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捕食者と子豚
黄金のライオンだった。
そして、そのライオンは僕のために怒ってくれたんだ。
ちょっと、うん、かなり嬉しかった。
「勇者選定に通ってもいないモドキ風情が、私のさきに無礼な口をきくな。」
「俺は神から、勇者として召喚されたんだ!」
一瞬、王太子が怯んだけど、僕は知ってる。
勇者候補だ、バカめ!
あくまで、候補であの神様は適当に、強そうなのを選んで、こっちに連れてきた人攫いだ、バーカバーカ。
王太子の胸をトンと叩いて首を振った。
言葉が分からないだろうからジェスチャーで、違うよ、候補で五万といる中の一人だと。
まあ、通じるわけないか。
「俺は勇者だ!」
攻撃魔法と思われる魔法陣が浮かび上がったから、僕は王太子の腕から飛び出して、その魔法陣を叩き割った。
バリンバリン!
王太子の時とは違って、派手な音を立てて砕け散って光の粒になって消えた。
おお、とかきゃーとか、まあ、すごい悲鳴に近いような声を聞いたけど、仕方ないし。
「さき、ありがとう。
私を守ろうとしたんだな。」
まあ、ね。
〔ぷきゅ、きゅ〕
「勇者ルイ、お前はこの王の前で攻撃魔法を使った罪は重い!」
「いや、いや、あの豚がおかしいだろうよ」
山際が反論して、僕を討伐するべきだって言い始めた。
「この子は私の伴侶になる。
軽々しく討伐などと言う言葉を吐くな!
勇者になってから出直して来い!」
そうだそうだ!
〔ぷきゅぷきゅ!〕
王太子と山際の喧嘩は収まりそうにないし、僕も煽ったりもしたし、国王も重罪とか言ってるし、頭を抱えてしまった。
「控えよ!!」
鶴の一声!
声に威圧を乗せてるんだ。
一斉に平伏する。
「勇者候補ルイ、貴殿は王太子への無礼及びその伴侶候補への侮辱に対する罪、許し難い。
あくまで貴殿は候補に過ぎない。
そこを理解出来なければ、選定も通るまい。
勇者候補から外す事を決定する!
疾くこの国から去れ!」
おぉ!あの山際が!
性格悪いけど、ザマアミロだ。
でも、あいつの事だから何か逆恨みしてやらかしそうなんだけど。
「くそっ!
俺は神が召喚した勇者だぞ!」
「勇者とは、弱者を守り、人を世界を守る為に存在する者だ。
勇者自身の力も、そう言った心から得られるものと聞いている。
貴殿は、それが欠けている。
歴代の勇者候補の中でも最悪でお粗末だ。」
「見ず知らずの世界で、何故自分の命を賭けてまで守らなきゃいけねーんだよ!
クソが!」
「勇者堕ち、か
神も残酷な事を。」
王太子が呟いた。
「さき、私に協力してもらえるか?
彼奴から勇者候補の称号を外す。」
えー、称号って外せるの?
僕は称号もないからよく分かんないけどさ。
いいよ!
〔ぷきゅ!〕
山際が反省できる環境も必要なんだ。
アイツは自分が勝ち組とかずっとそんなのに拘ってた。
確かに容姿が良いだけで、ある程度勝ち組かもしれないけど、それは違うと思いたい。
王太子は何か分からないけど、魔法陣を浮かび上がらせた。
それをみた山際が、攻撃魔法を使おうとした。
王太子の方は称号を外す?為の魔法陣に時間がかかっていて、だから、このガラ空き状態で攻撃されると危なかった。
もう!
山際は相変わらず下衆だ!
僕は、山際の魔法攻撃を片っ端から割って行く。
その途中で機械音のような声が響いて、レベルアップを告げた。
へぇ、この世界は途中でも経験値が入るんだ。
ゲームなら、戦いが終わらないと入らないのに。
ーレベルが15になりました。ー
ー蹄の一撃がMAXになり、新たに蹄の渾身の一撃を取得しました。ー
ー特殊スキル変態が使用できるようになりました。ー
ん?変態は使用しなくて良いけど。
路地裏とかで、マッパにコートとかだろ!
あれを取得してどうすんだよ!
腐っても勇者候補なんだ。
レベルアップが半端ないわ。
片っ端から割られて、真っ赤になって怒りまくってるけど、それより何より腰にある剣を使えよ?
僕、これでもダイエットの為に、色々齧ったからそれなりに動けてるけど、山際は顔だけで色々乗り越えて?来たから格闘技は使えないようだった。
ならカッコつけて剣を持つなよ。
「この豚が!
チョロチョロしやがって!」
物理攻撃はやはりしてこない。
山際って、顔だけでバカだよな。
〔ぶぎゅぷ、ぶぎゅぶいぶびぶぎゅ〕
豚だけど、肩をすくめるジェスチャーをしてみせた。
煽り効果は抜群で、また、攻撃魔法を出そうとしたが、魔力が枯渇したらしくスカッて感じだった。
そしてその頃漸く、王太子の魔法陣が完成したみたいだった。
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