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優しい朝
——この優しい時間が好きだった。
吸い込む空気に当たり前に君の香りが混ざり込む。
手を伸ばさなくても、ほんの少し顔を傾けただけで、鼻先が君の柔らかな髪に触れる。小さな寝息が首にかかるのが少しくすぐったくて、僕の方が肩を揺らしてしまう。それでも離れたいなんてちっとも思えなくて、君の感触をもっと確かめたくなって、僕はシーツの間の体をそっと君の方へと動かす。
「……ん」
わずかに漏れた君の声ですら僕の中に閉じ込めておきたくて、僕はその丸い頬に手を重ねてそっと顔を近づける。ふわりと触れた先で、小さく揺れた唇の柔らかさがゆっくりと僕の中に染み込んでいく。その感覚を何度でも味わいたくて、何度でも思い出したくて、軽く触れるだけだったはずなのに、次第にその熱すら飲み込んでしまうほど長く強くなっていく。
「ん、……んん‼」
わずかにできた隙間で吐き出された息は熱く、その呼吸は乱れていた。
「ちょ、何⁇」
君は驚いたように目を丸くしながらも、怒ればいいのかわからずに戸惑った表情のまま、その小さな耳までも赤く染めている。
「……可愛くて」
「っ、あーもう、なんでそういうこと言うんだよぉ」
そう言って君は両手で顔を覆って隠してしまうけれど、そんな仕草ひとつでさえ、今の僕には愛しくてたまらない。だから、どうしても言葉が零れてしまう。
「ふふ、やっぱり可愛い」
君のその手の上からでさえ、僕はもう触れずにはいられないから。
「あ、もう、やめ」
くすぐったさに耐えきれなくなった君がその両手を開いてくれるなら、僕はもっと君の深いところに行きたくなる。
「無理、もう止められない」
「!!……ちょ、どこ触って……ん、んん」
——僕は、君となら何度だってこの朝を味わいたいんだ。
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