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変身ヒーロー(攻め)とちょっぴり強情なサイドキック(受け)
「んっ、んっ……!」
組み敷かれた青年の喉から、苦しげな息が漏れている。
青年の名はサイファ。体はすらりと鍛えられている。
彼はうつぶせになって、与えられる快感に耐えている。
整った顔を歪め、枕にしがみついている。体が揺れるたびに、彼の金髪も揺れる。
「サイファ、もっとだ……」
サイファを組み敷いている男の名は、ケージガイ。
サイファより高い背丈と、鍛えられた体の男だ。逞しい手で、サイファの腰をつかんでいる。
サイファは、ケージガイに後背位 で貫かれていた。
サイファの菊座は、ケージガイの太い陽根を咥え込んでいる。ケージガイが動くたびに、潤滑液が「ぬちゅぬちゅ」といやらしい音を立てた。
「顔を上げろ、サイファ」
「い……や、だ……!」
サイファの拒否の言葉に、ケージガイが強く腰を突き入れる。
するとサイファは「んぐっ」と喉奥を鳴らし、さらに強く枕にしがみつく。
「相変わらず、素直じゃないな……」
「うるっせ……さっさと、おわらせ……んんっ!」
ケージガイが、サイファの陰茎を握る。太い指が、熱い陰茎をこすり上げる。
「サイファ、ナカ、締まってきた……」
「バカ、言う、なぁ……!」
サイファの肉体が、ビクビクと痙攣し、こわばってくる。
陰茎に与えられた刺激は、サイファの体をめぐり、菊座がケージガイの陽根を締め付ける。
「イくぞ、サイファ……!」
「あ、うぐ……っ、うあ……ッ!」
ケージガイが強くサイファを突き上げる。
そのまま、陽根から欲望を解き放つ。サイファの最奥を、熱い白濁液が満たしていく。
同時に、サイファも絶頂する。ケージガイに握られていた陰茎が脈動する。精液が飛び出し、ケージガイの手を汚した。
「はぁ……はぁ……」
「うぅ……ケージ……」
サイファは荒くなった息を整えようと、何度も深呼吸を繰り返す。
緩まった菊座から、ケージガイの陽根が「ずるり」と抜ける。
「なんだ、もう付き合ってくれないのか?」
「あ……当たり前、だろ……!」
ケージガイの問いに、サイファは口を尖らせる。
「お前みたいな絶倫バカ……満足するまで付き合ったら、壊れちまう……!」
サイファは大きく息を吐いて、身を起こす。
ケージガイは頭を掻くと、ニヤリと笑って首をかしげる。
「壊さないように、気をつけるが?」
「そういうことじゃねぇよ……」
サイファは「ふぅ」とため息をつく。セックスの後処理を始める。
「明日は悪党 のアジトに殴り込みだろ? 俺がいなきゃ、苦労するのはお前なんだからな!」
「はいはい、わかってるよ」
ケージガイが肩をすくめる。
「サポート、信頼してるからな。俺の愛しい相棒 」
「……その言い方、なんかムカつく」
「俺は本心から言ってる。素直に受け取れよ、サイファ」
ケージガイの言葉に、サイファはプイッとそっぽを向いた。
***
堕落境域――日本に突如として出現したその領域は、混沌の街と化した。
悪党 がはびこり、正義の超人 と対峙する。異界の種族が闊歩し、非常識と非日常が常識に取って代わる。
そんな世界で、ケージガイはヒーローをしている。
サイファの役目は、ケージガイを後方でサポートすることだ。マップを調べ、敵の位置を伝える。ケージガイから報告される情報を分析することもある。
ヒーローと後方支援の相棒 。
ありふれた関係の二人は、同時に恋人同士でもあった。
「油断するなよ、ケージ。敵の配置を送る」
『了解』
サイファは現場には出ない。通信端末を駆使して、ケージガイに情報を送る。
今日は、ヴィラン組織のアジトへ踏み込むことになっている。
サイファは、アジトを特殊なドローンでスキャンし、得られた情報を精査する。必要な情報を、ケージガイに送信する。
『よし、行くぞ――』
通信端末から、ケージガイが突入する旨を伝えたその時。
轟音が響き渡る。
通信端末からは「ザザッ」とノイズが聞こえる。
「……ケージ!?」
サイファは慌てて、ケージガイが向かった方角の空を見る。
