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4.成長2

 それから数日ほど主人の機嫌の悪い日は続いていたが、週末が近づくと自然に回復していった。なんだかんだ言って、クリスマスが楽しみなのだろう。  そしてデート当日のクリスマスイブの朝。家を出る直前、どうやら服装に悩んでいるようだ。晴太郎の衣装部屋として使っている部屋に2人で篭って相談している。  ちなみにこの2人が暮らすのは、親元を離れ自立しろ、と社長が晴太郎に買い与えた4LDKのマンションの一室。1部屋は七海が使っているが、ほかは全て晴太郎が使用している。七海が居る時点で晴太郎が自立出来ていない事には誰も気付いていない様子。 「七海、これどうだ? クッチのジャケットとエルメヌのパンツとアルーマニーのトレンチコート……」 「ああ、駄目です駄目です! 高校生がそんなハイブランドばかり着て外に出てはいけません!」  つらつらと当たり前のようにハイブランドの名前を口にする晴太郎。本気で着て行こうとしていたので、七海は慌てて止めた。  そんなにゴテゴテのブランド物ばかり高校生が身につけていたら、完全に狙われる。誘拐されて身代金を請求される未来が見える。 「じゃあ何を着たらいいんだ?」 「ちょっと待ってください、すぐ選びますから」  と言っても、服に関してはさほど詳しく無いし自信もない。しかし、主人に任せていてはいつまでも年相応なコーディネートは決まらないと思い、七海はクローゼットの中を見る。  確か、同級生と遊びに行くために一般の高校生らしい服を用意していたはずだ。それと、コートくらいなら少し値の張るもので良いだろう。  クローゼットの中を物色して七海が選んだのは、白いタートルネックのセーターに黒いチノパン。そしてヒームズで買ったキャメルのチェスターコート。  自分自身で選んだくせに安パイで地味な選択だと、肩を落とした。 「お、良いじゃないか!」 予想に反して晴太郎は気に入ってくれた様子だ。くるくると姿見の前で全身を確認している。満足そうに笑っていたので、良かったと胸を撫で下ろした。  鞄はマンハッタンホーテーシの黒いウエストポーチを持っていくらしい。高校生らしいチョイスに安心した。ルイウィドンのクラッチバッグにするなんて言い出したらどうしようかと思った。 「変なところ無いか?」 「はい、よくお似合いです」 「そうか、じゃあ行くか!」  目一杯おしゃれをして、クラスメイトとデートに出掛ける主人を車で駅まで送る。  帰ってくる頃には、そのクラスメイトはもしかしたら彼女になっているかもしれない。とても嬉しいことのはずなのに、どうしてか七海の心は霧がかかったようにもやもやしていた。

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