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(06) 美雪 1 私を見て
ここは開院前のとあるクリニック。
一人の男が入り口のドアに手を掛けた。
準備に動き回っていた看護師達は手をとめてその男にお辞儀をする。
「おはようございます! 院長!」
その男は、さり気無く片手をスッと上げる。
そして、一同に軽く会釈をした。
「おはよう……」
低くて通る声。
そして、スーツの上着を脱ぎながらロッカー室へと向かった。
その男の姿が見えなくなると、看護師達は、興奮気味に話し出す。
「今日の院長もカッコいいわ……」
「ああ……やっぱりステキよね……」
「あのクールな表情、ゾクゾクしちゃう」
女性スタッフ達の憧れの的とも言うべきその男。
名前は、渋谷 美雪 。年齢は30才。
若くして父よりこの整形外科クリニック受け継いだ開業医である。
勤務医3名と看護スタッフ10名程を抱えるこの病院は、立地の良さもさることながら、今風のお洒落な待合室に最新の予約受付システム、それに休日診療を積極的に行うなど、患者に寄り添うサービスが充実した人気のクリニックである。
当然、医師達の腕もよく、親身になって対応してくれるとのことで老若男女問わず評判が良く、リピーター率が高い。
実の所、美男医師の美雪の診察が目当てという患者も少なくない。
その美雪の容姿は、長身に広い肩幅、長い足。
ブランドのスーツが良く似合うスラっとした体型。
顔は、キリっとした眉に、奥二重。鼻筋が通り、全体的に小顔。
それに、特徴的な黒縁メガネ。
髪は、大人風ツーブロックで前髪は長め。
口数は少なく一見無愛想なのだが、ひとたび笑うと目尻が下がり無垢な優しい表情を見せる。
まさしくクール&ギャップのイケメンである。
さて、その日も、いつものように美雪は、スタッフ達に指示を与えると、自分専用の診察室で開院前のひとときを過ごしていた。
片手にはコーヒーカップ。
それを口に運びながら、モニターで待合室の様子をぼぉっと眺める。
そして、そこに映る患者達の姿を見て、「今日も忙しそうだな……」と嬉しいとも悲しいとも取れる笑みを浮かべるのだ。
それが美雪の日課なのだが、その日はいつもと違っていた。
ふとモニターに映る若い大柄な男の事が、何故か気になって仕方なかったのだ。
コーヒーカップを置いてじっと眺める。
その男は、とても健康そうに見え、患者ではないように感じた。
常連のご老人達の輪に入り込み、何やら楽しそうに談笑する。
「誰かの付き添いか?」
美雪はそう思って尚もその男を見つめた。
ご老人との会話の中で、時折、なんとも言えない、いい笑顔を見せる。
美雪の目には、そこだけパッと花が咲いたように見えた。
「いい男だな……」
美雪はうっとりとした表情でつぶやく。
目線は、自然と男の股間あたりで止まった。
(いいものを持ってそうだな……)
そんな風に思った矢先、モニター越しその男と目が合った。
何でも見透かすような鋭い目つき。
美雪は慌ててすぐに目を逸らした。
(な、なんだ? どうしてこっちを見た?)
胸がざわつく。
再びモニターに目をやると、その男はまだこっちを見ていた。
今度は、ニッと微笑みを浮かべた。
(わ、笑った? 私にか?)
