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子豚の子豚
「私は、咲季がもしや産気づいたかとばかり…」
「そんなに早く生まれるんですか?」
そう言えば、魔法の方に行ってしまって、妊娠中の事とか出産の事とか勉強してなかった!
「大体二ヶ月で生まれてくるんだ。
小さく生んで大きく育てる!
だから、出産は比較的楽だと聞いてる」
「楽、ですか。
だったら、トルク様が産んでも良いんですよね?」
僕はこめかみに青筋を立ててたと思う。
「え、なんで、?」
トルクは僕がなんで怒ったか分かっていなかった。
「トルク兄さま、それダメです。
妊娠・出産に楽なんてないんですから」
呆れたようにトリシュが突っ込んだ。
「母体となった咲季ちゃんの体はもの凄く負担がかかってるんですよ?
それなのに、楽?
トルク兄様は残念すぎます。
宰相を務めるほど頭が良いのに、咲季ちゃんの体調一つ、気持ち一つ汲み取れないなんて…
大体、このお腹の子の原因は貴方でしょ!!」
「え、いや、」
「いや?嫌なんですか?」
マナイの凄みが利いた睨みを初めて見た。
「違うから、そうじゃなくて!!」
トルクは半獣化して焦ってるし。
「ふふふ、兄様たちもその辺で。
トルク様には後で僕からキツーく躾ておきますから、ね?」
この言葉の意味が分かったのか、耳がぺしょんてなって尻尾が股に入っていた。
「あの、あの。あのね、
咲季、ごめんね、ごめんね
楽じゃないって分かってる、分かってるよ?
なのに、ごめんね。
ご飯もちゃんと食べられないくらい頑張ってるのに、
ホントごめんね?
あの、」
「トルク様は、すぐそうやって自分が許されようとするけど、なんでですか?
後でって言いましたよ?
せっかく、トリシュ兄様とマナイ兄様の前で怒らないようにしたのに」
ふぅって呆れたって感じのため息をついた。
「咲季ちゃん、トルク兄様の威厳を保とうとしてくれたんだよね?
でも、トルク兄様は割とこれが正常運転だから」
「そうそう、外見とかスペックの割りにこれが普通だったりします」
「う~ん、でも、僕はカッコいい素敵な旦那様で居て欲しいんだよね」
「私は咲季の為ならいくらでも」
「分かりました。」
祈るように手を組んで、トルクがへへって笑いながら、お約束は?って。
「ごめんねってしたら仲直りのキスね」
しっかりキスをして、半獣化したまま僕の後ろから抱きしめて来た。
安楽座椅子っていいなぁ。
「取り敢えず、魔力循環と魔法陣に加えて、出産の準備だね
そろそろ予定日になるんじゃないの?」
と二人がトルクを見ると、多分?って答えてた。
「多分って、あの、妊娠の管理ってしてないの?」
「管理って体重とか?」
保険体育とかでそんな授業があった気がする。
妊娠は週で数えて42週?とか48週?だっけ?
そんで、体重管理とか食事管理とかしないと体に負担がかかって腎臓とか悪くなっちゃうって。
合併症とか中毒症とかあるんだって聞いた。
あくまで向こうの世界での話だし、こっちでは違うんじゃないかと。
だから、勉強したいなぁだったんだ。
すっかり忘れてましたよ。
「お腹の中に何人いるとか」
「こんなに小っちゃいし、一人じゃないかな?」
「生まれる子は手のひらサイズだし、どんな種かによって生まれてからの対応が変わるんだよ」
そう言えば、獣人は分化されるって言ってたな。
「子豚とか生まれるのかぁ」
「咲季ちゃん、そこよりね
妊娠が獣人と魔獣ってところが問題なの。
今までそれで子供が生まれたって聞いたことないし
魔獣が人化出来たなんて言うのも無いから。
咲季ちゃんが転生者だからだと思うんだよ。
そう言った意味でも、ちゃんと管理してなきゃ、何か異変があったら大変じゃない」
マナイは凄かった。
研究者タイプなんだって改めて感心した。
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