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全部、熱のせいだ①

「うげぇ......なんか、ダルい」  ベッドの、上。  のそりと体を起こし、毛布を被ったまま目覚まし時計を手に取り、アラームを止めた。  いつもならば一度目のベルでちゃんと起きる事が出来るのに、なんだか体がやたらと重くて、そのままくてりと再び寝転がった。  今日は十和子さんが有給を取得しているって言っていたから、FC課はいつも以上の人員不足。    熱が無いことを願いながら、ベッドサイドに置かれた体温計に手を伸ばした。 「36.9℃。......うん、ギリ平熱」  元々基礎体温が低めの僕にしてみたらこれは、本来ならば高熱にあたる体温。  でも休むわけにはいかないし、そもそもこの程度だと、世間一般では微熱にすらも当てはまらないだろう。  グッ、と全身に力をいれて、気合いだけで起き上がった。 *** 「おはようございます。」  いつもは一番に職場に入る僕だけれど、今日はやっぱり体調が優れず、到着が始業時間ギリギリになってしまった。 「おはよ、久米君。  君がこの時間って、珍しいね」  クスクスと笑って、金田さんが言った。  僕の体調があまり良くないと気付いたら優しいこの人は、きっともう帰れと言うだろう。  でも今日は人手が少なく、そんなのはどう考えても迷惑を掛ける事になる。  だから僕は自身の体調については触れることなく、ただ小さく頭を下げて、謝罪の言葉を口にした。 「あー......、ちょっと出掛けに色々あって。  すみません」  すると彼はまた、クスリと笑った。 「謝って貰う事は、何もないよ。  まだ、9時前だしね。  十和子ちゃんなんて、平気でいつも遅刻して来るし」

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