黒煙がもうもうと上がっている。続いて、爆発音が聞こえる。衝撃波が、サイファのいた場所にも伝わってくる。
「ケージ……ケージ! 応答しろ、ケージ!!」
『ザザ……ッ、ザザ――――』
端末が応答しない。サイファは青ざめた。
敵のアジトが爆破されたのだ。かなりの規模の爆発だ。
「ケージ……!」
サイファは呆然と、ケージがいるであろう方角の空を見つめた。
上がる黒煙が、空を覆う雲に吸い込まれていった。
***
「ケージ!!」
バン、と扉を開けて、サイファは病室に駆け込んだ。
アジト爆破から、十二時間後――ようやく、ケージガイの安否が判明した。怪我をして、病院に担ぎ込まれたというのだ。
「おっ、サイファ」
ベッドの上に、ケージガイが身を起こして座っている。体のあちこちにガーゼが貼られている。それは痛々しいが、彼は至って元気そうだ。
「ケージ……」
「おう、見てのとおりだ」
「だ、大丈夫なのか!?」
「おかげさんで、大した怪我じゃない」
ケージガイがニカッと笑う。
サイファは虚を突かれたような顔のまま、「ほぅっ」と息を吐いた。
確かに、ヴィランのアジトは爆破された。
しかし幸いなことに、ケージガイは軽傷で済んだのだ。
「さすがに一瞬ダメかと思ったが、日頃の行いがいいせいだな、これは」
ケージガイが軽口を叩く。
いつもならここで、サイファの憎まれ口が飛び出すところだ。
「……ケージ……っ」
サイファの青い瞳から、ぼろぼろっと涙がこぼれる。
今度は、ケージガイが虚を突かれる番だ。サイファの涙は、意外すぎた。
「ど、どうした、サイファ」
「お前が……あんな爆発に巻き込まれて……俺、もう、ダメかと……!」
サイファがしゃくりあげる。
「ケージ、お前がいなくなったら、俺、俺……!」
「……サイファ……」
ケージガイは、手を伸ばす。サイファの顔にふれる。
サイファの涙が、さらにあふれた。そのまま、倒れ込むようにケージガイに抱きつく。
「バカ野郎……心配させんなぁ……!」
「……すまん」
ケージガイは、サイファの頭を撫でる。
サイファの金髪から、彼の匂いがする。さらりとした髪は乱れている。ずっとケージガイを案じていたのだろう。
「……サイファ」
「ん……?」
「もう、退院していいそうだ。……帰ろう」
「ん」
サイファが泣きながら、うなずく。こんなに素直な彼は、めったに見られないだろう。
「大丈夫だ、俺は死なない、サイファ」
「ケージ……」
「愛しい相棒 のためにも、な」
ケージガイは優しくほほえんだ。
サイファの頬が、赤くなっている。泣いたせいだけではない。愛しい者に向ける、愛情の赤だった。
「帰ろう」
夜闇が、混沌とした街の灯に照らされていた。
***
「…………」
二人は病院から帰宅した。
ほとんど会話もなく食事を済ませ、風呂に入る。
サイファがこれほど物静かなのは、初めてかもしれない。
サイファ自身、自分の態度に違和感を感じていた。ケージガイの前で泣いてしまったのが、気まずいのかもしれない。
シャワーを浴びたサイファは、下着だけ身につけて、ベッドへ行く。
先に風呂を済ませたケージガイが、身を起こして座っている。全裸だ。
いつもならそこで、「ヤる気か!」とツッコみ、悪態のひとつもつくのだが。
「あ……」
サイファは言葉が出なかった。
ケージガイの体のあちこちに、真新しい傷がある。彼の驚異的な回復力で、いずれもふさがってはいる。
だがそれを見ると、サイファは自分を責めたくなる。
「ケージ、ごめん……」
「なんで謝るんだ?」
「俺がもっとちゃんと……状況をスキャンしてたら」
うつむくサイファを、ケージガイが抱き寄せる。
「大丈夫」
「ケージ……」
「大丈夫だ、俺は生きてる」
優しく、あやされるような抱擁。サイファはまた涙が出そうで、ぐっとこらえる。
「生きてる。ケージが生きてる……」
「……お前がそんなにしおらしいと、な」
ケージガイが腕をゆるめ、サイファを見つめる。
ケージガイの瞳は、燃えるような赤色だ。短く刈った黒髪によく映える。その赤色が、優しくサイファを捉えている。
