28 / 93
④
「お母さーーん、俺ね~焼き鳥とだし巻き卵だろ?あと枝豆!」
「だから、俺はお前の母ちゃんじゃねぇ!つーか、それ最初に全部、二つずつ頼んでる」
「やっぱ気が利く~!
あっ、佐和俺ねししゃも~。ししゃも食いたい!」
「あーはいはい、分ぁかったから!あっ、店員さーん!
えっと…ししゃも二つ。あと、ビールにお冷もお願いします…それと、おしぼり貰ってもいいですか?」
何でこんな事になってんだ?
ふすまで仕切られた俺らがいる個室からも、ガヤガヤと話し声や足音が常に聞こえ、店が繁盛している事が伺える
俺達の他に営業の同僚が2人追加となって、結局5人でテーブルを囲っている真っ只中
食べ飲み放題で気兼ねない仲間内
だから……
「課長っ、今日も呑みっぷりイイっすね!じゃんじゃん行きましょう!」
同僚達が引っ切り無しに課長のグラスにビールを注ぐ注ぐ
荒木課長は課長で、注がれる為ビールを呑む事呑む事
そして俺は……
(気が気じゃないっつーの!)
「あの…荒木課長っ」
「あ~?どうした佐和?
お前、全然呑んでねぇじゃねーか!
俺の奢りだって言ったろ?食えっ、呑め!」
「ぅ、はい。でも、その……あまり呑まない方が…」
「何だ、佐和?明日も仕事だからか?
それぐらい分ぁ~ってるっつーの!
だから俺はなぁ、今日はビールだけにしてるんだっ!
んんっ…ぷはっうめェぇッ!!」
このダメ人間
そう言ってあんた、いつも俺の前でデロンデロンじゃねーかッ
意識無くすほど出来上がったあんたは、はっきり言って
同性の俺を簡単に狂わすぐらい
(可愛いんだよ!!)
そんな課長を他の奴に見せたくないのもある
いや、絶対に見せたくない
なのに
「佐和っ、注がねぇか!」
俺の気も知らないで…
と、思いながらもグラスにビールを注ぐ事は止められ無かった
ともだちにシェアしよう!