 此処が学校とか 今だけはどぉでもよく 透に抱きつきに 走って行きました。 「そんな事ない」 口では謙遜してる 透ですが、 顔はニヤけています。 「いいえ。凄いですよ 新入生なのに色々と」 そういえばと 続きを話し始めました。 「あいつの机の中に あった写真、 今の先輩達が 一、二年だった頃のも あったんだ。 現在のもあったけど」 彼女たちが 知らないのは 幸いですね。 「それはまた、 随分と前から隠し撮り していたんですね」 「まったくだよな。 何でこいつ 教師になったんだろうな」 「しかもそれを、 新入生の俺に あっさり見つけられて、 その上取られたとなれば 流石に、ああもなるだろ」 未だに動かない 岩滝を指して 勝ち誇った様な 顔をして透が言いました。 新入生なのに 侮れませんね(苦笑) 「あんなん奴 ほっといて帰ろう」 「ですね」 やっと、帰れますね。 学校を出て、 二人で、結局 手を繋いで帰りました。 今は六月中旬 夏休みまで 後一ヶ月ちょっと。 始まってもいませんが 早く夏休みが終われば 良いな思いました。 夏休みが明ければ 透と正式に恋人同士に なれるので楽しみです。

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