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第1話
烏野高校の学校祭では、三年生によるクラス対抗の仮装行列が恒例のイベントになっていた。
大地とオレはこのメンバーに選ばれてしまい、今年大ヒットした少年漫画のキャラクターの格好をする事になったんだけど、オレはネタ要員として女装する事になっちゃって。
大地も黄色と赤の目立つ長髪のキャラクターだから面白いんだけど、オレはピンクの三つ編みの女の子でかなり露出度高めの衣装を着る事になったから、ホント笑い者になるだろうな、って思ってたのに、事態はそういう方向にはいかなかった……。
**************
「す…菅原、ヤバいわコレ」
衣装を着るのを手伝ってくれて、オレにメイクもしてくれたクラスの女子が言うと、周りにいた女子たちが集まってくる。
「えー!!菅原なんなの!?めちゃくちゃ可愛いんだけど!!」
「ちょ……ちょっと……」
そう言われても、オレはオレを確認していない。
誰か、鏡を見せてくれないかな。
「あ、澤村、どう?この子。付き合いたくならない?」
そこに、カツラを被ってすっかりキャラクターの出で立ちになった大地がやって来る。
大地、そのキャラクターに声がそっくり過ぎてクラス全員に満場一致でその役に決められてたけど、大地自体はオレと一緒に映画を観るまでそのキャラクターの事、全く知らなかったんだよな。
でも、衣装がすごく似合っててカッコイイ。
大っぴらにはもちろん言えないけど、オレとは師弟関係って役だから、オレは女装する事になったけどすごく嬉しかったんだ。
「……ん……スガ……?」
大地がオレを見る。
一瞬見せた、動揺した表情。
大地も可愛い、って思ってくれたのかな。
ちゃんと女の子に見えるように下着まで着けてパットもたくさんいれて胸まで作ったし、ミニスカートだから肌色のタイツの上に長い靴下も履いたりしたんだけど。
でも、これで可愛いって思ったとしたら、やっぱ大地は女の子が好きって事になるよな。
男のオレじゃダメって事になるよな……。
「澤村、もしかして見とれた?」
「……いや、だってスガだろ?」
大地は顔色ひとつ変えないで答える。
その様子に、女子たちはえー!!と不満そうな大声を出した。
「もー!つまんないヤツ!!」
「まぁ、澤村に聞いたのが間違いだったって事で、とりあえず澤村と菅原でツーショット写真撮らせて!私が衣装作ったって事でインステに載せたいから。いいよね?載せても」
「俺は構わないけど、スガは?」
「うん、オレもいいけど。てか撮影したら見せてくれよ。どんな感じになってるか知りたいし」
「ありがと!じゃあちょっとこんな感じでポーズとって」
「お、おう……」
そう言った女子が見せてきたのはキャラクターの画像で、大地のキャラクターとオレのキャラクターが見つめあって手を重ねていた。
こんなん、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん。
どうしよう……。
「…………」
「わぁっ!超ヤバい!!」
また女子たちが集まってきて、オレたちの様子を見ている。
オレは大地と両手を繋いで見つめあってて、ずっとドキドキが止まらなかった。
「お似合いすぎるー!!」
「ちょっと、私も撮りたい!」
大地はまっすぐにオレを見てる。
いつもと同じ、ふたりきりの時と同じ目で。
なぁ、大地。
大地は今、何を思ってオレを見てるの?
いつもオレの事好きだって言ってくれるけど、ホントにそれでいいの?
