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「バスケの皆と」3

 歩いて店に辿り着くと、啓介のバイクを発見。  店員に通されて、広い座敷の中に入ると、啓介と若菜が並んで座っていた。  まあ、先に行っといて、この2人が離れて席に着いてたら、それこそおかしいから、当然なんだけど。  敢えて、そちらには座らないで、長机の、啓介と完全に反対側の端。しかも見えないように、啓介側に座った。  こうすれば、啓介の事は、見えない。  我ながら、良い考え。  見ると何だかムカついてしまうものは、見ないに限る。  オレの周りに、座りだす皆。  まあな。……啓介を、若菜が好きな事を知ってるなら、その啓介と若菜が2人で並んで楽しそうに話してる所に、座るアホはなかなか居ない。オレ側の席からどんどん埋まっていき、その内啓介達の周りも埋まる。それだけでおさまりきらず、結局後ろの長机も、埋めていく事になった。  元々誰が声かけたんだか知らないが、今日の集合は、大学1年、高校3年、高校2年にかかったものだったらしく。  皆が揃って、食事が並んだ所で、皆が口々に言い出した。 「じゃあ、元キャプテンー」 「啓介ー、挨拶!」  突然呼ばれた啓介が、はいはい、と言った風に、立ち上がる。  ち。見えてしまった。  見ないようにしてたのに。 「えー……久しぶりに学校違う奴や、後輩達にも会えて、楽しかったわ。オレら抜けて気合抜けてるか思たけど、動きめっちゃ良かったし。これからも頑張れや」  ゆるい感じで褒められて、下の皆が喜んで、「はーい!」と返事してる。  なんか余裕で挨拶を終えてるのもちょっとムカつく。 「じゃあ、現キャプテン、|良《りょう》、ご挨拶ー!」  オレは、すぐ後ろに座ってた良を振り返る。こっちは、少し緊張気味に立ち上がる。  良は可愛いな。うん。 やっぱり普通はこんないきなり指名されたらそうなるよな。うん。 「はい。えーと……。先輩方、今日はありがとうございました。 久しぶりに一緒にバスケできて、嬉しかったです。 特に、雅己先輩とそのチームの皆さんの、相変わらずの無茶な走りに感動しました!」 「無茶って言うなー」  つい突っ込みを入れると、周りが笑う。  こういう雰囲気、懐かしい。楽しいな。 「じゃあ……とりあえず、食事たべましょう、いただきます!」 「いただきまーす!」  皆でそれぞれ言って、ご飯を食べ始める。  大学に入ってから、このメンバーで会うの、久しぶり。 「雅己先輩!」  近くに座った、後輩の女子マネ達が、話しかけてくる。 「雅己先輩、彼女出来ちゃいました?」 「……出来ちゃいましたって何?」  微妙な言い方に、笑いながら答えると。 「何となく。 先輩が彼女命とかなってたら、なんか寂しいから」 「何それ……?」  苦笑い。  ……うーん、その予定だったんだけど。  何故か、出来てない。  まさか啓介となんて言えないし。  でも、高校も居なかったの皆が知ってるので、まだ全然居ないっていうのも、何だかちょっとな…。  啓介と居なかったら、多分、割と仲良くなってた子達の誰かと、そうなってたんじゃないかなーと、思うのに。  てことで、ちょっと意味深に。 「……うーん、居るような、居ないような……」  と答えてみた。 「えー、何々、先輩、何ですか、それ?」 「どういう意味ですかー?」 「うーん……いや……うーん。内緒で」  要たちがクスクス笑う。 「お前は啓介と居すぎなんだよ」 「そうそう。 啓介と居なければすぐできるのに」 「つーか、啓介はオレと居ても、全然彼女居たからね……」  皆の微妙なフォローにそう返すと、皆、ぴた、と止まって、あははー、と笑い出す。 「先輩、もし、私が大学生になっても、まだ彼女居なかったら、 私と付き合って下さいよー」 「え」  突然の、|沙希《さき》の告白に、周りが楽しそうに騒ぎだす。 「本気で言ってんの、沙希ちゃん?」 「はい。だって、先輩、可愛いんですもん。カッコいいのに可愛いとかって、最高」 「つか、今じゃないの?」 「私これから受験なので、無理です」 「じゃあ…… 来年、考えよっか」  クスクス笑いながら、本気なんだか冗談なんだか分からない話に、これまた適当に応えると。 「私、わりと本気なんで、覚えておいて下さいね?」  沙希がそんな風に言うから、周りがまたわっと湧く。   「若菜が啓介先輩と付き合って、私が雅己先輩と付き合えたら、すごい楽しくダブルデートできそうですし」  ……ぴく。  啓介が若菜と付き合って、ね。  ――――……。  ……向こうは見ない見ない。  腹立つから。 「まあ、とりあえず、受験頑張ってね」  そんな風に言ってその話を終わらせてると、隣に居た要が可笑しそうに笑う。 「何で彼女できないのか、ほんと不思議、お前」 「……何ででしょ」 「絶対啓介とばっか居るからだろ。 少し離れて、女子と居てみたら?」  確かに、啓介のせいだけど。  ……要たちが言ってる意味とはちょっと違う……。  でもなー。  もー。  ――――……なんだかなー。    ……オレ、何で今、啓介と離れてるんだっけ。  いつもほんとに一緒なのに。  あ、そっか。  チームが 離れちゃって、その隙に啓介が若菜と楽しそうにしてたからだ。  なんだかな。  モヤモヤする。

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