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4. 風の音

真夜中、急に外で、ざざーん、ざん、ざん。と馴染みのない音がする。 動くのをやめると、ひざまずいて上半身をソファーに預けた吉村さんが振り向いた。 「風。風で木が揺れて、あんな音がする」 「騒がしいですね」 「北風だと、変な音になる」 薄闇に浮かび上がる横顔は、小さく、壊れやすいように見えて、俺は息を整えながら、 「大丈夫でしょうか」 と尋ねた。吉村さんはさらに体を捻って、俺を見て笑った。 「何がでしょうか」 「いや……痛くない?」 彼の腰を支えていた腕を下ろして背中に覆いかぶさると、中が締め付けられ、俺は堪えて、軽く突き入れながら肩甲骨のあたりにキスをした。 吉村さんは小さく声を上げて、腰を押し付けてくる。 「気持ちいい?」 汗の粒が唇にいくつも当たる。舌を出して舐め取り、吉村さんが呻くのを聞きながら、前に手を回した。 うん、と言ったのかどうか。淡々と風の音の解説をされると落ち着かない。 彼のものをゆっくり擦りながら、耳の後ろに顔を埋める。くすぐったそうに逃げようとするのを押さえ込むと、南、と呼ばれた。普段通りのどこか投げやりな呼び方で。 「はい」 「いいけど、膝が限界」 「あ、あ。早く言ってくださいよ」 「今が限界」 俺は腰を引き、吉村さんは床に敷いたタオルの上にへたり込んで息を吐いてから、くるりと俺の方に向き直った。 顔を近づけると、軽く唇を合わせてくれる。 「膝、大丈夫ですか」 彼が立てた両膝に、両手を当てる。 「皿は無事だよ。あのままやってると砕けたかも」 「嘘でしょ」 「タオルが薄すぎた」 ソファーで始めたのは俺なので、ごめんなさい、と口の中で謝った。細い肩に触れると、汗が冷えている。彼は俺の首に腕を回してきた。 窓の外から、ざんざんと不穏な音がした。 「吉村さん、続きしたい?」 俺が耳に唇を近づけて聞くと、吉村さんはまた肩をすくめた。 「くすぐったい」 「くすぐったいですか」 もう一度耳の中に声を吹き込んだ。彼は声にならない悲鳴を喉の奥であげて離れようとする。 動けないように抱きしめながら、舌を耳全体に押しつけて舐め上げる。 「や、あ」 「好きなくせに、耳」 そう言うと、彼はふと力を抜き、腕を緩めた俺の顔を見て、しばらく黙っていた。 「どうしたんです」 「何でもない。お前がいやじゃなければ、ベッドに行こ」 彼はソファーから床に落ちかかったタオルを手に取って、立ち上がった。 「いやなわけない」 「そっか?お前、この部屋でしたがるから」 後から思い出してみると、最初の一回を除いて、あとはソファーでやった。その時は四回めだった。 俺は、二階にある吉村さんの寝室が好きではなかった。

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