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イチゴとキウイのネトるタルト

 赤と緑は反対の色。リボンの色、(モミ)の木の色。友人の目の前にある、イチゴとキウイのタルトとか。黄色はいつでも仲裁者だ。鐘の色、信号機、彼に刺されて避けられる、パイナップルだとか。  少しだけ、気に入らないのだ。似ているようで似ていない彼とアイツを思わせる。俺は皿の端に避けられて、タルトの上は彼とアイツの会場だ。 「ひでぇよな、アイツ」  金色のフォークが俺を刺す。ひとつひとつ、パイナップルが弾かれる。イチゴとキウイの仲を引き裂く邪魔者。 「絶対、当て付けだ」  積み上げられた俺の残骸から無邪気なフォークが引き抜かれていく。望みは薄い。 「他に好きなやつ居るなら、言えばいいのにさ」  俺は俺を慰める。繊維を齧ると甘酸っぱさが広がる。俺が隣の彼に惚れたとて、味わうことのなかった甘さと酸味。 「あれ?お前ってキウイ嫌いなん?」  俺はキウイを除いていく。嫌いではないけれど、大人げない。 「今は、気分じゃない」 「じゃあオレがもらっていい?」  どうせ彼はアイツの味方をするのだろう。どうせ、またアイツのもとに帰るのだろう。 「いいぞ」  彼は無邪気にアイツを拾っていく。皿の端に退けられた俺は、ただ遠くから見つめるだけ。 「じゃあパイナップル食べる?」  彼の唇にキウイが触れる。俺も触れたい。少し並びの悪いかわいい歯に、俺も、噛まれたい。 「いいや、要らない……」  食べるのが早い彼はもうクッキー生地を食べていた。そして、フォークが俺を刺す。俺の恋心があの白い歯に噛まれていく。 「なんで……」 「あ?やっぱ食いたかった?ごめんな。パイナポーは口直しだったの」  また彼は俺を刺す。唇に乗って、歯に潰される。食べ方はそこそこ綺麗。姿勢の悪さもかわいく見える。 「浮気しないか、俺と」  すぐ隣の手に手を重ねた。甘たるさの混じる固唾を呑む。彼の唇にパイナップルが消えていく。 * * * 漢字にすると「寝取るタルト」 2020.12.19

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