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【2020/05 葬列】⑥
《第4週 金曜日 朝》
シャワーし終えて扉を開けると、灯りをつけたまま、髪の毛を乾かすのに使ったドライヤーも出したまま、小林さんは自分のベッドの上で寝落ちていた。スマートフォンもベッド脇に落っこちている。拾って充電ケーブルに繋いでサイドテーブルに上げておく。
布団の上に寝ちゃってるから収納に備えてある予備のタオルなり毛布をかけようかどうか迷ったけど、寒かったら途中で目が覚めて自分で布団に入って寝直すだろうと思ってやめた。ドライヤーもそしたら片付けるだろうし。
自分のベッドに戻り、端末をフリーザーバッグから出して充電ケーブルに繋いで、アラームをセットしてから照明を自分のベッドの傍のスタンドだけにして、できるだけ照度を落とした。あとは軽く水分補給して軽く髪の毛をタオルドライして布団に入った。
そこそこ疲れていたのか、蓄積していた心身のダメージからか、目を閉じて間もなく意識は消失した。宿に戻ったのが20時頃、食事して部屋に戻って22時過ぎにシャワー浴びて、0時までには眠りに就いた。
しかも小林さんの朝食に誘う声と遠慮がちに肩を揺する手の感触で目を覚ましたとき、既に夜が明けて朝食の提供が始まる7時を過ぎていたのでおれは驚いた。普段3~4時間もすると自然と目が覚めるのでそんなに時間が経っていると思ってなかった。
アラームをセットしたはずなのにまるで気づいてなかった。多分何度も鳴ってるのに起きないから止めて声をかけてくれたんだろう。一人部屋で誰も起こしてくれなかったら誰か迎えに来るまで寝てて、髪の毛乱れたまま食事も摂らず今日の仕事に行く羽目になってたな。
軽くタオルドライしただけで寝てグシャグシャになっている髪を最低限見苦しくない程度整えて、昨日と同じ服装に着替えて食事に向かう。傷跡とか痣隠すのもめんどくさい。後でいい。
今の大学に通っている時にこんなひどい姿してるのは周りに多分見せたことがないと思う。東大で院生時代一緒だった人間とか研究一緒にやった人間ならともかく。
あと南はおれが部屋で仮眠するから寝起きこそ見たことはあるけど、あくまでも仮眠程度だし。南はこういうとこにはついてきたことないし、小曽川家に泊まったことも、あの一時期面会に行ってた頃の数回しかないしなあ。
食堂に下りていくと朝食は基本昨日の朝や昨日の晩と同じくセルフで、御飯や味噌汁、卵(生と茹で)と味付海苔、漬物類や煮豆や佃煮や明太子のバラ子はフリー。昨日のこと考えたら確かにある程度カロリーも塩分も必要だけど、流石にこれだけはバランスが悪い。
余り量食べられないけどおれは出される弁当が食べられるとも限らないし、毎日朝晩は確実に食べられるもので食べておかないとそのうちもたなくなる。フリーのものを一通りもらって、小鉢で惣菜が並べてあるところからほうれん草の胡麻和えといんげんの炒め煮、ドリンクのコーナーで果汁入りの野菜ジュースと烏龍茶をもらってきた。
流通が滞ってて保存が効くものからしか提供できない中でこれだけ食べるものや飲み物があるのは珍しいし有り難い。席に戻ると小林さんは卵かけご飯に佃煮をぶちこんで七味をかけて啜りながら、ランチョンミートの焼いたのをモリモリ食べて、変な味の豆乳を飲んでいた。その食事内容にチョコミントってどうなの…。
仕事を見てても思うけど、大人しい割に案外大胆なんだよなあ。
「小林さんって、佃煮好きだね…」
「あ、そうかもですね。藤川くん甘いおかず嫌いな人でしたっけ」
「いや、おれは辛いとか酸っぱいとか主張が強いものが好きじゃない。そういやさ、昨日どうやって自分の自閉傾向に気づいたり、それによる弱点を克服したかみたいな話してたじゃない。あれさ」
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