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10騎士の魔剣になりました

 降臨の神殿にておこった魔剣騒動を、アーシア陛下に事細かく報告した。前世が魔王である事は、ヴェルジークにも伏せている。  ちなみにイオが騎士団を蹴散らしたのは、アーシア陛下に火を付ける要因となるのでそれも伏せておいた。 「なるほど、イオは何らかの理由で転生し魔剣と一体化したと。魔剣の声はイオにしかわからぬようなので、今の所確かめる術はないようだな」 「ですが魔剣は瘴気が治まり、イオが所持しても問題はないようです」 「陛下、私も魔剣を手にしましたが瘴気で穢れたり先日のように暴走するなどの異常はありませんでした」 「魔剣とオレは一体化してるみたいで、側にいないとダメみたいです」 「ふむ、イオの滞在場所を考えねばならないようだ。地下牢にずっと置くのは忍びない」 「騎士団に置くのも危険でありますな」  仮に王国の何処に居たとしても強大な魔力を持つ魔剣が王の元にあるだけで、他国の不信感を抱かれかねない。  そして魔剣の所有者であるイオ自身も危険に合う可能性が高い。慎重にかつ不自然でない方法で、イオを隠す必要があった。 「恐れながら陛下」 「なんだ、ヴェルジーク」 「私の屋敷に使用人見習いとして置くのは如何でしょうか。私の屋敷ならば王都からも近く管理しやすいでしょう」 「と言って、お前が独占したいのであろう」 「そのような邪な気は一切ありません、陛下よりは」  一国の王に対して不敬罪に当たる発言を堂々とする、仮にも騎士団の副団長ヴェルジーク。彼の首が飛ばないのがいつも不思議で仕方ない周囲の者達だった。 「やはりメリュジーナ侯爵家より、チェイン公爵家が適任であろうか」 「恐れながら!恐れながら陛下!我が家には目に入れても痛くない程将来有望な嫁入り前の愛娘がおります故に!丁重にお断りいたしますぞ!」 「親バカめ。お前の娘はまだ5歳であろう」 「やはり、私の屋敷に置きましょう。家の執事にしっかり教育をさせます」 「あー、ヴェルの家のスーパー執事すっごいよな」 「腑に落ちぬが、まぁメリュジーナ侯爵家に身を置く事を許可する」 「王様、ありがとうございます!よろしくお願いします、ヴェルジークさん」 「こちらこそ、不憫のないように迎えよう」  さすがにアーシア陛下や周囲の目がある場では、ヴェルジークに敬称する。イオはひとまずヴェルジークの屋敷に滞在し、使用人見習いとして身分を隠す事になった。 「残る問題はやはり、魔剣か。イオ、魔剣は聖剣に戻るかお前から切り離す事はできぬのか?」 「どうですかね・・・」 『聖剣は眠っておるし、我もわからぬ』 「えっと・・・聖剣は眠っていて、今はわからないそうです」  「なるほど。ではしばらくは魔剣に関する情報収集に努めよ」 「はっ!」  一同はアーシア陛下に膝まずき、謁見は終了した。フリエスも兵舎に戻るらしく、後で遊びに行くと告げられ別れた。  イオは今夜は地下牢ではなく、兵舎のヴェルジークの自室に泊まる許可を貰う。2日後の出立前に、屋敷に書状を届けるとヴェルジークは机に座って居た。  湯浴みを終えたイオは寝間着用ワンピースに着替えベッドの端に座って、何か魔剣と話していた。書き終えたのかヴェルジークが、イオの隣に座る。 「イオ、魔剣と会話していたのか?」 「傍から見ると独り言の危ない人だよね」 「確かに。外では会話はしない方がいいな」 「魔剣に名前を付けた」 「ほう、どんな?」 「ケンさん!」 「・・・」  剣だから、《ケンさん》。安直なネーミングセンスである。イオは多分センスはない。 「わかり易い名前だな」 『こやつ、絶対王の事を頭悪いと思ったぞ』 「ケンさんはちょっと大人しくしててね」 『わっ、王よ!?なぜ我に布を被せるのだ』 「後でいっぱい磨いてあげるから」 『絶対であるな!?よいか、約束であるぞ!』  大人しく布に包まれ、壁に立てかけられたケンさんである。 「神殿でフリエスがお前を守るのは誰かと聞いたな」 「うん?」 「本当は私が守ると答えたかったが、副団長として部下の手前即座に反応が出来なかった」 「あー、うん大丈夫!副団長って大変そう」 「だが今ここに宣言させて欲しい」 「えっ?」 「イオ、俺の命をかけ君を守ろう」 「っ、ぁ、ありがとう。あ、あれだよね!我が剣に誓って守るっていう!」  イオは男前なヴェルジークに見つめられて照れた。自分が女の子だったら別の意味に捉えそうだ。  ふとイオの肩に手が置かれ、ヴェルジークの顔が近付いてくる。 「イオ・・・」 「・・・・んっ」  イオはヴェルジークに、キスされた。  

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