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大賀剛士の日常2

 彼女に言った通り、剛士は昔からアルファが苦手だった。  剛士の父は自営業で、自宅は父の職場でもあった。  そこにやって来る客のアルファは揃いも揃って鼻持ちならない威張った奴ばかりだった。  幼い妹が客にぶつかって転んだ時も、助け起こそうなんて考えもしないようで、まるで汚物を見るような目で妹を見下していたアルファのことが剛士には忘れられない記憶として残っていた。  そんな客にペコペコと頭を下げる父にも腹が立ち、何度かそのことが原因で父と剛士は言い争いになった。  両親やオメガの彼女が言うにはアルファは大なり小なり威圧的なオーラを発している人間が多いらしい。  だからつい怯んでしまうと。  ちなみに剛士からはそれを全く感じないという。  剛士自身、アルファの友人も何人かいるが、オーラと呼ばれるものを感じたことはない。  ただ自分が他者をビビらせるような雰囲気を持っていなくてよかったと剛士はほっとしていた。    アルファであるのに驕らず気軽に話せる剛士はモテた。  そのおかげで中学時代から彼女は途切れなかったが、あまり長続きはしなかった。  女の子は可愛いと思う。  小さくて守ってあげたくなる。  剛士はそんな彼女と一緒にいたいという気持ちはもちろんあったが、それ以外にもやりたいことがまだたくさんあって、結果、彼女といる時間が少なくなってしまうのだ。  特に大学に入学してから剛士は旅行サークルと登山サークルを掛け持ちしていたせいで、更に忙しくなった。  チベットの秘境を旅した翌週には富士登山をするような生活だ。  そのせいで彼女から『私といる時間をもっと作ってほしかった』と振られることもしばしばだった。  それに男女問わず、第二の性も関係なしに、剛士は友達が多かったため、遊びの誘いもひっきりなしで、別の彼女からは『私と友達とどちらが大事なのよ』と振られたこともあった。

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