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14.ツッコミ不在が地味に墓穴

「カイエ~、こっちこっち。どこ行ってたの?」  遅れて食堂に行くと、もう人もまばらだった。騎士団の昼の休憩時間は二時間ある。兵士の時は一時間もなかった。そう考えると兵士の方がきついと思われるかもしれないが、有事は騎士が先陣を切って戦う。災害時の復旧工事などは兵士が行うが、それによって発生する魔物退治などは騎士団が行うのだ。とはいえ、王が降臨されてからは災害らしい災害も発生はしていない。ただ、災害が起こらなくなると魔物が増えるとは聞いている。世界はいろいろ複雑なようである。  とりあえずは昼ご飯だ。バイキング形式な為か、めぼしいものはほぼなくなっていた。あまり人気がなかったのか残っていた肉野菜炒め(野菜が多く残っていた)を取り、パンを取ってリックのところへ行く。 「遅かったじゃん。どこ行ってたの?」 「ああ、医務室に」 「ええ? カイエどっか悪いの!? 僕また回復魔法かけようか?」 「違う」  回復魔法も体力回復の魔法も使えるリックは絶対おかしいと思う。ちらほらいる奴らがリックの言を聞いてなのかざわざわした。まぁ騎士はだいたい魔法が使える奴が多いが、別の種族でもなければそんなにあれもこれも使えるものではないし。って、リックは巨人族の混血だったか。それならまぁ使えても……。  ……またなんか悲しくなってきた。どーせ俺は切り傷が治せる程度の魔法しか使えませんよーだ……。 「カイエ?」 「ああ……ちょっと、後で話すわ」 「……ここではちょっとってこと?」 「ああ。……夜、来るだろ?」  声を潜める。 「うん! もちろん!」  声を潜めた意味がなかった。リックがにこにこしている。とてもわかりやすい。しっかり食べて午後は別れた。俺は王城内の巡回に、リックは王城の外の巡回に行ったようだった。  んで、夜である。夕飯も一緒だった。今日はナツとよく一緒にいるレイヤとリュウも同席した。ちなみにナツは早々に食べ終えて出かけたらしい。また今夜も部屋にいないようだ。 「ナツって毎晩どこに行ってるんだ? お前らもだけど」 「天使さまのところだ。先生んちに天使さまがいてよ。超かわいいんだよなー」  レイヤが答えた。軽い。 「え? お前らも毎晩?」 「ああ、先生のところの天使さまは頑丈だからな。毎晩かわいがってるんだがそれでも普段は裏の森で木こりやってるんだぜ。信じられねーだろ?」  ……イマイチ天使のイメージとはかみ合わない天使さまのようである。 「一応前に連れてきたことはあるんだけどな。でも一年以上前だしなー」 「……そんなの覚えてるわけねーじゃん……」 「だよなー」  ハハハッと笑って、リュウとレイヤが席を立った。 「じゃ、またなー」  手を軽く上げて挨拶をする。何せ口の中には食べ物が入っていたので。食べながらしゃべると親にものすごく怒られたのだ。おかげで口に物が入っている時は口を開けられない。 「先生とー、リュウとナツとレイヤ……四対一? なんか巨人族の夫婦みたいだなー」  リックがのん気に言う。俺は思わず噴きそうになった。そうだ、コイツは混血とはいえ異種族だった。 「……俺は嫌だぞ」 「僕だってやだよ。カイエのことは独占したい!」 「黙れ」  こんなみんながいるところで言うな。 「おー、リックがんばれよー」 「がんばれー!」 「うん、僕がんばるよっ!」 「がんばらなくていいっ!」  同僚たちはとても楽しそうだ。そういえば賭けとかやっていると言っていたような気がする。そんなヒマがあるならとっとと恋人でも捕まえればいいのにと思ってしまう。……まぁそう簡単に見つかるものでもないんだけどな……。  夕飯を食べていただけなのになんでこんなに疲れているのか。 「部屋、入れてくれるんだよね?」 「……ああ」  正直あんまり入れたくはない。だってすごく恥ずかしい思いをするから。  でも先生は性欲処理に使ってやれって言ってたし。 「じゃあすぐに行くから! シャワーは浴びておいてもいいよ! 浴びなくてもいいけど!」 「声が大きい!」  デリカシーがないのが困りものだ。俺は部屋に戻って鍵をかけた。かけておかないと同僚たちが普通に入ってきたりするので。兵士の頃からのクセなのかどうもデリカシーがない。  シャワーを浴びながら手早く頭と身体を洗う。俺の魔力だと10分ぐらいしかお湯が出せないから効率よく行う必要がある。ちんちんは念入りに洗う。尻……はどうしようと思ったが、一応洗えるところだけ洗っておいた。  こういう時ってどういう恰好で待っているのが一番いいんだろうか……。そう思いながら部屋着を着て、俺はリックが来るのを待った。  やがてノックされ、 「カイエ~、開けて~」  リックの声がして、俺はほっとした。  ドアを開けると、リックが何やら持ってきたようだった。 「なんだそれは」 「お楽しみ~」 「?」  なんだろうと思ったが、入口で問答してても始まらないのでリックを部屋に入れた。それを後悔することになるとは夢にも思わず……。  飲み物は水差しがあるし、と再確認している俺の後ろで、リックは嬉々として持ってきた袋から何やら出し始めた。  また俺が延々喘がされる夜の始まりだった。

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