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◇バブルバス*圭

◇ ◇ ◇ ◇ 「わぁーめっちゃいいね、これ」  帰ってきて、玄関で話してたオレ達は、とりあえずお風呂に入ることにした。  今日はなんだかとっても健康的に遊んだし、色々疲れたし、結構汗もかいた気がするし、ゆっくりお湯に浸かろうってことになった時、高瀬が何かを思い出したように持ってきたのは、お風呂に入れるバブルバスだった。絵奈ちゃんから貰って、でも一人で使う訳が無く、そのまま持ってたものだって。  それを入れてから、お湯を勢いよく出してモコモコにした。  めちゃくちゃもこもこの泡でお風呂がいっぱいになってから、オレ達は一緒に洋服を脱いで、バスルームに。  もちろん、飲む用のお水も持って。  ざっとシャワーを浴びてから、バスタブに入ると、バスタブに背中をついて向かい合う感じに座った。脚は伸ばし合って、ちょっとお湯の中で触れてる感じなので、ちょっとドキドキするけど。 「なんかこの泡、思ってた以上にモコモコだよね」  ふわふわの泡を手でフワフワ遊びながら、息で飛ばすと、シャボン玉がふわっと飛んだりする。 「すごーい。女の子、好きそう」 「……ていうか、こうして出してみたら、ますます思ったんだけどさ」 「うん?」 「――ほんと、これ、オレにくれて、一人で何しろってつもりだったんだろ、絵奈……」 「――えーと……そう、だねぇ……?」  んー、と少し考えてから。  こらえきれず、ぷぷ、と笑ってしまうと、ん? と高瀬がオレを見る。 「高瀬がね、一人で、この泡にモコモコされてる図を想像してみたら、大分面白かった」  あはは、と笑いながら言うと、「……シュールだよな」と高瀬も笑う。 「あ、でもなんかオレは一人でも、楽しめそうな気もする」  どうやって入るかなあ。一人だったら、と少し考えてもみるけれど。  まず、泡を飛ばして遊んで。それから、体中、泡まみれにしてみて……でもって、それもまた、ぱたぱた振って飛ばして……あと、お湯をぐるぐるかきまぜて、限界まで泡を作りたい。どこまで、泡ができるのか。  ――って、すらすらこういうのが出てくるのって、オレ、子供じゃないのにどうなの。  と思った瞬間。高瀬が、ふ、と笑って、ちょっと口元を押さえた。 「え?」 「あ、悪い――」 「ん? なになに?」  クックッと笑い続ける高瀬。 「何でそんなに笑ってるの?」 「いやなんか……泡、もっこもこにして――もこもこの怪獣とかになって、楽しそうにしてる織田が、なんか浮かんじゃって……ごめん、我慢できなかった」 「ちょっとー!!」  なんだよそれー、なんかめっちゃアホみたいじゃん! 「ていうか、オレの想像のオレをさらに超えてくるのやめてください」 「あれ、考えなかった?」 「怪獣なんて、考えてないし!」  まあ確かに、体中泡まみれにしたっていう時点で、高瀬の言った怪獣にはなってるかもしれないけど。と考えると、なんか、考えてること、バレてるみたいで、ちょっと、恥ずかしい。    オレは攻撃、とばかりに、泡をすくって、高瀬の方に、ふーっっ! と吹いた。  笑ってた高瀬の髪に、ふわふわの泡がのっかる。 「わー、高瀬、泡乗ってるの、可愛いかも」  ふざけてやったのだけれど、予想外に可愛すぎる。  可愛くないし、と高瀬が苦笑して、それから、高瀬も泡を両手に乗せると、ふう、とオレの方に吹いてきた。  オレはちょっと期待して、泡がのっかるのを待っていたのだけれど、あれ、全然乗ってこない。ぽたぽた、目の前で落ちてく。 「ちょっと、だめですよ、高瀬さん、もっと、思いっきり吹いてくれないと、オレに乗らないじゃん~」 「乗せてほしいの?」  高瀬は、クックッと笑いながら、また吹いてくる。  頭上から降ってくる泡がなんかキラキラして、「なんか綺麗だねえ」と呟く。 「――オレ絶対、織田とじゃ無かったら、こんなことしてないけど……」 「ん」  そんな気もする。 「織田とするのは、やっぱ――色々好きになるかも」  目の前の。泡が乗ってても、ひたすらカッコいい人は。  まっすぐにオレを見つめて、そんなことを言う。  うう。またしても……ときめきすぎて、心臓が、きゅう、って痛い。

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