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子豚は子豚でも
神様に従魔としてって言われたけど、誰かの下に就くなんて嫌だ。
幸い、森の中だしまだ、誰にも見つかってないんだし、このまま安穏と此処で暮らしてやる。
子豚には子豚の矜持がある。
どんなだよ、と言う突っ込みを自分でしながら、取り敢えずはこの場所の探検をしてみた。
チート、なんかついてないかな。
ステータス、と言ってみた。
フォンと目の前に出たよ!
すげ~!
どれどれ…
え、あ、うん。
種族 豚〔幼体〕
Lv. 1
HP 250
MP 500
スキル 暴食 愛玩 蹄の一撃 痛覚耐性
衝撃耐性 水耐性 嗅覚 言語理解
特殊スキル 変態
これってどうなの?
強いの?弱いの?
特殊スキルが変態って、SMプレイの成れの果てみたいな、スキルの結果なの?
蹄の一撃って攻撃できるって事なのかな。
結構ゲームとかの初期値では、こんな数字じゃないから、この世界の初期値が高いのかもしれない。
それなら、出てくる敵キャラはもっと強いんだろうな、と納得した。
スキルの嗅覚ってなんだよ!と思った所で、そう言えば高級食材のトリュフは豚が探すとか聞いたことがある。
もしかしたらと思い、嗅覚のスキルを使ってみた。
うん。
何もなかった。
うまく行くわけないか、と気を取り直して水場の確保、それに食料を探した。
子豚でも、人間だった頃を忘れてないし、手で果物の実を持とうとして、木に寄りかかるように足を投げ出して座った。
蹄と蹄の間に挟むようにして食べた実は、甘くて美味しかった。
体が小さいと食べる量もまだ少ないし、ミニブタな感じでスリムだし、このまま体型維持を頑張ると決めた。
もう、デブだからってイジメられたくもないし、アニメの神隠しみたいな豚になって食材にもなりたくなかった。
そして、その体勢のまま、眠ってしまったんだ。
ざわざわ
んー、うるさいなぁ。
気持ち良く寝てるのに。
「殿下!
殿下、子豚が起きました!」
へ?
何だこいつら。
「目を覚ましたか。
森に子豚とかまた珍しいな。」
見上げるとキラッキラの金髪に透き通るような薄水色の瞳、白い肌、そして程よく筋肉質だと思える体躯に、子豚の目線関係なく高い身長を折り曲げて、僕を見下ろしたイケメンが王太子だった。
あ、これ、詰んだかな。
従魔って神様言ってたし、逃げられないかな。
「私と来たら、美味いものが食べられるぞ」
いやいや、スリムな体型を維持したいので、美味しいものは避けたいです。
それに大きくなりたくない。
だって豚だもん。
どんなに痩せてても、豚の体型に変わりはないし、もし、将来食べるために育てられたりしたら、たまったもんじゃない。
そう言ったんだけど、相手にはぷきゅ、ぷひ、ぶひ、ふご、ぷきゅ、としか聞こえといなかったみたいだ。
「私の言葉を最初から理解しているのか!
普通の魔物なら、従魔契約をしないと出来ないのに、益々気に入った!
従魔契約をしてやる」
イケメン王太子が従魔契約をしようと、手を翳した時、僕は逃げる一択を行使する為に駆け出そうとした。
そして、従魔契約と思わしき魔法陣を手で叩いた。
パリン!
あ、触れた。
感触はガラス細工とか、飴細工みたいな感じだった。
「なっ!!」
「魔法陣を割った?
直接、触るなんて出来ないはずだ!」
「殿下、此奴は危険です!
討伐します!」
イケメンの周りにいた騎士達が、戦闘体勢を取った。
やだやだ、このままじゃ、子豚の丸焼き出来ちゃうよ!
「待て!!
私が無理矢理、従魔契約しようとしたのだ」
そうだ、お前が悪い!
〔ぷぎ、ぷぎゅ!〕
「ほらな、ちゃんと理解してる子に酷いことをさした。
すまんな。」
ま、まあ、謝るなら許してやる
〔ぷ、ぷきゅぅ、ぷひぶひぷひ〕
「なぁ、お前が私と契約してもいい、もしくは絶対に無理と答えが出るまで、私と城に来てもらえないか?
私を知ってもらってから決めていい。
どんな答えでも、私は受け入れるし、
お前を酷い目に合わせたりしないと約束する」
イケメン王太子はするりと僕の頬っぺたを撫でた。
くすぐったい様な、変な気持ちだった。
ふふふ
〔ぷぷぷ〕
「笑う、のか。
可愛いなぁ
やはり、お前は特別な子なんだろう」
特別、神様にも適当に放置されたのに。
いいよ、僕、アンタについて行くよ。
〔ぷきゅ、ぷひ、ぷぎゅぷきゅきゅぷ〕
相手は理解できてないみたいで、首を傾げたから、僕はその手に自分の手を乗せた。
蹄だけどね。
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