56 / 75

子豚の魔法

食べられない物がたくさんになった。 「トリシュ様、これ無理」 「あの、咲季ちゃん、私たちも様はやめてほしいな、ダメかな?」 「じゃあ、トリシュにマナイ?」 「それ!」 二人が明るい表情で、それが良いって言うので、これからはトリシュとマナイになった。 「咲季ちゃん、口の中が気持ち悪いの?  匂いがダメなの?  お腹が気持ち悪い?」 トリシュが今食べられる物を探そうと、色々聞いてきた。 「口に入れた時に広がる匂いがダメかなあ。  まあ、食べる前に匂いでダメなのもあるし、あと、食べられても、なんかお腹の中で消化出来ないって言うか、吐いちゃいそうなんだ。」 「匂いかぁ  果物はもう試したもんね?」 「柑橘系は最初は良いんですけど、お腹で気持ち悪いって感じ。」 結構ワガママを言ってる自覚もあるので、食べてみる努力はした。 あー、歯磨きしたい。 ミントの歯磨きしたい! ミントないかな、ミント! あと、コーラ!炭酸!あの辺りが欲しい! とは思っても異世界だし、あんまり外を知らないし、もしかしたら似た物があるかもしれないけど、探す気力が無かった。 「咲季ちゃん、これ、噛むと気持ち悪いのが少しは治る葉っぱなんだけど、どうかな?  船酔いとかそういう時に噛む薬草なんだ。」 トリシュが出してくれた緑の葉っぱを噛むと、ミントの風味が広がった。 「トリシュ!これ!  これ、これがいい!」 僕の答えを聞いて、マナイがミント系のものを集めてくれた。 「マナイもトリシュも本当にありがとう!  僕、正直参ってたから、本当に嬉しいよ」 二人がニコニコして、咲季ちゃんのお兄様になることにしたから、弟は何があっても守るんだよって言ってくれた。 「じゃあ、トリシュ兄様に、マナイ兄様だね」  「あ、や、それは恥ずかしいなぁ  ね、マナイ」 「咲季ちゃんにマナイ兄様って呼ばれたら、  何でもしてあげるし、どこにいても駆けつけるからね。」 「えー、それなら、私はトリシュ兄様か、お兄ちゃんで」 えっと、なんか地下アイドルの握手会かなんかですか、これ。 「とりしゅおにいちゃん」 「ぐ、はっ!」 これ何の遊びだ? お昼寝というか、午前寝をしてそれから魔法の訓練を始めた。 「咲季ちゃん、人形に心を持たせるつもりで、動かす糸があるってイメージして  魔法陣が大きすぎ」 言われてる事はわかるんだけど、なかなか動いてくれなかった。 そして、意外とマナイは怖かった。 スパルタ?だった。 「魔法陣がそんなに目立ったら、相手にきづかれちゃうよ!」 「魔法陣が初めてで、小さくすると間違いが分からなくて…」 「そうだよね、私たちは小さい頃から魔法陣のパーツを覚えて来たから、それを組み合わせてるんだし…」 トリシュがちょっと待ってて、と言ってどこかへ行くと、戻ってきた時には薄い本を何冊か持って来た。 「咲季ちゃん、私達が小さい頃これでパーツを覚えたんだ。  例えば水はこの形が基礎で、これを変化させるの。  足したりしてね。」 "川"みたいな形が水の基礎パーツでそれに足して行くのが水系魔法だと教えてもらった。 漢字の成立ちみたいで、こっちの方が断然覚えやすかった。 「これなら意味がわかるよ!  ありがとう!  トリシュお兄ちゃん!」 「うんうん、咲季ちゃんのためだもん」 それなら、とマナイは基礎パーツをカードにしてくれた。 なんかよく漫画で見るESPの訓練カードみたい。 単語帳みたいに、裏に説明まで付いていた。 「これ覚えられたら、明日までに出来てたらご褒美あげるからね。」 ご褒美!なんだろ? 「頑張る!マナイ兄様」 それからは基礎パーツだけの魔法陣をひたすら出したり、消したりして、体で覚えて行った。

ともだちにシェアしよう!