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対峙

片目がつながった状態のシュリが、マロの探した記憶を一緒に共有した。 「胸糞悪い奴」 誰に対してかは、兄弟三人とも同じ相手に対してで、同じタイミングで吐いた言葉だった。 白豹が駆け抜けるのを見た住人は、王族もしくは国にとって重大な事が起きていると察し、店を閉め始める者が次々と現れた。 それは、まず王族が戦うとこが国の決まりで、戦いに際して国民はそれぞれのシェルターに入るなどの判断を自主的にする様になっていた。 そして、戦う王族の、国の敵を見極め、情報と いう形で参戦するのがここの国民だった。 それぞれの家、部屋に王宮の情報を集める機関に直接連絡を入れる電話の様なシステムが構築されており、安全な場所からの報告も可能だが、どこから齎された情報も把握でき、虚偽の情報は繋がらない様になっていた。 支配系の魔法が通信機に掛けられていた。 逆も有りで、王宮から欲しい情報の要請がかかる場合もあった。 国民に要請された内容は、王族の末弟トアの事だった。 どうやって入国したのか、誰が手引きしたのか、誰と一緒なのか、そして、娼館の店主が咲季の拉致を実行し、依頼主がトアだと最後に付け加えられていた。 人は意外と見ているものだし、聞いているものだ。 情報は瞬く間に多くのものが寄せられた。 当然、虚偽の情報は繋がらないので、真の情報のみだ。 情報が戦略において重要だと、この国では建国された時からの常識でもあった。 そして、それらを更に底上げしたのが、フロウとマロの力だった。 次々に入ってくる情報と、フロウの監視カメラとマロの記憶の履歴と重ね合わせ、断崖絶壁の海岸線からトアは侵入して来た事、そして咲季をそこから連れ出そうとしている事が情報の下に引き出された予測だった。 「シュリ、海岸線へ向え!」 「父様、海岸線に!」 〔このまま、跳ぶ〕 「ワイス、聞いたな?  海岸線だ!」 〔御意〕 一番最初に着いたのは意外にもマナイが海岸線に来た。 「こんな崖下に船だと?」 よく見ると目立たない程度に、足場が出来ていた。 男達は船に降りるためにその足場を利用していた。 まだ、船から咲季の匂いはしない。 ならば、あの船を近づけさせない様にすればいい。 停泊している船の碇を静かに外して、船を岩場へ動かした。 そっと、さざ波が誤魔化せる様に。 岩場へ、岩場へと潮が運ぶ。 こちらの思惑通り、船は岩場の隙間に入り込んだ。 ゆっくりと座礁したのを確認した。 「マナイ、そこまでだ」 背後に知った声を聞き、振り向くと懐かしくも会いたくなかったトアが、自分と良く似た男と立っていた。 「トア、お前!」 「豚が子供産んだから、お祝いに豚の丸焼きを提供しにきたらさ、子供って豚じゃなかったのな。  今追っかけて来てる白豹、トルク兄様そっくりで、欲しいなぁ  豚の子でも、いいよな、あれ」 「お前はあれだけの事を繰り返しておきながら、父上達の温情で追放されただけで済んだのに、反省をする気持ちも無いのか?!」 「あれ、マナイってこんな強気だった?  いつも後ろに隠れて、べそべそ泣くしか能がなかった奴が。  随分、偉そうじゃない?  マナイの癖にさぁ?」 「へー、じゃあこの子も俺の子かぁ」 そう言ったのは、マナイによく似た男だった。

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