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スコールに打たれて ★
ぽつっ、と頭になにかが当たった感覚がした。次の瞬間、パラパラと大粒の水滴が空から降ってくる。あっと言う間に強い雨となって、ふたりの全身を水の膜が包んだ。
相良の濡れた手が瑛斗の頭をそっと撫でる。その手が後頭部に回り、ぐっと力が入ったと同時に舌の動きも強くなった。
はあっ……と、瑛斗の息が漏れる。
角度を変えて、何度もお互いの唇を貪る。濡れた唇が微かに音を立てた。相良の唇を求める内に瑛斗の思考はじんと痺れたかのように停止していった。
もう、どうでもいい。なにも考えたくない。ただ、この快感に酔っていたい。そう思いたくなるような、甘美な時間。
ふたりの体を叩くように降っていた雨が次第に弱くなっていき、やがて完全に止んだ。辺りが再び静寂に包まれる。
すっと相良の唇が離れていった時、それを残念に思う自分がいた。そんな自分の感情を自覚して動揺する。
「瑛斗。もうそろそろ家に入ろ。流石に風邪ひくから」
相良が微笑んで瑛斗の額に軽く口づけた。腕を引っ張られながらプールの端へと移動し、プールサイドへと上がる。相良が服を着る間、びしょ濡れのまま傍で突っ立っていた。ふと、相良の右ひじの濡れてしまった包帯に目がいく。
「相良……。ほんと、ごめんな、その怪我」
「ん? これ? こんなの大した怪我じゃないし。今朝はちょっと大げさに言っただけだから」
「だけど……」
「いいって、もう。ほら、行こ」
「え? わっ……」
そこにどんな意図があったかは不明だったが、相良がなぜか瑛斗を抱き上げて、お姫さまだっこしてきた。そのまま屋敷まで歩き出す。
「ちょ、俺、歩けるって。重いし、濡れるぞ」
「別にいいよ」
「え? え? なんで? なにで俺今、お姫さまだっこされてんの?」
「なんでって……。瑛斗がして欲しそうだったから」
「は??」
そんなやり取りをしている内に玄関に到着した。すると、控えていた使用人がすぐさまバスタオルを持って走り寄ってきた。
「タオルはいいわ。このまま風呂入るから」
そう使用人に伝えて、相良は瑛斗を抱えたままスタスタと迷路のような家の中を進んでいく。
え?今、なんて言った?
瑛斗はたった今、相良がさらりと言った言葉に耳を疑った。
このまま……風呂?
「ちょっと待て、相良。どういうこと?? 風呂って、一緒じゃねーよな?」
「え? 一緒に決まってるじゃん」
「いやいやいや、決まってないだろっ。俺、ひとりで入るから」
「ダメだって。ひとりずつ入ってたら、どっちかの体、冷えるだろ」
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