「たまらなく……そそる」
優しい赤色に、欲望の色がけぶる。
ケージガイの顔が、サイファの顔に近づく。
「……ん……」
キスをされる。優しく唇が吸われ、「ちゅ」と音がする。
何度も何度も、キスを重ねる。サイファもケージガイの唇を吸う。リップ音が、静かな部屋に響いて溶ける。
「……ふ、ぁ……ケージ……」
「サイファ……」
ケージガイが、噛み付くようにサイファにキスをする。
合わさった唇の隙間から、舌が入り込んでくる。サイファの口内を、ケージガイの舌が蹂躙する。
「ん……」
「は、ふ……ちゅ……れろ……」
サイファも負けじと舌を絡める。頬に熱が上がり、吐息も熱くなってくる。
「ぷは……はぁ、はぁ……」
ケージガイが唇を離す。
サイファは目元が潤むのを感じた。
「ケージ……」
「なんだ、もう……こんなになってる」
ケージガイの手が、サイファの胸元を撫でる。
サイファの乳首は「ぷっくり」と膨らんでいた。
「ん……っ、あ……」
ケージガイがサイファの乳首を指で転がす。優しく刺激を与え、時折「キュッ」とつまみ上げる。
「ん……っ、ん……っ」
サイファが快感の声を噛み潰している。いつものことだ。
ケージガイがサイファの首筋に舌を這わせる。舌先で筋を舐めたあと、ねっとりと濃密なキスをする。
「ん、あ、……ッ」
「サイファ、声、抑えるな」
「で、でも……」
「聞きたい。サイファの声が、聞きたい」
ケージガイが告げる。サイファは、唇の力を緩める。
同時に、ケージガイが顔を下ろし、サイファの乳首に吸い付いた。
「ふぁ……っ、そ、そこぉ……」
「ん、ん……」
「あ、あぁ……す、吸っちゃ……」
サイファの口から、甘い声が漏れる。こんなに甘美な声が出るのか、と本人ですら驚くだろう。
ケージガイが丁寧に乳首を転がし、吸い上げる。
「ん、ぁ……っ、ケージ、俺、もう……っ」
「いいぞ、一度……イって」
「あ、そんな、ちくび、転がして……ぅああっ!」
サイファの体が、ビクビクと跳ねる。
同時に、股間がじわりと濡れる。陰茎はすでに勃起し、快楽に耐えかねて精を吐いていた。
「う、うう……」
「ああ、漏れたのか」
恥ずかしそうにするサイファに、ケージガイがほほ笑みかける。
顔を逸らそうとしたサイファの顔を、ケージガイが捉える。
「逸らすな、見ろ」
「……でも」
「お前の顔が、見たいんだ」
ケージガイの赤い瞳が、サイファの青い瞳を見つめる。双眸は、たがいに欲情した色に染まっている。
「サイファ」
ケージガイがまっすぐサイファを見据える。
「愛してる」
告げると、ケージガイはサイファにキスをする。そのまま体重をかけ、押し倒す。
サイファのすらりとした体が、ケージガイのがっしりとした体に組み敷かれる。
「んっ、んっ……ぷは、ケージ……」
サイファの下着を、ケージガイがずり下ろす。
「ぶるっ」と勃起した陰茎が晒される。下着の中で吐いた精液が、陰茎をぬらぬらと光らせている。
「は、はずかしい……」
「いいんだ。……俺が気持ちよくしてやったあかしだしな」
ケージガイが、左手でサイファの陰茎を握る。優しくこすりあげると、サイファの喉から甘いうめきが漏れる。
「んあ……っ、ケージ……あっ、あっ」
「そうだ、もっと声を出すんだ」
「そんな、あっ……ケージの手、気持ちいい……ッ」
サイファはケージガイの手に翻弄される。
精液にまみれた陰茎は「ぬちゅぬちゅ」と音を立て、さらに先走りを垂らす。
「あっ、うっ、俺、また……!」
「そうか? じゃあ、こっちもイジってやるよ」
ケージガイがニヤリと笑う。右手の中指を、ゆっくりとサイファの菊座に滑らせる。
まだ硬いが、サイファの菊座がヒクリと反応する。
「ふぁ……っ、そこ……!」
「ここ、ほぐさないとな?」
ケージガイは中指を、そっとサイファの内部に挿入する。関節が埋まっていくと、サイファの陰茎が「ビクビク」と震えた。
「お前の感じるところは、全部知ってる」
「そ、そんな……っ、あっ、う……っ」
「例えば、こことか」
ケージガイの指が、サイファの前立腺を捉える。優しく押し上げ、刺激する。
「ひあ……っ!」
