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第7話 ホームカミング

「コージ! 遂にカイを誘ったそうね!」 「何? もう知れ渡ってるの?」 「巷じゃ結構噂になってるわよ!」 「え? どういう意味?」 僕がそう尋ねると、 アリッサは信じられないと言う様な顔をして僕を見た。 「あなたね~ あのカイのハートを射止めたのよ! そりゃあ、噂にもなるわよ!」 「え? それって……」 「彼ね、凄くモテるんだけど、 今まで興味を示した人が居なかったのよ~ まあ、私の知っている限りではね。 今回だけでも、何人に誘われてたっけ? え~っと、ケビンに、ジョン、リースに……」 と名前を上げながら、アリッサは指を折って数え始めた。 「あら、指が足りないわ! ハハハ、それって10人以上って意味ヨ!」 そう言って僕の背なかをバンバン叩いた。 アメリカの女性って何て豪快なんだろう…… 「あ、そうそう、 カイの事誘ったのはいいんだけど、 この後はどうしたら……?」 「う〜ん、全てはパートナー任せだから分かんないわね~ トムに…… あ、トムって私を誘ってくれた人ね、 彼に聞いてみたらどうかしら? ちょっと待って、今メッセージ送ってみる」 そう言ってアリッサはトムにメッセージを送った。 するとすぐに返事が来て、 トムと一緒に今日の午後、 パーティー会場のチケットを買いに行く事になった。 ロビーで待ち合わせて、初めてトムと顔を合わせた。 「コージ!」 そう言ってトムが向こうから歩いてやって来た。 「トム?」 僕がそう尋ねると、 「そうだよ! アリッサから聞いていた通りの人だね」 と答えられた。 「え? アリッサは僕の事何て言ってるの? もしかして変な事?」 そう尋ねると、大笑いされた。 「違うよ、違うよ。 とっても爽やかで素敵なジャパニーズボーイが居るって。 本当にその通りだね。 嫌味なほどにコージはカッコいいよ! 知り合えて光栄だよ」 アリッサを誘った男性にしてはとても上品だ。 別にアリッサがガサツと言う訳では無いけど、 これで相性が合うと言うのだから不思議だ。 「僕も知り敢えて嬉しいです。 それで僕はどうすれば……?」 そう尋ねると、 「君の所は同性カップルだけど、 そう言う場合は~まあ、君たちの所はα・Ωカップルで、 はっきりしてるから分かりやすいけど、 αが勿論Ωをリードすることになるから パーティー基、デートは全てαの君持ちだね。 どう? 予算は大丈夫?」 そう尋ねられ、 「あ、予算はもう、全然大丈夫です」 とそう答えた。 そしてトムはリードする側のノウハウを全て教えてくれた。 パーティー当日は、 車持ちのトムが迎えに来てくれた。 カイはあらかじめ僕のアパートに来て準備をしていたので、 トムにはアリッサを迎えに行った後で、 僕のアパートに来るようお願いした。 会場に着くと、既に沢山のカップルが到着していて、 それぞれに手を繋いだり、腕を組んだりして会場入りしていた。 それを見て僕はカイに腕を差し出した。 それを見たカイはびっくりした様にしていたけど、 直ぐに笑顔に変わって嬉しそうに僕の腕を取った。 その笑顔が凄く可愛いくて少しドキッとした。 また、ロビーへ入って凄くびっくりしたのは、 同性カップルがチラホラといる事だ。 日本では考えられない。 「どうしたの? 会場の雰囲気にのまれちゃった? 日本の大学って、こういうの無いんでしょう?」 後ろからアリッサが声を掛けてきた。 「あ、いやまあ、そうれはそうなんだけど、 同性カップルの多さにちょっとびっくりしちゃって」 「それ、カイママから聞いた。 日本では同性結婚はまだマイナーなんでしょう? 隠れて付き合わないと社会的にひどい差別受けるみたいだし。 それに日本はΩを差別してるんだって? ちょっとナンセンスよね! 同じ人間なのに! Ωを擁護する法律も無いんですってね。 信じられないわ!」 そう言ってプンプン怒っていた。 そう言えばアリッサの第2次性を聞いたことが無い。 これって失礼に当たるんだろうか? 「ねえアリッサ、 アメリカってさ、第2次性を尋ねるのは失礼な事になるの?」 「そうね、場合によっては失礼になるわね。 受験や就職なんかでは法律で聞けないことになってるのよ。 人権の侵害でしょう? それが理由で拒否したりできないような法律になってるからね」 そう言われて、なるほどと思った。 だからアメリカって余り第2次性のカーストが無いんだ。 それは感じていた。 「だからと言って、あまり自分の第2次性を隠す人は少ないわね」 「そうなんだ~ じゃあ、アリッサって何なの?」 「私はβよ!」 と、自信たっぷりで答えた。 βでもハキハキとして、聡明で活動家で媚びた所も無いし、 日本だとαだと勘違いしそうなところだ。 そう言う所が日本とアメリカの意識の違いなのかもしれない。 日本もアメリカの様にちゃんと第2次性を法で守って ちゃんと教育すれば、何の第2次性であっても努力次第では αの様になれるのかもしれない。 でも、容姿などで、Ωだと分かる人はいる。 カイや要君の様に。 ここで余りΩの問題を聞かないのは、 法に守られているっていう強みがあるせいかもしれない。 そう言う事を考えていたら、カイが 「音楽が流れだしたよ、 中に行こうか?」 そう言って僕の手を引いて会場に入って行った。 中は薄暗く、ミラーボールが薄い照明を浴びて、 暗い中をキラキラと輝かせていた。 ダンスの仕方は分からなかったけど、 取り敢えずは見様見真似で踊った。 皆自由に踊っていて、割と楽しかった。 僕が変な踊りをしても、誰も笑ったりしない。 カイも楽しんでいそうだ。 不意に体育祭のフォークダンスを思い出した。 “そう言えば、体育祭当日要君と登校中に踊った事あったな~ あれはあれで楽しかったな~” そんなことを考えていたら、最後の曲は直ぐにやって来た。 最後は勿論スローダンス。 今までスローダンス何て踊ったことが無い。 曲が始まったのと同時に凄く緊張した。 周りのカップルはもう既に出来上がっていて、 曲が始まるや否やべっとりとくっついて、 中にはキスをしながら踊っているカップルも結構いる。 いくら薄暗いといっても、 日本人である僕は、 こうも肩と肩がぶつかるような人ごみの中では、 どうしてもベタベタと出来ない。 アリッサを探してみると、 何となく彼女らかな?というカップルを見つけた。 彼らも他と同様、べっとりとくっついて踊っていた。 僕は心臓が出るような思いだった。 カイの手を取るのが戸惑われる。 お母さんが日本人なカイは、 きっと僕のそんな心境を解してくれたんだろう。 クスっと小さく笑うと、 軽く僕に寄り添い、僕の手を取ったかと思うと、 最後のダンスを踊り始めた。 「コージ、今日は本当にありがとう。 凄く楽しかった」 カイはそう言うと、僕の胸に顔を埋めた。 ちょっと硬直した様にもう一度アリッサの方を見ると、 彼女は僕等に気付き、親指を立てウィンクしてみせた。 そんな彼女を見て、なんだか少し気恥しい気持ちになった。 そして僕に寄り添うカイが少しだけ愛おしく思えた。

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