聞きたいよ、大地の口から。
「菅原、撮れたよ!こんな感じ!!」
「あ、ありがとう……」
女子が画像を見せてくれる。
そこにはメイクで誤魔化せてるけど紅い顔のオレと、かっこいい目をした大地がいた。
オレ……スゲー女みたいになってて、自分じゃないような気さえした。
「澤村、いつもと雰囲気違うね」
「この格好してるからだろ。スガ、集合場所に行くぞ」
「あ、あぁ……」
大地はどこまでも冷静だった。
オレだけ意識して、変な気持ちになってるんだろうな。
でも、あの画像見たらますます、オレはどうして女の子じゃないのに大地の傍にいられるんだろうって思ってしまったんだ。
**************
「スガ、ちょっと……」
「何?大地」
集合場所に着くと、大地がオレの手を引いて近くのトイレに連れていく。
「…何考えてるんだ?スガ。そんなに思い詰めた顔して…」
個室にふたりで入ると、大地はそう言ってオレを抱きしめてきた。
「ちょっと……女の子に生まれたかったなって思っただけ……」
大地とは付き合うって決めた時にお互い隠し事をしない、っていう約束をしてたから、オレは正直に話した。
「……お前、バカだな……」
そう言って、大地は笑いながらオレの頭を撫でてキスをしてくる。
「俺が好きなのはありのままのお前だよ、スガ。お前に出会うまでこんな気持ちになった事はなかったけど、俺は男のお前が好きだ」
「だいち……」
もう一度、唇を合わせるだけのキス。
「今日、終わったら俺んち来てくれるか?」
「お……おう……」
大地が自宅にオレを呼ぶ、というのはそういう、恋人同士でする事をしたい時だったりして、嬉しいけど気はずかしい。
「さて、仮装行列楽しむか。よもやよもやだ……だったっけ?」
「そうそう!大地、やっぱめちゃくちゃ似てるー!!」
オレたちは笑い合いながら、手を繋いで集合場所まで戻っていた。
その様子をサムライの格好をした旭に撮られてて、後から見たら男女のカップルに見えた……というのは余談だ。
**************
仮装行列はオレらのクラスが優勝して、何故かオレと大地が表彰式に参加させられていた。
「キャプテンと菅原さん、めちゃくちゃ決まってますね!」
「菅原さん、女かと思いました」
「あはは、ありがとう、日向、影山」
大地と着替えようとして更衣室になってる空き教室に向かおうとすると、日向と影山にばったり会う。
「三年になったら仮装行列やるんすね!おれも正義のヒーローとかやりたいなぁ!」
「お前は村人Aだろ!」
「じゃあお前は月だな!」
「あぁ?今何つった?」
「まぁまぁ、あと二年あるし、やりたいのを自分で決められる訳じゃないから……」
廊下で揉めそうになってるふたりを止めて落ち着かせてから、オレは大地と更衣室用の部屋に入った。
「オレたちで最後だよな。終礼も済んでるし、あとは着替えて帰るだけか」
「あぁ、最後に鍵かけて職員室に鍵を返して欲しいってさ……」
カーテンのかかった、少し薄暗い部屋。
「ちょっ……だいち……?」
扉に鍵をかけると、大地は
オレを抱き寄せてきた。
「気が変わった。ここでお前を抱いてから帰る」
「え?……何言って……っ……」
ドアから死角になってる場所で、大地がオレのカツラを脱がせて糸を引くくらいのキスをする。
それで力の抜けたオレを、大地はイスに座らせた。
「だいち……どうして……?」
「それ……説明しなきゃダメか……?」
その手がオレの胸元に入ってたパットを避けていき、大地に触れられて悦ぶ場所に伸びる。
「こんな邪魔くさい物、ない方がいい……」
「やぁ……っ……!!」
きゅっ、といきなり弱いトコロを摘まれて声が出てしまう。
「スガ、誰か来たら困るだろ。静かに……」
「うぅ……っ……バカやろ……っ……!!」
唇に大地の指を押し当てられ、またキスされていた。
「んん……んぅ……っ……!」
ちゅ、ちゅ、と大地はわざと音を立てて舌を吸ったり絡めたりしてきて、オレを刺激する。
