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西野清貴サイド 地球が消滅する最後の日 ② ※
篠崎のアパート傍のコインパーキングに地球消滅一時間前に着くことが出来た。
重低音で鳴り響くエンジンを切ると俺の身体はステアリングにすがりつくようにぐったりした。
「はっ…あっ…はぁっ…あっ…はっ…あっ…………」
ヤバイ、エンジンの振動で体の中の瓶が踊って…瓶にナカでイカされそうになった。
慣らすためにずっと弄っていた時でも、一度も後ろが気持ちいいとは思わなかったのに。
「はあ…ふっ、ふぅーーっ…………」
呼吸を整えてから未使用の姉の下着に着替え、スニーカーからパンプスに履き替えて外に出る。
中でイカされてガクガクの足は馴れないパンプスで更によろよろしている。
冷たい風がスカートにじゃれてコートごと捲りあげるから急いで両手で押さえた。
「うわっ、寒い。」
急に電気が点いている家から『ビーッ!ビーッ!』と凄い音が鳴りだした。
この音は、たぶん消滅までのカウントダウンが1時間切った音だろう。
消滅する怖さなのか、それとも雪が振りそうなほど冷たい空気のせいなのか、身体がガタガタと震える。
「もうすぐ、もうすぐだ。」
手袋がないから両手を交互に胸の前で擦りながら歩いた。
あの角を曲がれば篠崎のアパートの下の道路に出る。
気づいてもらうためにアスファルトでパンプスを踏み鳴らしながら、ゆっくりと歩いていく。
篠崎は優しいからこんな寒空に女が一人で歩いていたら助けずにはいられないはずだ。
足音に気が付かなかったら迷ったふりしてアパートに入ろう。
ゆっくりと窓の下を通過して、もうすぐアパートを通り過ぎてしまう。
頼むっ!! 気がついてくれ、篠崎っ!!
「おーい、良かったら家に来ませんかー? 一人じゃ寂しいでしょう?」
やった………気づいてくれた。
それだけで嬉しくて泣きそうになる。
泣くなっ、メイクが崩れる。まだ篠崎の顔を見ていないんだから。
すぐに見上げたら怪しまれる。
誰が声をかけたんだろうキョロキョロと周りを見回して声の主を探すフリをする。
「上、二階です。こっちこっち」
見上げると窓から一生懸命身を乗り出して手を振る篠崎が目に入った。
ああ、やっぱり篠崎は優しいな。
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