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常識の範疇外の行為だ。
普通に生きていて、与えられない快感。人間が欲深いと言うのなら、その快楽に抗えるわけがない。
「ニューイ……も、かい……イきたい……」
「くっ九蔵っ?」
脱力しきってただニューイに支えられているだけの九蔵に名を呼ばれ、ニューイが声をひっくり返した。
普段はジトリと陰気な目つきが、トロン……と熱に浮かされている。
濡れた色気を持つ瞳が上目遣いにニューイを懇願の視線で突き刺し、何人もの男を誘惑した手練の売女のように溶けた声でねだる。
「はっ……ぁ、ぐちゃぐちゃ、して……つぎ、は……出したい……」
「っ……!?」
火照った桃色の頬。汗を浮かばせた額をくすぐり、湿った前髪が揺れた。
明らかにいつもの九蔵ではないだろう。
ニューイもそれがわかるのか、しどろもどろと「いやでも、この誘いに乗ると私は後で九蔵に殺されるのでは……っ?」とあたふたし始める。
だが、今の九蔵は我慢できない。
「んっ……シてくれたら……俺のこと……はっ……好きに食べても、いいぜ……?」
「ぬぅ……っ!?」
ニューイの長い尻尾がうにょんっ! と飛び出し、シーツの上をくねった。
九蔵は自称他称共にしゃれっ気がなく、痩せぎすのっぽのさえない男だ。顔立ちは悪くはないが、匂い立つような美丈夫ではない。
それでもこうして瞳を潤ませ、触って? とオネダリする姿は、少しは悪魔の欲を誘ったらしい。
情事を思わせる蠱惑的な匂い。
肉欲に溺れるその匂いは、悪魔にとってゴチソウである。
「うぅ……うぅぅ……」
「ニューイ……お願い……」
「うぐぅ……そ、それじゃあ、私は九蔵を感じさせるので、九蔵は自分でイけるかな……?」
九蔵を想うニューイがその申し出を受けるか否か、考えたのは二呼吸ほどだろう。
耳まで顔を真っ赤にし、ニューイは尻尾をウネウネとくねらせて嬉しがりながら、九蔵の魂を握る手を動かし始めた。
食欲には勝てなかったようだ。
そういう名目で、魂の芯をクル、クル、と手のひらでまさぐる。
「あッ……うん、っ……っ」
「ムフフ。いくらでも悦くしてあげるぞ。ほら、ここはどうだい?」
「ン……っ……あ、ぁう……」
ニューイが胸の突起も同じく弄ぶものだから、脱力する九蔵の体がまた断続的に跳ね、軽い絶頂がとめどなく襲った。もちろん射精できない内的な絶頂だ。
ニューイは九蔵が感じると喜び、孫に甘い祖父母のように甘露の声を出して、せっせと奉仕する。
九蔵はそのたびに声を上げ、夜の部屋の中で、発情した喘ぎが滲む。
「九蔵、気持ちいいかい?」
「ん……気持ちぃ……んっ……んっ……」
「それはよかった。九蔵が嬉しいと私も嬉しい。もう少し強くしようか?」
「っひ……っ! あ、っ……っ……っ」
張り切る悪魔の手は的確に柔らかな胸をつつき、揉んだ。九蔵がかぶりを振って感じるさまをニューイはニコニコと喜ぶ。
芯を抑え込むように九蔵を抱き寄せるものだから、九蔵は思わずニューイの腰に巻きつけてしまった。
「っう、本当に、いい匂いだな……」
「はっ……ぁっ……ン……っ心臓掴まれて……気持ちぃ……ンっ……は、ぐ……っ」
「そんなにくっつくと、キミを丸ごと食べてしまいたくなる……」
食べる。あぁそうか。自分は悪魔のエサだった。わかっていても離れられない。
ニューイの肩口に顔を埋め、ヒンヒンと喘ぎ、欲望に溺れる。手の中の肉棒は硬さを保ったまま、手のひらに擦れてゾクリと疼く。
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