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『魂は、心がキレイとか見た目がキレイとか人格者とか関係ねぇの。チョイと騙されて契約に頷いて悪魔界にお持ち帰りされちゃ、悪魔の大群にバイキング感覚で食い尽くされて、空っぽの人形みたいに魂と欲望だけ供給する食品にされるんじゃね? 知らんけど。だってムカつく人間なのに、アレくんはクソ美味そうではあるんだよな〜。あ〜付き合うって言わせたら簡易契約結んで、欲望だけでも貪ってやったのにぃ。ボク、言っとくけど上手いよ? ニュっちは甘っちょろいから退屈なセックスしかしねーだろーけど、ボクはくんずほぐれつジュプジュプのやつやっちゃうし? 三日でボクの顔見たら勃起する変態にしてやんよ』 「ズーズィ。私を本気で怒らせたいのかい」 『やーめぴ』  怒涛の勢いでペラペラと語るズーズィは、ニューイの一言で黙り込んだ。  驚きしかない。九蔵の前では子犬なニューイが、たった数十分で崩れ落ちる。  戦慄する九蔵は、おそるおそる、コソッ、と澄央の耳に唇を寄せてささやく。 「なぁ、ニューイって、もしかしなくてもスゲー強い悪魔だよな……俺今からでもお説教しまくってる態度改めたほうがいいか?」 「トキメキの耳打ちス。よっしゃー」 「あ? あーはい。そうですね。薄っぺらい尻でいいなら好きなだけ揉んでください」  真顔でVサインを出す澄央がさりげなく九蔵の尻を揉むのは、いつものことである。  そして九蔵はそれを避けず、澄央もまた九蔵には遠慮しない。  友人が少ない……というか澄央しかいない九蔵なので、澄央のやりたいことはたいてい叶えようという甘やかしもある。 『はぁ〜っ? なんでボクは手を握っただけでさりげなく避けたくせにケツ揉まれてオーケーなんだよ〜っ』 「わっ、私の片手にはズーズィしかいないのに、九蔵と真木茄 澄央のスキンシップを見ることになるなんて……っ」 『納得いかねー! ボクもアレくんのケツ揉むしっ! 揉みしだくしっ!』 「うぅ、九蔵〜……っ」  そんな九蔵には、ニューイとズーズィの会話なんて聞こえていない。  こうして夕暮れの公園は、カオス空間と化していくのであった。   ◇ ◇ ◇ 「ズーズィ」 『あん?』  その後。ニューイを澄央に任せた九蔵は、ノーマルなネズミの姿になって去ろうとするズーズィを、こっそり呼び止めた。 『ケツ揉ませてくんねーアレくん。なんの用でーすか? 食っちまうぞ』 「あー、まぁ、ケツくらい揉んでいいから、頼みがあるっつーか」 『おっ? いーの? ナニナニ?』  どうやらスキンシップを避けまくったことを、まだ根に持っているらしい。  それを逆手にとってみると、ズーズィは明らかに興味津々とつぶらな瞳を輝かせた。かわいい。これならイケそうだ。  「ニューイのこと、あんまりイジメねーでくんねーかな」 『え? ……なんで?』  下手くそな笑顔をうかべ、九蔵はなるべくうまい言い方を探りながら言葉を選んで言った。

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