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第1話
「よくわからないですが……僕たち、結婚することになりました!」
「……ました」
俺は、会社の後輩と結婚式の予行練習をしていた。
「先輩、もうちょっと大きな声でお願いしますよ。それじゃ、やる気ないの、バレバレですよ」
後輩が、俺のわき腹を、ひじでつつく。
「『よくわからないですが』は、いらないですね」
結婚式場のスタッフのきびしい指導が入る。
「ほら、指導が入っちゃったじゃないですか」
「言ったのはお前だろ」
ほんとうに、どうしてこうなってしまったのだろうか。
「はい、もっとにこやかに」
事前に写真撮影もされるらしい。カメラマンがつきっきりだ。
俺は、白いタキシードを着せられている。それはまだいいとして、後輩は、もっと悲惨なことに、なぜかウエディングドレスを着せられている。
「あの、うるさいスタッフのババアと結婚させられる方がまだマシだぜ」
「しっ、聞こえますよ」
後輩が、人差し指を立てる。
チャペルの祭壇の前で、俺たちは、永遠の愛を誓わせられるのだ。神よ!
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