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「お母さーーん、俺ね~焼き鳥とだし巻き卵だろ?あと枝豆!」 「だから、俺はお前の母ちゃんじゃねぇ!つーか、それ最初に全部、二つずつ頼んでる」 「やっぱ気が利く~! あっ、佐和俺ねししゃも~。ししゃも食いたい!」 「あーはいはい、分ぁかったから!あっ、店員さーん! えっと…ししゃも二つ。あと、ビールにお冷もお願いします…それと、おしぼり貰ってもいいですか?」 何でこんな事になってんだ? ふすまで仕切られた俺らがいる個室からも、ガヤガヤと話し声や足音が常に聞こえ、店が繁盛している事が伺える 俺達の他に営業の同僚が2人追加となって、結局5人でテーブルを囲っている真っ只中 食べ飲み放題で気兼ねない仲間内 だから…… 「課長っ、今日も呑みっぷりイイっすね!じゃんじゃん行きましょう!」 同僚達が引っ切り無しに課長のグラスにビールを注ぐ注ぐ 荒木課長は課長で、注がれる為ビールを呑む事呑む事 そして俺は…… (気が気じゃないっつーの!) 「あの…荒木課長っ」 「あ~?どうした佐和? お前、全然呑んでねぇじゃねーか! 俺の奢りだって言ったろ?食えっ、呑め!」 「ぅ、はい。でも、その……あまり呑まない方が…」 「何だ、佐和?明日も仕事だからか? それぐらい分ぁ~ってるっつーの! だから俺はなぁ、今日はビールだけにしてるんだっ! んんっ…ぷはっうめェぇッ!!」 このダメ人間 そう言ってあんた、いつも俺の前でデロンデロンじゃねーかッ 意識無くすほど出来上がったあんたは、はっきり言って 同性の俺を簡単に狂わすぐらい (可愛いんだよ!!) そんな課長を他の奴に見せたくないのもある いや、絶対に見せたくない なのに 「佐和っ、注がねぇか!」 俺の気も知らないで… と、思いながらもグラスにビールを注ぐ事は止められ無かった

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