46 / 86

4-13

家の近くまで、スザクはユキトを見送った。 「じゃあ…スザクさん、今日はありがとう」 「こちらこそありがとう。気をつけて帰るんだよ」 スザクに見送られ、ユキトは帰路に着く。 スザクから夕飯に誘われていたが、断ってしまった。 好きというスザクの言葉に対する、自分の気持ちの整理がついていなかったのだ。 今まで恋愛などしたことのないユキトにとって、この胸の高鳴りが好きという感情なのかがわからなかった。 それにスザクは自分なんかでいいのだろうか。スザク程の人ならもっといい人がいそうなのに、何故自分を選ぶのだろうか。 さっきは勢いでキスをしてしまったが、思い出すと恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。 ユキトは、そっと自分の唇を指で撫でた。 なんだかまっすぐ家に帰る気分にもなれず、人通りの少ない夜の街をあてどもなく歩いた。 その時だった。 ― プスッ 「ぅあっ…」 突然の激痛に、ユキトは膝をつく。 腕に注射針のようなものが刺さっていた。 敵襲だと思い、隠していたナイフを取り出しあたりを見渡すが、次の瞬間、強い目眩を感じ、両手を地面についてしまった。 「くそ…、睡眠薬か…」 ユキトはそのまま気を失った。

ともだちにシェアしよう!