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プロローグ
高校を卒業してすぐに俺は親元を離れ、ボロくカビ臭いアパートの一室で極貧の一人暮らしをはじめた。
そんな俺を母さんは出て行く前も出て行ってからもこれでもかと心配してくれていて俺の心配はいいからって言っても母さんはその無駄とも言える過剰な心配をやめない。
これこそまさに『親の心 子知らず』なのか・・・。
俺はパラパラと買ったばかりの求人雑誌を捲りつつ、大きな溜め息を吐き出した。
なぜ俺は職を見つけてから家を出なかったのだろう・・・。
俺は改めて自分が馬鹿だと言うことを認識させられた。
あと2ヵ月くらいはなんとか高校時代に稼ぎ貯めたバイト代で生活できるだろうけれど、それ以降は本当にヤバい・・・。
真面目にガチでヤバい・・・。
つまり凄くヤバいと言うことだ・・・。
かと言って親に助けを求めるのは絶対に嫌だ。
意地でも俺は職を見つけてやる・・・。
俺はそう意気込み、両手で両頬をバチンッ! と勢いよく叩き、財布とスマホとアパートの鍵だけを持ってボロくカビ臭いアパートの部屋を駆け出した。
~・~・~・~
国道から少し脇道に入ったところにその店はポツンと建っていた。
そこに建っていたのは小さな木造民家をリフォームしたと思われる花屋・・・。
その小さな花屋の店先には多くの鉢花や苗花が綺麗に並べられていて一目でそこが花屋であることがわかる店構えとなっていた。
その花屋に対する第一印象は小さいな・・・だった。
そして、その次に思ったことはお客さん、多いな・・・だった。
第一印象が小さな花屋なのに対し、お客さんの出入りは多く、俺が見ている間だけでもお客さんの波が途切れることはなかった。
小さな花屋の中からお客さんが一人出てくると違うお客さんがまた一人、その小さな花屋の中に入って消えていく・・・。
その光景はまるで学校の集団検診を見ているかのようだった。
俺は肺いっぱいに空気を吸い込み、その空気をふぅーと吐き出し、その小さな花屋へと足を踏み入れた。
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