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さてはて。
あの問題発言から数日後。
なにを思ったか〝遊園地ダブルデート〟なるものにズーズィが誘ったならば、それはもう決定事項と同じである。
休みを合わせて、九蔵、ニューイ、澄央はあれよあれよと遊園地へ出かける運びとなった。
いやもうなにも合っていない。
なに一つ合っていない
誰一人付き合っていないのにダブルデートってなんだ。誰がデートしているんだ。これじゃあただの遠足じゃないか。
開幕からズキズキと頭の痛い九蔵だが、ニューイも澄央もズーズィの計画に文句を言わなかった。
むしろなにで丸め込まれたのか、二人とも機嫌のいいオーラを撒き散らしている。
いつの間にか澄央ともメル友になっていたコミュ力オバケのズーズィにかかればこんなものだ。ああ無常。
インドア派を自負する自分が、まさか遊園地ダブルデートなるものをすることになるとは。
思わなかったが──当日の朝。
「…………」
早起きをした九蔵は、せっせと四人分のお弁当を作っているのであった。
……いやもう、なにも言うまい。
ズーズィが言い出しっぺで、怠惰を極めている澄央がもの欲しげに九蔵を見つめた結果だ。
ニューイは「人間の料理はたいへんなのだぞ?」と九蔵を庇おうとしたが、澄央に「卵焼きをアホほど入れてもらうス」と言われて黙った。完敗か。
結果九蔵は、無言のままで重箱をおかずとおにぎりで埋め続けている。
まぁ、そう悪いとは思っていないが。
もしお弁当を作らなければリアル社長だったズーズィは園内の割高な食事を食べまくるだろうし、澄央は購入を面倒がってなにも食べない。
ニューイは言わずもがな。
アシストしなければろくに食べ物を買えないだろう。
それならば材料費は手間賃込みで多めに貰っているので、作った方が平和だと思う。持ち込みもオーケーだそうだ。
そう考えながら、九蔵はジュウゥゥ、といい音を出す玉子焼きを巻き巻きし、まな板の上へポンと転がす。
『これっくらいの。おべんとばっこに』
「…………」
『おーにぎーりおーにぎーりちょいとつーめて』
そんな九蔵の脳内には、部屋から漏れるご機嫌な歌声がエンドレスリピートでフォンフォンと届き続けていた。
『きざーみしょうがーにごーましーおふって』
「…………」
『たーまごっさん』
「…………」
『たーまごっさん』
「…………」
『たーまごっさん』
間違えた。
エンドレスたまごさんリピートだった。
「今のところおにぎりと玉子焼きしか入ってねー俺の推し兼想い悪魔の弁当箱……アホかわい過ぎるでしょうよ……」
玉子焼きが冷めるまでアスパラベーコン串を焼き、焼きを待つ間にウィンナーをタコさんカニさんに切る九蔵は、ジト目で虚空を睨んだ。
昨夜は寝つきが悪かったほど、ニューイは今日を楽しみにしていた。
お弁当のうたを教えてやってから、今朝はニコニコと小さな花が飛ぶ調子で歌っている。
嬉しすぎて悪魔化しているニューイは、時にフワフワと頭蓋骨を飛ばしつつ、九蔵と自分の二人分の荷物の準備をしているのだ。
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