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第22話 泉

 美智さんの話は30分程度で終わった。   内容が濃かったので授業一時間分以上頭を使って疲れた。自分の将来が決まるかもしれない内容だから授業より真面目に聴いていたんだろう。  この後はする事も用事もないので、今日から昼間は修行ということで泉に行こうと思う。  自分自身のハッキリしない力。泉に通えば少しずつ分かってくるのかもしれない。美智さんと話した部屋から自分の部屋まで迷わずたどり着く事が出来た。  それから隣の部屋は貴嶺さんの部屋。  その向こうに向きが違う扉。あそこがきっと泉への通路なのだろう。  貴嶺さんが持ってきてくれた服に着替え、運よく入ってたスニーカーを持つ。運よくじゃなく、僕が泉に行くことになるだろうって分かってたから入れておいてくれたのか。片手にスニーカーを持って、その扉を開けると、中は真っ暗だった。  元来た廊下からの薄明かりで電気のスイッチのようなものが見えたので押してみる。廊下全体に定間隔でぶら下がっている電球に明かりが点いた。真っ直ぐの廊下を歩いていくと、突き当たりに上り階段があった。  階段を一歩一歩確実に35段程上がって、天井部分にあった扉に手をかけると、上に向かって開いた。自然の光の方へ這い出ていくと、そこはもう泉の脇だった。  自然の中だから当たり前なんだけど、空気が澄んでいる。人の住む世界ではなくて、動物たちや精霊が出てきそうな空気だ。泉の周りをゆっくり歩き、一周したところで元の扉の近くにあったベンチに腰かけた。  修行って、どうすればいいんだろう。この場所にいるだけで少しずつ変化してくるのかな。分からないままにぼんやりと泉を眺め続けた。  太陽が真上にきていたから、お昼の時間にも集まって食べるのだったと思い出し、引き返した。  昼食を食べたらまたその足で泉に向かった。この場所は、晴空がいなくて寂しいけれど、その分他の同級生とかもいないのは少し気が楽だなって思った。図書室も気になったけど、今日はこの場所に居たくて夕飯の時間になるまで泉の側に居た。夕飯を食べたら自室へ。  泉で今日は誰にも、動物にもナニカにも会わなかったな…。そのうち誰かしらに出会う時も来るんだろうか。緊張が少し解け、馴れない家での疲れが出て早くにウトウトしたらしい。 「寝てるのか?」 上からの声で意識がハッキリした。 「あっ、いえ。大丈夫です」 「まぁ、環境変わったから疲れたよな。上も営業始まったから、俺はお前の下準備手伝ってやろうと思って」 「営業?下準備?」 「あれ?美智さんから聞いてねーのか?まっ、いっか。始めるから下だけ脱げよ」 貴嶺さんが手に持っていたのは、化粧品のボトルのような物と、男性器に似ている物だった。

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