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驚いて振り返ると、真剣なリッキーの顔があって。 それを、ただただ茫然と見つめる。 「は? ちょ、何言ってーー」 「もう一度言う。 翔太、俺はお前が好きだ」 「っ、」 待って? これは、何? もしかして………練習台、か? もう、耐えられなかった。 掴まれている腕を乱暴に引き剥がし、キッ!と睨みつける。 「お前……何考えてんだ!!」 こんなの、あんまり過ぎる。 「最後の最後の最後まで…せっかく俺が耐えてたのに……っ!どんだけ俺を傷つけりゃぁ気が済むんだよ!!」 ただ友人にふざけて言ってるだけなんだろうって、頭では分かってる。 でも、もう言葉は止まらなくて。 「人の気持ち踏みにじりやがって……いい加減にしろよ!?」 悔しくて悔しくて、涙が溢れて止まらない。 「っ、くそ…くそ、この野郎! この馬鹿りきyーー」 言葉が止まらない俺の口を、優しい何かが塞いだ。 「っ!? ん……っ」 目の前いっぱいにリッキーの顔があって。 何が起こってるのか理解できなくて、パニックになる。 やがて、ゆっくりと唇が離されて…… 「悪い、 泣かすとは思わなかったんだ。 どうして上手くいかないんだろうな。全部お前の言う通りにしたのに」 「ーーぇ?」 「ショウ。俺は本気で、お前の事が好きだ」 真っ直ぐに、そう言われた。 「やっと分かったんだ、自分の大切なものが何なのか」 ぇ、待って。 「どんな女と付き合ってみても、ショウみたいな安心感とか安らぎは得られなくて、俺はお前じゃないとダメだって気づいた」 ちょっと、ちょっと待って。 「お前に嫌われたくなくて、確実に告白を成功させたくて試行錯誤して、今日誘ってお前の好みを聞いてそれを全部買って今を迎えたけど、やっぱ泣かせちゃったな」 「ははは」と笑いながら、溢れる涙を救ってくれる。 ぇ、これ……夢? 「夢じゃねぇよ、ショウ」 「っ!?」 「全部口に出てるから」 ふわりと、頭を撫でられた。 「男同士で世間の目あって、辛いこといっぱいあるかもしんねぇけど、大切にする。 なぁ、ショウ。俺、お前がいないとダメなんだ」 ヘラリと、弱々しくイケメン顔が笑って。 「〜〜っ!」 ぎゅぅぅっと、目の前の体に抱きついた。 「ぉ、俺だってっ、お前がいなきゃダメっ、だし…っ! 俺の方がずっとずっと前からお前のこと、好きだったし!」 「うん、うん。気づくの遅くてごめんな、ショウ」 優しく、慰められるように背中を撫でられて、もうどうしようもなくて。 「うぇぇ…ヒック……ぉれもっ、力也が好きぃ…っ」 ぎゅぅっと力強く抱きしめられた。 全部全部、何もなかった。 女の子との待ち合わせなんて、何もなかった。 良かった。 ずっとずっと…… もう、いつからなのか分からないほどずっと前から…こうして抱きしめて欲しかった。 「大好きっ、リッキー」 「ん。俺もだ、ショウ」 おでこをコツンとぶつけ合って、えへへと一緒に笑い合う。 街はクリスマス真っ只中というだけあって、チラチラ見る人はいても何かを言ってくる人はいなくて。 あぁ神様……俺、生きててよかった。 今、どうしようってくらい幸せだ。 「いつもいつもたくさん傷つけたな、ショウ。ごめんな」 「っ、ううん、も、いい」 「これからはいっぱい大切にするから」 「ん。俺もリッキーのこと、いっぱいいっぱい大切にする」 「「いつも、本当にありがとう。これからもよろしくな」」 自然と重なった二度目のキスは 優しい優しい、涙の味がしたーー (これから先も、君と一緒ならどんなことでも乗り越えられる。だからーー) (ずぅっとずっと、一緒にいよう) *** イケメン不器用×平凡一途 〈リッキー(力也)×ショウ(翔太)〉 fin.

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