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第9話
3人はフランクフルトを3本買って帰った。
ソラだけは、
「...マスタード抜きで」
と言うので、ソラの分のマスタードの小袋は抜いてあげた。
「はああ...」
重いため息をつき、カウンターにへばり込む恭一。
「どうした?」
1人では心苦しく、涼介に打ち明けた。
「へえ!いいじゃん!3人ともべっぴんだし」
「べっぴん、て...そりゃ、可愛いとは思うけどさ」
「何を気にしてんの」
「考えてみたら、ちんこ付いてんだぞ、俺と同じ、あ、お前もか」
じっと涼介が恭一を見据える。
「なんだよ」
「いちいち、そんなこと考えてたのか」
「そんなことって」
「3人とも女の子みたいじゃん?それにほら、穴があるだろ、穴が」
「穴?...本気で言ってる?お前」
「本気も本気。俺なら問題なくあの子らを抱けるね」
また、恭一は深いため息をついた。
「あの子ら、て。3人に告られたんだぞ、同じ顔の3人に」
「だから、どれでもいいじゃん、可愛いんだから」
「どれでもって」
「あ!なんなら3人とも頂いちゃうとか」
恭一が軽蔑の眼差しで涼介を見る。
「サイテーだな、お前」
「そっか?」
「話しにならない。お前に相談したのが馬鹿だったわ」
レジに客が来て、咄嗟に、恭一は、いらっしゃいませ!と満面の笑みに変えた。
リクは1人でコンビニに向かい、買い物かごを手に取った。
プリン...ヨーグルト、そうだ、ポカリも要るな、スポーツドリンクに飲むゼリー...。
買い物かごを恭一が立っているレジに置いた。
「こんにちは。恭一さん」
「こ、こんにちは。今日は1人?」
「はい」
確かほくろの位置で見分けがつくんだったな...と、レジを打ちながら、リクの顔をまじまじと眺めた。
「どうしました?」
「あ、いや、えーっと、リク、くん?違ったらごめん」
「ピンポーン。正解です」
リクがあっけらかんと笑う。
「誰か風邪でも引いたの?」
「はい。ソラが。あいつ、3人の中で一番、体が弱いんです」
「そうなんだ...」
ふと、お見舞い品を届けに行った際のキスシーン、3人にとっては、おまじないの儀式が脳裏を掠めた。
思わず、リクの唇に視線が落ちる。
(...艶っぽい、色気がある唇だな)
この唇に触れたらどんな感じになるんだろう....みだらな想像を慌てて恭一は一瞬で振り払う。
「そ、そういえば、こないだも風邪引いていたみたいだもんな」
振り払うように恭一は言う。
「はい。結局、3人全員、風邪引きましたけど、移しあったら案外、早く治りました」
柔らかい笑顔で恭一を見上げる。
(移しあってたのか...)
納得がいくような、いかないような複雑な思いだ。
「あ、えっと、お大事にね」
「はい。ソラに伝えておきます」
そうして、買い物袋をぶら下げて店を後にするリクの背中を見送った。
「やっぱり可愛いな、あの子にしたら?」
横から涼介がしゃしゃり出る。
「簡単に言うなよ」
恭一は涼介を振り払い、レジ待ちのお客さんに笑顔を向けた。
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