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だけど

「こんなこともうやめろよな。おい、聞いてるか?」 肩で体を支えながら、アルコール臭ぷんぷんの男に、呆れたように怒ったように、諭すように言う。 相手は分かってますよ〜とでも言うように軽く手を振った。 「今度はないからな!おい、聞いてるのか?」 「ふふふ。」 「何で笑うんだよ?」 「毎回、それ言ってる。」 そう言うと、だろ?と問いかけてくる。 俺はちっと舌打ちをすると、 「行きたくなくても呼ばれるし、連絡くるし。無視すれば、何度でもかかってくるし…仕方ないじゃないか。」 はあとため息をつきながら答える俺を横目に、楓がまたもふふふと笑う。 何でこんな奴が好きなんだろう、心の中で悪態をつく。 それでもこうやって体を密着させ、肩にかかる楓の重みが俺の心を喜ばせているのも事実。 「毎回悪いと思っているんだよ?だけどさ、飲まなきゃこの俺の心が保たないんだよ…分かるだろ?」 「そんなん…知らねーよ。」 俺の顔を覗き込んでくる楓の視線から目を逸らす。 「言えない恋心、受け入れてもらえない気持ち…何で俺は分かっているのにこんな不毛な事をやめられないんだろうな?」 「知らねーよ!」 なぁ?と、顔を一層近付けてくる楓にイラッとして、つい大声が出てしまった。 「うまくいかねーよな、大体。興津もさ、俺みたいなのさっさとほっぽって、他にいけばいいのに…。」 それができたらどれだけいいか。 一瞬合った視線をパッと外すと楓が悪いと俯いた。 「そんな簡単なもんじゃねーよな…大体そんな風に言ってる俺が頷けば、それこそ上手く収まるって話だもんな。それをできない俺が何を言ってるんだか…悪かった。」 「変なところで大事な返事するなよ…」 ぼそっと呟くと、楓の体の位置を直す。 「それでも諦めるつもりないから、俺。」 俺の言葉を聞いて楓はそうかと夜空を仰ぎ見ると、 「帰ろっか。」 そう言って俺の肩に頭を乗っけた。

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