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第3話
この曖昧な関係にそろそろ終止符を打つべきだと、何度目か分からない提案を遠回しにしてみた。
俺は来年からさらに勉強勉強の毎日になる。
性欲を持て余したところで、恐らく真琴の相手をする気力と体力が残らない。 今でも正直キツい時がある。
ちょうどその日の朝のセックスで一箱十二個入りコンドームを使い切った事だし、いい機会だと思った。
新たに買い足さず、そのままノーマルな関係に戻ろう。 そうすれば〝友達〟の名称くらいは当てはまるようになるんじゃないかな。
さすがにこれを何の脈絡も無く直球で言うと、感情型の真琴から喚かれる。 一方の俺は完全なる思考型。 宥めるのが非常に大変で厄介なので、ごくごく柔らかく言ってみたのだ。
真琴のお尻を綺麗にしながら、まるで他愛もない世間話でもするかのように。
『……俺たちって何なんだろうね』
色々な思いを込めて、その一言で俺がいかにこの関係に疑問を抱いているかを悟らせようとした。
けれど真琴は、即答はせずにお尻の孔をキュンキュンさせ、俺にはとても予測出来なかった返答をしてきた。
『おれ税理士になろっかなー』
『……え? なろっかなーでなれるものじゃないよ、税理士は』
『そうなの?』
『そうだよ。 真琴は経済学部に通ってるから全然可能性が無いわけじゃないけど、税理士の資格は司法書士より取得が難しいって言われてるんだよ?』
『ふーん』
真琴が突飛な言動をするのは珍しい事ではないけれど、相手をする俺は毎度理解に苦しむ。
うそぶいたそれの資格取得のためには、まずは簿記論・財務諸表論の必修科目、所得税法または法人税法どちらかの選択必修科目の合格が必須。
加えて、消費税法または酒税法、相続税法、固定資産税、国税徴収法、住民税または事業税のいずれか二つ、一般的には数年かけて計五科目の試験を受け、合格すれば晴れて税理士資格を取得できる。
真琴には、本当に税理士になりたいのであれば遊んでる暇はないよ、無理じゃないかもしれないけれど合格の可能性は限り無く低いよ、と滾々と説明しておいた。
検事を志す前、将来に備えて様々な国家資格を調べていた知識がこんなところで役立つとは思わなかった。
我が憎き父親もその職に就いているので、若干の拒否反応が出たというのもある。
俺の遠回しな提案を意外な切り口で躱した真琴は、その日も例外無く〝怜様大好き〟過多だった。
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