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chocolate Lips

* * *  チョコレートを突き立てる。中にビスケットが入っていて、長さはチョークくらい。教師になれたみたいだな。今の時代は黒板ではなくホワイトボードか。移ろう感じだ、世間は。俺も移ろうのかな。自分でも知らないうちに。嫌味なおじさんに、なっちゃうのかな。君だけ置いていって。  色のない唇にチョコレートを塗る。相変わらずまだ白い。口紅じゃないんだ、当たり前。なのに君はこれを食べると、いつも子供みたいに口の周りを汚していたね。君に自分の顔は見えないけれど、俺はよく覚えている。そのうち、ずっと遠い未来に、人の頭の中の写真なんかがプリントできたら、君にも見せてあげたかったな。口の周りに甘いヒゲができてるの。でも多分、その頃俺はもうおじいさんで、もしかしたら他に写真に写す人ができていて、そうでなくてもずっと歳下になった君のこと、覚えていないかも知れないよ。  どう思う?嫌かな。  他の人のこと、好きになってもいいのかい?  君のこと、もうずっと忘れてしまっていても。  返事はないから俺の中の君から探すしかない。  俺は他の誰かを愛するよ。君のこともすぐに忘れる。  さようならは言わない子だったから、俺もさよならは言わない。  じゃあ、バイバイ。  違うね。それはなんか、俺が嫌だ。  また今度。  君のことなんてすぐに忘れるから、俺は忘れているかも知れないけれど。  君の好きだったお菓子はそろそろ溶けていく。君と一緒に、空を泳いで。  世間はバレンタインデーだろう?見えているかい?広告会社の策略に奔走して、手作りチョコとか、いつもよりお高いブランド菓子なんか買ったりして。君のは1袋110g198円。スーパーで買ったもの。レトロな感じが好きだったよな。  特別ではないのがかえって特別みたいだった。他に誰かを愛しても、君は日常に入り込んで、忘れるなんてできるはずがない。   * * * 死という単語を使わない死別モノはあっさり終わらせるのが華。 バレンタイン×死別モノ 子供っぽい年下受け×保護者系強がり穏和スパダリ歳上美青年想定 2021.2.11

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