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喪失の檻 3
***
もう何度目かも分からないほど、体の奥に精液を詰め込まれた。グチョ、グチャと卑猥な水音がひっきりなしに鳴り響く。
「休んでんじゃねーよ!」
「あ、うっ....」
僕の頬を思いっきり平手打ちした男は、仰向けのままの僕の喉奥にペニスをねじ込んだ。
「.....っ、ゔぅっ、おゔぅっ!」
息ができなくて苦しい。必死に抵抗しようとしても、もう力なんて殆ど出なかった。
男は好き勝手に僕の喉を突いて、長い射精をした。きっとアルファなんだと思う。異常なくらい多い精液をさっきからずっと口やお尻で受け止めている。口の中は殴られた時に切れたのか、血と精液の苦味でいっぱいだった。
口が解放されたのも束の間、別の男に肩まで担がれた脚を更に開かされ、ズンッと硬くて太いペニスを突き込まれる。そのペニスの根本には瘤ができていて、僕のお尻に引っかかって抜けないようになっていた。それが、痛くて泣き叫んだ。
――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
それでも終わらない激しい律動。ブチッと嫌な音がして入ってはいけない所にまで入ってしまったのだと悟った。気持ち悪くなって、また、吐いた。
「うわっ、きったねーな!」
「顔も涎と鼻血まみれで気持ちわりいなぁ」
「てかさ、この腹もグロいな。」
僕をいちいち侮辱する声も、既に遠くから聞こえてくる雑音に成り代わっていた。
「なあ、こいつにも二本挿してみようぜ」
飛びかけていた意識が急にはっきりとして、僕はバタバタと暴れた。
「ぃ、いやだ!いやだぁ!ご、ごめんなさい、ごめんなさい、も、もぅ、ゆるしてっ.....」
でも、そんな願いが受け入れてもらえることなんて、あり得なくて。今度は拳で顔を殴られる。ゴッと骨と骨がぶつかる音がした。
その場所に突き刺さるような痛みが走る。切れた音も聞こえたような気がした。それに混ざる男たちの笑い声と僕の絶叫。
「あああああああああっ!!!」
死にたいと思った。
気がついたら、僕はたった一人、冷たくなった畳の上に転がされていた。立ち上がろうとしても、産まれたての子鹿のように手足が震えてしまう。肘や膝は畳で擦れてしまったのか血が滲んで皮も捲れていた。顔にこびりついた血液と精液。
「うえ.....」
泣きながら吐いた。もう、胃液しか出なかった。
***
突然、ドアが開く音がした。また、あの男たちが帰ってきたのかと思って、僕は蹲って震えた。
「透?」
でも、それは、ずっと助けて欲しいと願った母の声だった。
「お、かあ、さん?」
息も絶え絶えに声のした方を見上げると、そこには母がいた。
「透、ごめん。お、俺、ほんと自分が自分じゃなくなる時があって、おれ、おまえをこんな目に!!!ごめん、本当にごめん」
「おかあ、さん」
「.....っ、なんだ?」
「おかあ、さん」
僕は母を呼び続けた。
母はそんな俺を見て酷く悲しそうな顔をして、ふらりと立ち上がった。
戻って来た母の手には、いつか見た果物ナイフ。
ああ、僕、死んじゃうんだな。
そんなことを思って目を閉じた。最後に一色先生ともっとキスしておけばよかった、なんて場違いなことを考えて。
「透、ごめんね。」
母の声が聞こえて、次に襲う痛みに身構えていたけれど、それはいつまで経っても来なかった。
ポタリと生暖かい液体が頬の上に落ちた。何かがおかしいと思って目を開くと、そこには首を深く切って大量の血を流す母の姿があった。
「あ、ああああ!おかあさん!!!!」
僕は身体の痛みなんか忘れて、床を這いつくばり自分のぼろぼろになった服を漁る。探し出したのは携帯。よかった、まだ電源がある。電話帳を流れるように見つめて、目当ての項目を押す。
一色 隆文
それは、半ば強制的に先生から登録させられたものだった。画面の端に映っていた時刻は22時を過ぎていて、僕が病院から抜け出して既に一日が経とうとしていたらしい。
「....ねがい、出て!」
ツーコールもしないうちに電話は繋がった。
「透!今どこにいる?!」
聞いたこともない先生の焦った声。なのに僕は酷く安心してしまった。
「せんせ、たすけて.....」
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