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(けど、問題は悪魔とクリスマスって不謹慎じゃねーか案件だよな……)  九蔵はニューイに話を切り出せなかった大事な問題を思い出した。  もしクリスマスを祝うこと自体がよくないことなら、ニューイは嫌がるかもしれない。  星型の人参(ニューイがくりぬいた)を咀嚼しつつ、ニューイの反応を耳を大きくして伺う。 「てかメリクリ悪魔とか草ス。怨敵のバースデースよね? 聖なる夜ハピバとか腹立つでしょ。流れで浄化されそうスよ」 「全くハピバの気持ちとかありませーん。でも祝わなきゃ負けたっぽいじゃん。ムカつく」 「理解」 (うぉぉナイスナス……っ! 略してナス……っ!)  そんな九蔵に遠慮のない澄央のアシストがベストタイミングで入り、九蔵の脳内では「コンボが決まったァ!」とゲームの実況ボイスが再生された。  思わずちゃぶ台の下で、グッとガッツポーズをする。  ニューイに不思議がられたが曖昧に返事をし、しめじを口に入れて誤魔化した。  これでなんの憂いもない。不謹慎でもなく、ニューイに予定もない。  この調子なら男子鍋会が解散した後、ニューイをクリスマスデートに誘えるだろう。  ほくそ笑む九蔵。  もちろん表には出さない。 「悪魔は欲望の塊だかんね〜。エクソシストとか相手にすんの大変だけど、退治できるヤツはあんまいねぇし? 悪魔祓いって祓ってるだけなーの。ボクらが人間の世界に留まれないように追い出されるってカンジ? でも魂も欲望も食べらんなくなるからつまんねー。つまんねーから聖夜とか逆にハイテンションで祝ってやるってのが悪魔流だべ」 「いっスね。そういう仕返しは俺好みス」 「ふふふ、楽しいぞ。仮装なんかもするのだ。仮装したい悪魔をお砂糖と小麦粉とミルクなどでこねてオーブンでこんがり焼けば、ズーズィのように変身能力に長けていない悪魔も、好きな姿に仮装できるのである」  イケメン関連でなければ巧妙に本心を隠して平静を装う、九蔵の脳内劇場。  全く気づかないニューイはひたひたの麩を頬張り、のほほーんとした笑顔で澄央に悪魔式のクリスマスを語った。 「ニューイもクリスマス賛成なんスか」 「もちろんだとも。クリスマスは悪魔にとってお祭りだからね。一夜限りのディナーバイキングだよ」 「バイキング? 食べ放題。食べ放題は大好きス。時間制限デカ盛りチャレンジに失敗したことねー俺からすると天国ス」  食べ放題と聞いて真顔のまま目を輝かせる澄央は、興味津々だ。  悪魔の食べ物でも澄央ならお腹いっぱい遠慮なく食べるだろう。過激派ハラペコくんに世界の隔たりはない。  そんな澄央とニコニコ話すニューイは「よし」と言って指を一本立て、澄央ににっこりと満面の笑みを向ける。 「なら、私の権限で招待状を出そうか? 二十三日と二十四日──真木茄 澄央と九蔵を悪魔城で行われるクリスマスパーティーに招待するのだ!」 「え゛」  九蔵は濁点のついた呻き声を上げた。  そんな九蔵には当然気づかず、ニューイの提案に「は? ニュっちのくせに名案じゃんお役立ちかよ」と親指を立てるズーズィ。 「ココさんも一緒でズーズィ込みならお邪魔じゃねースね。クリパバイキング最高」と親指を立てる澄央。  乗り気な友人二人に続き、柔らかな朝日のごとく微笑む恋人の期待に満ちた瞳に映しだされて、「クリスマスだし二人きりでクソほどイチャイチャしましょ」と言える九蔵がいるだろうか。  答えは──否! 「九蔵、一緒にクリスマスパーティーに行かないかい?」 「行っ……くかぁ、悪魔式クリパ……!」  流れに身を任せて滝つぼに落っこちた九蔵は、しめじをゴクリと飲み込み、親指を突き出した。  ズーズィと澄央のおかげで労せず情報を得られて余裕ぶっていたが、そのツケをまさかの恋人であるニューイに回収された九蔵。  大事なことは、お早めに。  自分できちんと伝えましょう。

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