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今からでも服を着ようか?
しかし服を着た状態から誘惑となると脱ぐのに手間取ってグダグダするかもしれない。
しかもこの勢いを逃せば、自分はずっとニューイに好意をアピールできずにあわよくばを待って死ぬ気がする。
恋が実らず腐り落ちては背中を押してくれた澄央やズーズィにも申し訳ないだろう。
それになにより、体を使う誘惑は魂きっかけの悪魔を落とすのに有効的だ。
イチルと九蔵が決定的に違うものは、人格と容姿。わかりにくい人格より容姿を使って意識してもらえれば、そのまま魂ではなく九蔵自身を好きになってもらえる可能性がある。そのくらいちゃんとわかっている。だが恥ずかしい。死にたい。恥ずかしい。
グルグルグルグル。
いくら考えても、やはり今日はベストアピールデイだった。
そもそも尻込みし続けていたから三ヶ月も恋する乙女のように意識するだけしまくっていたわけで、これ以上はヘタレ過ぎる。
やはり、男を見せねば。
「風呂場で準備もしたわけだし……男、個々残 九蔵……腹を括ってケツを捧げろ……っ!」
「ただいまである……」
「ぉぅあッ!?」
タオルケットの中でモゴモゴと覚悟した途端──ガチャッ、と部屋のドアが開き、お待ちかねのニューイが帰ってきた。
ビックリした。
潜っているので気配に気がつかなかったらしい。ビックリした。
「お……おかえり」
「ごぼぼぼぼ」
九蔵がタオルケットの中から顔だけ出して返事をすると、そこには確かにニューイの姿があった。
気持ちテンションが低そうだが、ちゃんと帰ったあとはキッチンで手洗いうがいをする子犬な王子系イケメンだ。
「うぅ……酷い目にあったのだ……九蔵、どうしてメッセージを、……?」
支度を整えたニューイは九蔵の声が聞こえたほうへトコトコと歩み寄り、それから小首を傾げた。そしてベッドのそばにしゃがみこむと、眉を八の字に下げる。顔がいい。
「九蔵。またしても九蔵ムシになっているのかい? 今度はどうしてムシになったのかな」
キューンと鳴くニューイは、どうやら心配しているらしい。
ここ三ヶ月、ちょこちょこと九蔵ムシになる九蔵に慣れているニューイ。
けれど流石にタオルケットの中に引きこもっているのは気になったようだ。そうだろうとも。逆の立場なら気になる。が、今は気にしないでほしい。
「いや……まぁ、なんだ。俺だってたまにはムシになんだよ」
「むう。頻繁にである。理由を知りたいのだ。今は夏で、九蔵ムシがタオルケットに包まるのは初めてのことなのだぞ」
「うん。今の俺には適温なんです」
なんせパンイチだからな。
胸中で付け足し、理由を知りたがるニューイの追撃を誤魔化す。
「だけどタオルケットにそうも包まれていると、暑いのだ……タオルケットはお腹を隠すものなのだよ……」
「いやまぁ確かにそう言ったけども。……あー……その、なんだ」
しかしそれでもニューイが諦めないので、九蔵はしどろもどろと交換条件で釣ろうと試みた。
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