胸がドキドキして体温が上昇するのを感じた。
(な、なんだ……この感じ)
美雪は、胸に手をやり、胸の鼓動を抑える。
はぁー、はぁー、と弾む息を整えながら再度モニターを見た。
すると、そこにはもう男の姿はなかった。
全身の力が一気に抜けて、椅子にもたれ込んだ。
(……一体、何者だったんだ? あの男は……)
美雪は目を閉じて深呼吸をした。
すっと冷静になっていく。
(くそっ……あんな男に一瞬でも心をかき乱されるとは……私としたことが……)
その時、受付スタッフによる案内放送が流れた。
『診療時間になりました。お名前を呼ばれた方は……』
いつの間にか開院時間。
美雪は、軽く伸びをすると、その顔はすでに仕事をする男の凛とした顔になっていた。
****
診療時間後のクリニック。
誰もいない真っ暗な空間。
明かりが灯っているのは、診察室のPCのモニターの光だけ。
そのモニターの前に、美雪の姿が有った。
美雪は、三脚のカメラ位置を調整すると、マウスのボタンをカチッと押した。
すると、画面は切り替わり、ストリーミング配信準備のサインが出た。
美雪は、手慣れた仕草で茶髪のウィッグを着用し、眼鏡を外してカメラの前に立つ。
目を閉じて大きく深呼吸。
すると表情は別人のように変化した。
それは、目がキラキラとした10代の青年のような顔つき。
健康的で明るい表情。
普段の美雪とは全くの正反対。
そして、モニター表示が『LIVE』に変わると、おもむろに服を脱ぎ始めた。
最初は白衣。
そして、ネクタイにYシャツ。
ベルト、ズボン。
それはストリッパーのように、艶めかしく勿体ぶりながら剥ぎ取っていく。
パソコンの画面上では、それに合わせコメントが流れ始める。
『いいよ!』
『可愛い! 可愛い!』
『はぁ、はぁ』
美雪は、脱ぎながらそれを遠目で見てほくそ笑む。
(そうだ、よく見ろ。そして、私の美しい体を崇めろ! はははは)
美雪の密かな趣味。
それはゲイ愛好家向けのヌード配信であった……。
****
下着姿となった美雪は、誘うような動きで視聴者達を挑発する。
『はやく、はやく!』
『可愛いよ!』
『もっと、脱いで!』
コメントの嵐。
そして、ここからが美雪の人気配信の目玉。
美雪は、Tシャツをぎゅっ、ぎゅっといやらしく脱いで、それを手から滑り落とすように放った。
そこに現れたのは、亀甲縛りで縛られた白い肌の上半身。
ピンク色の乳首は、既に固く勃起し平な男の胸からツンと前に突きだしている。
視聴者数はぐんぐん伸びる。
医師の自縛ヌードともなると、なかなかニッチな分野。
しかも本物なのだが、見た目の若さからか、視聴者は誰一人としてそうは信じていないだろう。
美雪は、自分の破廉恥な姿を見ず知らずの男達にいらやしい目で見られているかと想像すると、たまらなく感じてしまう。
気持ちが高まり、絵も言えぬ快感が押し寄せてくる。
(はぁ、はぁ、ゾクゾクして堪らないっ……これだから配信はやめられない)
いよいよ、最後の一枚。
美雪は後ろ向きになると、ボクサーパンツをすっと下ろした。
すると、そこには綺麗な丸いお尻。
そして、その割れ目には……。
視聴者の興奮も最高潮に達する。
コメントの流れは止まることを知らない。
なぜなら、その割れ目にはなんとアナルプラグがずっぽりと挟まっていたのだ。
局部をギリギリ隠しつつ、それでいて最高にいやらしい絵。
美雪も超絶に興奮して、息を、はぁ、はぁ、と弾ませた。
(さぁ見ろ、私のいやらしい姿を……それで、皆、私をオカズにオナニーするんだ……ああ、欲しい、男達の白い液。さぁ、私に掛けてみろ、ほら、早く!)
