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開幕01
僕はもう、長くはないのだろうと力なく笑った。
のしかかる重みは向こうも体力の限界なのだろう。僕の力は人間には猛毒なんだから。
特にこいつはもう、正気では居られないだろう。再び中に出され不快感を覚えた。ついで、吐血。こみ上げる血液は赤黒い。精を放ったこいつは僕が撒き散らす血液にも目をくれずまた動きだした。
ようやく僕もこの世界から消えていくのかと思えば、何も考えなくてもいいやと体の力をぬいた。
正直なところよくここまで生き延びれたなとおもう。
とっくの昔に僕という存在は死んでいたはずだった。僕は、生みの母親を殺した殺人鬼なのだから。
憧れたこともあった。家族の作った温かい手料理と笑顔で他愛もない食事をしながら過ごす日々は手に入れる事は出来なかった。
少しでも誰かの役に立てただろうか。
沸々と湧き上がる疑問は殴られ、消えていく。顔はもう腫れ上がってしまって、きっと誰もわからないだろうな僕の事。
僕のような者は生きる事は許されないのだ。
意識が遠のいていく。窓の外に見える鴉が羨ましくて力なく腕を伸ばした。
伸ばした腕は逆方向に捻じ曲げられ体を殴りつけられる。あぁ、残念だ。鴉は嘲笑うかのように一つ鳴くと飛び去っていった。
もし、願わくば──次に生きる時は温かい、スープを誰かと共に──
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