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「だから私は、九蔵のことを知りつくそうと思ったのだよ」 「うーわ」  ことの経緯を説明し終わり甘茶を飲むニューイへ、ズーズィはウゲ、と舌を出した。 「無自覚きっしょい。情報ごと所有したいっていうのがもうガチ重ぉ」 「ん?」 「なんでもにゃーよん」  軽く誤魔化された。  まぁいいかと納得する。  ズーズィは口が悪い悪魔だが、ニューイを嫌っていないので結局なにを言っても友人なのだ。それに九蔵の話をできるのは嬉しい。九蔵の素晴らしさは広めたい。 「でぇも、二人きりになるとクーにゃんがかわいくなるからボクのとこにエスケープとか言ってたくね?」 「だってチラチラと私を見ては、なぜか丸くなるんだぞ?」 「あはっ、なるんだ」 「私がむしろ落ち着かないのである。丸い九蔵はかいぐりたくなって……情報収集どころじゃないのだ……」 「はーん」  行儀悪く串焼きを食べながらスマホをトントンとつつくズーズィに、指をもじつかせてニューイは照れた。 「夜の餌やりの時、特に九蔵はかわいいな。私は九蔵に加減して触れるのが難しくなってきた」 「はいはい。『とびきりエッチに押し倒したらヤれそうだからカマトトぶってねーでケツで抱けハァト』っと……」 「九蔵は人間の男なのに、それはおかしな話な気がするよ。だけどわからない。九蔵は私に、初めてばかり感じさせるのだ」 「はーい今夜はヤれそうな悪魔めっけ〜『騎乗位しか勝たんハァト』も追加ネ〜」 「長く生きてはいるが、私はダメダメの落ちこぼれ悪魔……イチルと出会ってからも屋敷へ引きこもっていたので、情緒が変なのかもしれない」 「アハッ! やっばぁ〜! 根っこマジメちゃん弄り愉快〜! 天然エンドでムリ系だったらボクが犯そ〜」  目を合わせてもらえなければ会話も噛み合っていないが、これもいつものことだ。悩ましげなニューイの話を流してスマホを叩くズーズィには慣れている。  そのうち気が向けば話に反応してくれるので、食事をしながらモジモジと待つ。  ニューイが会話を辞めると、この友人は話をほじるのだ。どれだけ悪口を言われても嫌いにならないのは、結局構ってくれるからである。 「んでー? クーにゃんに欲情したって?」 「!? そんなこと言っていないのだ!」  数分後には目論見通りスマホをテーブルに置いたズーズィから話を掘り返され、ニューイは両手で大きくバツを作った。  酷い掘り返し方である。  ニヤニヤと笑うのはよしてほしい。 「わっ、私は九蔵に欲情なんてしないのである! 現にいつも九蔵を感じさせることに尽力していてだな……っ」 「尽力ぅ? 魂扱いてあのうまそーな匂い撒き散らさせてんでしょ〜? ニュっち的に極上の魂の色欲充満した部屋で添い寝とかやーいやーいムッツリスケベェ〜。しれっと堪能してんじゃーん」 「むっつり……? っじゃなくて、そもそもスケベじゃないのだよっ」 「アッハハッ! え〜なんで? 特等席でオ‪✕‬ニーガン見してんのに?」 「お、おな……っ」 「ホントだったら居候のニュっちは見れねーはずのクーにゃんのスケベ顔、見放題だよねぇ?」 「ああっ、あ、あれはだなっ……」 「スケベ顔見てんのにスケベじゃねーの? ねぇなーんで? なんでなんでなーんーでー? アヒャヒャヒャヒャッ!」  ──うぅ……九蔵、九蔵、助けてほしい……! ズーズィが私を虐めるのだ……!  イキイキと追い込むズーズィの猛攻を受けるニューイは、べそをかきながら九蔵にメッセージを送るのであった。

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