見知らぬ男達の精子まみれになる自分を想像して、うっとり顔をする美雪。
そんな潤んだ目と頬をうっすら赤らめた恥じらいの表情が、視聴者達の性欲をさらに掻き立てていく。
****
こうやって密かに性欲を爆発させる美雪なのだが、実は、この自縛もアナルプラグも仕事中からずっとしているのだ。
もちろん、それはスタッフだって患者だって誰一人として知らない。
日中、患者に親身になって話しかけている最中も、アナルからの刺激や束縛の締め付けの快感が美雪を常に襲っている。
そんな中でも、表情は一切変えずに、
『お大事にしてください』
『お加減はいかがですか?』
と、天使のような笑みで問いかけているのだ。
それは、いつ見つかるか分からない、という緊張感……。
見つかった時に味わうだろう絶望感……。
それを想像しただけで、体の芯からゾクゾクしてしまう。
快感の極地。
そう、美雪は正真正銘のドMなのだ。
****
美雪は、コメント欄が落ち着きを見せた頃、次なるサプライズを投下する。
ぱっと、反転し表面を向く。
そして、股間に置いた手を徐々にずらしていく。
一瞬、コメント欄が停止する。
それは、視聴者達が固唾を飲んで注目しているからだ。
手を除けて現れたのは……。
綺麗に赤く染まった亀頭。
そして、ガッチガチにフル勃起した立派な陰茎。
『可愛いいよ!』
『最高!』
『舐めさせて!』
一斉に賞賛の声が上がった。
美雪は、満足そうに微笑む。
(そうだ。もっと、もっと、いやらしい目を私を見るんだ……ああ、感じる、感じるぞ)
美雪は、サービス精神全開で、体をくねくねと動かし視聴者達を挑発していく。
既にコメント欄の流れを追うのは難しい状態。
賛美のメッセージで溢れかえる。
さて、美雪の体だが、全身を通してみると、男にしては毛は薄くすべすべしてなめらかな肌。
成長期の男の子のようなゴツゴツし過ぎない骨格に、細マッチョとは言わないまでも、ある程度の筋肉もあり、バランスの取れた美しい男の体といえる。
それに若く整った可愛いらしい顔とくれば国内外問わず人気というのも頷けるだろう。
チャンネル登録者数から言っても、ゲイだけでなく、おそらくノンケからも一定数のファンが付いているのは間違いない。
それが美雪の背徳的興奮をより高めている。
****
ところで、美雪は今日はいつになく興奮していた。
原因は分かっている。
今日、クリニックに来た男。
あの男を見てからだ。
いつの間にか姿を消していたのだが、あの男の瞳は脳裏に焼き付いていた。
優しい朗らかな目つき。
かと思いきや、鷹が得物を捉えるような鋭い目。
あの、シャープな目で自分の事を蔑んできたらどうだろうか?
美雪は、それを考えると、快感が全身を包み込み、悶え苦しむくらい興奮してしまう。
(ああ、だめだ……あの男の事を考えると……アナルがうずく……)
いつものヌード配信だったらこの辺で終了となる。
しかし、今日の美雪は自分を見失う程興奮していた。
美雪は、つい配信中である事を忘れ、あの男の事で頭をいっぱいにさせていた。
欲望のままに体が動く。
美雪はおもむろに、ぬるっとアナルプラグを抜いたのだ……。
配信先では思わぬサプライズに沸く。
画面に映る美雪のお尻の穴は、美しい桜色をしている。
しかし、それはいやらしい生き物のようヒクつき、もの欲しそうに口を開けて誘ってくる。
欲しいもの……それは男の物であるのは、誰の目にも明らか。
モニターの前の視聴者達は、各々がそこに自分のペニスを挿れようとしごきだす。
何万人の男達が一斉に美雪を犯そうとしている。
それはまさに美雪が最高に興奮する瞬間なのだが……。
もはや美雪は画面を見ていない。
我を忘れ、あの男の事を想像していた。
あの男のペニス。
きっとあの体格からして、相当なものだろう。
それが、自分のアナルに入ってくる。
この拡張気味のアナルだってギチギチになるだろう。
美雪は、指をたっぷり唾液で湿らせ自分のアナルに容赦なく突っ込んで行く。
(ああ、最高だ……気持ちよくて変になる……たまらない……)
はぁ、はぁ、と息を荒げながら、美雪は自分の指をあの男のペニスに見立て出入りさせる。
開発済みの前立腺がジンジンと熱くなる。
そして、奥の気持ちのいい部分もトロトロになって男の物を欲しがる。
美雪の頭の中では、あの男に犯され続けている。
(……この擦り続ける自分の指は、あの男のいちもつ。だ、だめだ……いや、もっと、もっと奥まで……)
脳裏には自分の事を蔑むあの瞳。
『このドMのド変態が!』
(あぁ、いくっ……)
体が弓なりにしなるほどのメスイキ。
そして、同時にペニスの先からは精液がぴゅっ、ぴゅっと吹き出した。
そして、我慢して抑えていた喘ぎ声はいつの間にか叫び声となり、マイクの音量がゲージマックスまで振り切っていた……。
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