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第3話

ソラは恭一がバイトを終え、店から出てくるのを待ち構えている。 緊張の面持ちだ。 「...来た」 「お疲れ様でーす、あれ?君は」 「特徴のないソラです」 「どうしたの?」 「...じゃんけんに負けました」 恭一が首を傾げていると続けた。 「明日の土曜日、みんなでケーキ焼きます、食べに来てください。て伝えろ、て2人に言われました」 恭一が笑う。 「もう遅いし、送るよ」 「...ありがとうございます」 恭一は自転車を押しながら、歩道の反対側をソラを守るように歩いた。 「もうすぐ着きます、ここです」 「この一軒家?」 「はい。10時で大丈夫ですか。て聞いてこい、て言われました」 「大丈夫だよ、10時だね」 「はい」 ソラは自転車に乗る恭一の後ろ姿を見送り、部屋に戻った。 「どうだったソラ」 パタン、ソラが座り込んだ。 「き、緊張した...」 「大丈夫か、ソラ」 リクが駆け寄り背中を撫でてやった。 3つ子の長男のリクは実は一番、兄弟を思いやるところがある。 特に末っ子のソラはあがり症で3人の中でも病弱だ。 「だ、大丈夫...で、ケーキは」 「スポンジは出来たからあとはクリームだけ」 カイがベッドに座ったまま、ソラに説明した。 朝から3人は大忙しだ。 ケーキのデコレーションが済み、あとは恭一が来るのみ。 父はゴルフ、母はパートでいない。 (ピンポーン) チャイムの音にリクとカイは駆け寄った。 「恭一さん!いらっしゃい!」 満面の笑みの2人は見事にハモった。 「こんにちは、これ、お土産。大した物じゃないけど」 「ありがとうございます」 リクはビニール袋を受け取った。 「どうぞ上がってください」 カイがスリッパを差し出す。 ソラはキッチンで紅茶をいれていた。 リビングに恭一は通され、目を見開いた。 「これ、君たちが作ったの?」 「ケーキが好きだと聞いてたので、リクから」 カイがホールケーキを切り分ける。 紅茶をトレイに運ぶソラがどうも危なっかしい。 「貸せよ。ふらふらして危ない」 リクがトレイをソラから奪った。 「ありがとう...ごめん」 ケーキを前に同じ顔をした3人に囲まれて恭一は、 「イリュージョンみたいだね」 「なんですか?」 首を傾げる3人にいや、とケーキにフォークを差し入れ、頬張った。 「美味しい」 「よかった」 3人が綻んだ。 「そうだ、お礼に、これ」 恭一は映画の招待券を3人に手渡した。 「えっ、お土産まで頂いたのに、なんだか申し訳ないです」 リクが言うと、 「お客さんから頂いたんだ。よかったら見に行ってよ。期日も近いからなるべく急いでね」 「はい、ありがとうございます」 またもや3人はハモった。

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