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第1話
少子化問題、孤独死による人口が著しく減少し、政府は結婚を義務とかした。
三十歳となるまでに結婚をしなければ、政府が結婚相手を勝手に決めてしまうその法律は、結婚したいけれどできない人にとって喜ばしいものかもしれないが、どちらかというと結婚をしたくない俺、春山三咲にとって最低で最悪な法律であった。
「……こりないな」
会社から帰ってきて、郵便受けに入っていた赤い封書を眺めては顔をしかめた。その法律のためにできた結び課からの封書は、半年前から送られてきているが中身すらあけず、ずっと無視を続けていた。
なにがあっても結婚をしないと決めている、たとえ世界で1番の美女が相手でも、たとえ明日世界が終わろうとも結婚はしない、ならば中身を読んでも意味がないだろう。
何故かというと、俺にはすでに嫁がいるから。
「あぁ、今日もルナちゃんはかわいいよぉおおお。明日は休みだしずっと一緒にいてあげるからね」
パソコン画面に映る、銀髪美少女のイラストがゆるゆると動く。照れながらも嬉しそうに笑う彼女、ルナちゃんに俺は足をジタバタとさせ、デスクに突っ伏した。
俺には、嫁がいる。
嫁は、パソコン画面の中に存在している。だから、俺は結婚などしないのだ。
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