「スガ、こんな格好でされても悦んでるんだな……」
胸元の手が、股間に落ちていく。
ヒップラインが綺麗に見えるようにって言われて履かされた面積の小さい下着とタイツで締め付けられて苦しくなってるオレの存在を、大地が見逃す筈がなかった。
「あぁ……っ……だって……だってオレ……好きだから…っ…だいちが好きだから……あぁっ!!」
大地の手が、オレの戒めを解放してくれる。
タイツを力任せに破って、下着も脱がせて、ソコを口いっぱいに含んでくれながら、オレのもうひとつの弱いトコロも指で触れてくれた。
「ふぁ……っ、…だいちぃ……っ、すき、だいすき……っ……!」
大地のカツラを脱がせて、少し汗ばんだそのサラサラの髪を掴みながら、オレは大地の口の中でイッてしまってた。
「俺も好きだ、スガ……」
イッたばかりでぼーっとしているところを抱き上げられ、イスに座った大地の膝の上に載せられる。
「大地……」
大地に引き寄せられて下腹部が触れ合うと、大地がすごく興奮しているのが分かる。
オレの身体で悦んでくれてるって思えて、すごく幸せな気持ちになった。
「指、舐めて」
「ん……ッ……!」
大地の少しゴツゴツとした長い指を口の前に運ばれ、オレはそれを躊躇う事なく受け入れる。
音を立てて、呼吸する声を大地に聞こえるようにすると、大地は嬉しそうな表情をしてくれて、オレの髪を撫でてくれる。
「その顔……ホント堪んねえ……」
首筋にキスをされた後、耳元で優しく囁かれて、背筋がゾクゾクした。
「スガ、お前は俺のだからな。心も身体も全部、誰にも渡さねえから……」
「や……あぁ……っ……!」
オレの口から引き抜いた指の行先は分かってる。
スカートで辛うじて隠れている、大地だけの場所。
ソコに指を突き立てられて、オレは声を殺しながら大地にしがみつく。
そんなオレの事なんてお構い無しに、大地はオレが善がるトコロを分かっててソコばかり突いてきて、オレに言わせようとするんだ。
『大地が欲しい』
って。
オレは今日も我慢出来なくて、すごく恥ずかしいのに大地の耳元で強請ってしまってた。
それも大地は嬉しいらしく、口元を綻ばせて笑ってくれるその表情はすごくカッコ良くてズルい。
「スガ、自分で挿れてみる……?」
入り口に大地の先端が触れた。
「う……んんッ……!!」
『挿れてみる?』って言ってるけど、それは『挿れて』って事で。
オレは準備万端な大地のに手を添えながら、ゆっくりと腰を落としていく。
「……っあ……っ……!!」
気のせいかな。
大地の、いつもよりも熱くて堅い気がする。
オレも、自分の身体がいつもより熱くなってる気がするんだ。
学校でコスプレしてHするなんて、普段だったら有り得ない、可笑しな状況だからかな。
……まぁ、いいや。
今はただ、大地との甘い時間に酔いしれたい。
オレしか知らない余裕のない大地の顔を見て、そうさせられる自分を誇らしく思いたい。
「スガ……っ…好きだ…!」
「だいち……っ……オレもすき……大好き……っ……!」
最後はお互いのを擦り付け合いながら一緒にイッて、作ってもらった衣装を汚してしまってた……。
**************
「……とりあえずティッシュで拭いて、コインランドリーで洗ってくるか」
「……そうだな……」
返す事になっていた衣装の事で、大地もオレも現実に戻ってくる。
「ふふっ」
「どうした?」
「Hしてる時は大地だったなぁって」
「最中にモノマネするほど余裕ねえよ」
「知ってる」
衣装の汚れを慌てて拭き取った後、大地と着替えながらそんな会話をした。
「スガ」
「ん?」
「やっぱ俺、笑ってるお前が一番好きだ」
そう言って、大地はキスしてくる。
「…オレもそうだよ、大地」
カッコイイ笑顔を見せてくれる大地に、オレも笑顔で応えていた……。
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