サイファの唇から、快感の声がほとばしる。
同時に、陰茎が大きく脈動する。「びゅっびゅっ」と精を吐き出す。
「あ、あ……!」
「いいぞ、もっと……」
「イ、イってる……イってるから……っ! ああッ!」
サイファは腰を逸らすと、何度も精液をほとばしらせる。
その度に、菊座はケージガイの指を締め付ける。ケージガイがそこを攻め立てると、柔らかくほぐれてくる。
「さて、いいか……」
「はぁ……はぁ……」
ケージガイがサイファの菊座から指を引き抜く。分泌液が「トロリ」と糸を引く。
サイファが荒い息を吐きながら、ケージガイを見つめる。
「ケージ……」
「ん?」
「来て……俺の、ナカに……」
サイファの言葉に、ケージガイは笑みを浮かべた。欲情した獰猛な笑みだった。
「本当に……今日は、素直だな!」
ケージガイはサイファに覆いかぶさった。陽根はすでに大きく勃起している。サイファの太ももを両手で持ち上げ、サイファの菊座に陽根をすりつける。
「いくぞ」
ケージガイが腰に力を込める。
大きく張った亀頭が、サイファの菊座に挿入されていく。
「はぁ……! サイファ……」
「ケージ……あっ、……はぁぁ……!」
サイファが大きく息を吐くと、蕩けた内部がケージガイの陽根を受け入れていく。
「奥、まで……もっと、ケージ、来て……」
「ああ、わかってる……」
素直なサイファが嬉しくて、ケージガイはグッと腰に力を込める。
陽根が、サイファの奥を突き上げる。
「んあっ、ケージ……!」
サイファの腰がうねり、よがる。
ケージガイが何度も突き上げると、サイファは泣き声を何度も上げた。
「あっ、あっ、あっ、ケージ、ケージぃ……!」
「いいぞ、もっとだ、サイファ」
「ケージ、ケージ、もっと、もっとして……」
サイファがうわ言のように、ケージガイを求める。
二人の肉体がぶつかる。肌の当たる音を立てる。筋肉が絡まり合う。
「気持ちいい、きもちいい……ケージ、あっ、ああっ」
「サイファ、俺、そろそろ……」
「いいよ、来て……俺のナカ、満たして……!」
サイファが潤んだ瞳でケージガイを見上げる。
ケージガイは苦しげに顔を歪めた。快感が耐えられないところまで来ている。
「くぁ……ッ、出る……!」
ケージガイの陽根が、大きく膨らみ、欲望を解き放つ。
何度も脈動し、白濁とした精液をサイファの奥に注ぎ入れる。
「サイファ……!」
「あ、あ、イく……俺も、イくぅ……!」
サイファもまた絶頂する。陰茎から精液が吐き出される。腰がビクビクと震え、菊座はケージガイの陽根を締め上げる。
そして、サイファが脱力する。
「はぁ……はぁ……ケージ……」
「なんだ、サイファ?」
サイファがなにか言いたげに、ケージガイを見上げてくる。
「愛してる……ケージ」
サイファが告げると、ケージガイは嬉しそうにほほ笑む。
「まったく」
「なんだよ……」
「今日は素直で……かわいいな、サイファ」
ケージガイはサイファの頬を撫でる。
赤くなったサイファの頬が、さらに熱を帯びた気がした。
「サイファ」
「ん」
「……もう一回、いいか?」
ケージガイはサイファと繋がったまま、体を前に倒す。キスをする。
サイファが、ケージガイの首筋に腕を絡めてくる。
「ん……っ、ん……」
「ふ、……サイファ」
「ケージ……傷に障っても、知らないぞ?」
サイファの憎まれ口が戻ってくる。
ケージガイは笑う。愛しい恋人にまた口づけして、抱きしめる。
「大丈夫、俺は生きてる」
「そっか」
サイファが安心したように笑う。
ケージガイはまた腰に力を入れる。深く陽根を突き入れる。
サイファの唇から、嬌声が漏れる。素直に、高く、甘えた快楽の声だ。
「あ……ッ、あ……、ケージ……!」
「愛してる、サイファ……」
その夜、二人は何度も交わり続けた。
混沌の街で、明日をも知れぬ命の身。
信頼する相棒、愛する恋人。
二人の絆は深まった。
――翌朝、起き上がれないサイファがケージガイに悪態をつくのは、また別のお話。
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